侯爵様に婚約破棄されたのですが、どうやら私と王太子が幼馴染だったことは知らなかったようですね?

ルイス

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50話 証拠固め その2

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 ビクティム侯爵は、話の内容がエドモンド・デューイ様に移ると悟ったのか、とてつもない汗を顔じゅうに流し始めていた。この辺境地は通常の真冬以上に寒いはず……いくら暖房の効いている管理棟内部といえども、ここまでの汗をかくのはめずらしい。

 明らかに後ろめたい……というよりも確信部分を知られる恐怖に陥っているようだった。

「エドモンド・デューイ……お前の叔父に当たる人物について聞きたい。ここまできて、拒絶するということはあるまいな?」

「も、もちろんです……フューリ王太子殿下様……! なんなりと、ご質問ください!」


「そうか……そういった素直な態度をしてくれた方が、私としてもやりやすいというものだ」


 フューリは機嫌が良くなったのか、軽く咳払いをしながら間を取っていた。少し笑顔になってりうのが可愛かった気がする。ビクティム侯爵が素直に応じた為に、機嫌が良くなっているのは理解できる。こんなところで貴重な時間を費やすわけにもいかないだろうしね。

「では、今回のお前の労役の義務についてだ。本当であれば一般の罪人と同じ肩書きで労役をする手筈だった。それを直前に曲げたのはエドモンド・デューイに間違いはないな?」

「それは……」

「どうなんだ? ビクティム・クラウス」



 ビクティム侯爵はやや、答えを渋っているように感じられた。まだ自分の置かれている状況が理解出来ていないのかしら……私が同じ立場だったなら、少しでも自分の罪を軽くしてもらう為に、全力でフューリに協力しそうだけど。この状況でフューリに付かないという選択肢は考えられなかった。


「答えよ、ビクティム。それとも今すぐ、首をはねられた方が良いと申すのか?」


 フューリは腰に携えている剣を取り出しそうになっていた。ビクティム侯爵が返答を拒否した場合は、即座に打ち首にしそうな勢いすらある。幼馴染とはいえ、ちょっとだけフューリの表情が怖かった。


「ま、待ってください……王太子殿下! 私は答えないとは申し上げておりません……!」

「ならば早く答えよ。お前一人に時間を割くのは、こちらとしても意味がないのだ。答える気がないのであれば、別の手段を実行するのみ」

「こ、答えます! 答えますので命だけは……!」


「ならば、早くしろ」


「は、はい……!」


 もう完全にビクティム侯爵は、小物の悪党に成り下がっていた。これが私の元婚約者……はあ、情けなすぎて何度目か分からない溜息が出てしまう。私の中での、本当の意味での汚点と言えるのではないからしら。


「え、エドモンド・デューイ……私の叔父上の力で私は、今の地位を獲得いたしました。これは事実です……!」


「よくぞ言ってくれた、ビクティム。これで、エドモンドを失脚させるネタが一つ出来たというものだ」

「し、失脚……?」


 ビクティム侯爵はどこか、後悔している様子だった。もしかしたまだ自分の明るい未来を想像していたのかしら? 新しい国家の重鎮として迎え入れられる未来……そんな夢のような話が実現するとでも? はあ……本当に情けなく感じてしまう。

 もうビクティム侯爵もエドモンド様もおしまいだ……後はどれだけ、情状酌量の余地を残すか、という話になっているはずなのに。
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