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20話 ビクティム侯爵の嘆き その1
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(ビクティム侯爵視点)
私の父親こと、アーロン・クラウスは馬鹿なことをほざいていた……これ以上、恥をかかせるな? レオーネに謝罪をしろ? 今は私がクラウス家の当主だ……数年前に引退した元侯爵よりも、私の方が立場は上のはずなのに。
「早く、レオーネ嬢に謝罪をするんだ。少しでも誠意を見せろ、ビクティム。その態度によっては、お前の今後にも影響するかもしれん。もちろん、良い意味でな」
「くっ……! 私は……私は……」
「ビクティム侯爵……」
それなのに何故だ……? なぜ、私はレオーネの眼前に立たされている? 私はクラウス家の為を思って、ただの伯爵令嬢でしかないレオーネではなく、メリア王女との婚約を優先しただけだ。賠償金を支払う旨も伝えていた……それなのに、なぜこの公衆の面前で謝罪を要求されているんだ?
「見ものですわね、フューリ王太子殿下」
「確かに……予期せぬことだったが、良い方向に流れているみたいだ」
私の新しい婚約者であるはずのメリア王女は、フューリ王太子殿下と仲良く話している。一体、どういう関係なのだ? 王太子殿下であれば繋がりがあっても不思議ではないが……くそう、あの女にもまんまと罠に掛けられたということか……!
「……」
私への叱責の声は止んでいるが、一切、私に味方しようという様子もない。本当に身勝手な奴らだ……あいつらも、結局は私と同じ穴のムジナであるはすなのに……! なぜ私だけ!
いかん……意識が朦朧としている。善悪の区別が付かなくなりそうだ。目の前には全ての元凶であるレオーネの姿がある。私はこの女に謝罪をしないといけないのか? メリア王女にも何かをしてやりたいが、距離があり過ぎる。ならばせめて、レオーネだけでも……!
「おい、ビクティム? 早く謝罪をしないか!」
「黙れ……あんたは既に、元侯爵だろうが! 私に命令するなぁぁぁ!」
「び、ビクティム……! ぐはっ!」
私は一体何を……気が付いた時、父上の身体が地面に伏していた。
-----------------------------
(レオーネ視点)
「あ、アーロン様……!」
「アーロン殿っ!!」
ビクティム様が独り言をつぶやいていた時から怖かったけれど、まさかアーロン様を殴り飛ばすなんて。すぐに、ダンテ兄さまがアーロン様に駆け寄った。
「うぐぐ……!」
「しっかりしてください! 衛生兵は居ないか!?」
「はっ、こちらに!」
ダンテ兄さまの大声に呼応するかのように、数名の衛生兵が集まって来た。こういうパーティーでは大概用意されている。でも、アーロン様は大丈夫なのかしら?
「父上……!? 私は……私は……!!」
ついさっきアーロン様を殴り飛ばしたビクティム侯爵。ある意味で、彼が一番悲壮な顔つきになっていた。現在の彼の心境は分からないけれど、その場で直立不動のまま動こうとしない。護衛の兵士がすぐに彼を囲み始める。それでもビクティム侯爵は直立不動のままだった。
私の父親こと、アーロン・クラウスは馬鹿なことをほざいていた……これ以上、恥をかかせるな? レオーネに謝罪をしろ? 今は私がクラウス家の当主だ……数年前に引退した元侯爵よりも、私の方が立場は上のはずなのに。
「早く、レオーネ嬢に謝罪をするんだ。少しでも誠意を見せろ、ビクティム。その態度によっては、お前の今後にも影響するかもしれん。もちろん、良い意味でな」
「くっ……! 私は……私は……」
「ビクティム侯爵……」
それなのに何故だ……? なぜ、私はレオーネの眼前に立たされている? 私はクラウス家の為を思って、ただの伯爵令嬢でしかないレオーネではなく、メリア王女との婚約を優先しただけだ。賠償金を支払う旨も伝えていた……それなのに、なぜこの公衆の面前で謝罪を要求されているんだ?
「見ものですわね、フューリ王太子殿下」
「確かに……予期せぬことだったが、良い方向に流れているみたいだ」
私の新しい婚約者であるはずのメリア王女は、フューリ王太子殿下と仲良く話している。一体、どういう関係なのだ? 王太子殿下であれば繋がりがあっても不思議ではないが……くそう、あの女にもまんまと罠に掛けられたということか……!
「……」
私への叱責の声は止んでいるが、一切、私に味方しようという様子もない。本当に身勝手な奴らだ……あいつらも、結局は私と同じ穴のムジナであるはすなのに……! なぜ私だけ!
いかん……意識が朦朧としている。善悪の区別が付かなくなりそうだ。目の前には全ての元凶であるレオーネの姿がある。私はこの女に謝罪をしないといけないのか? メリア王女にも何かをしてやりたいが、距離があり過ぎる。ならばせめて、レオーネだけでも……!
「おい、ビクティム? 早く謝罪をしないか!」
「黙れ……あんたは既に、元侯爵だろうが! 私に命令するなぁぁぁ!」
「び、ビクティム……! ぐはっ!」
私は一体何を……気が付いた時、父上の身体が地面に伏していた。
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(レオーネ視点)
「あ、アーロン様……!」
「アーロン殿っ!!」
ビクティム様が独り言をつぶやいていた時から怖かったけれど、まさかアーロン様を殴り飛ばすなんて。すぐに、ダンテ兄さまがアーロン様に駆け寄った。
「うぐぐ……!」
「しっかりしてください! 衛生兵は居ないか!?」
「はっ、こちらに!」
ダンテ兄さまの大声に呼応するかのように、数名の衛生兵が集まって来た。こういうパーティーでは大概用意されている。でも、アーロン様は大丈夫なのかしら?
「父上……!? 私は……私は……!!」
ついさっきアーロン様を殴り飛ばしたビクティム侯爵。ある意味で、彼が一番悲壮な顔つきになっていた。現在の彼の心境は分からないけれど、その場で直立不動のまま動こうとしない。護衛の兵士がすぐに彼を囲み始める。それでもビクティム侯爵は直立不動のままだった。
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