49 / 60
49話 証拠固め その1
しおりを挟む
「ザイールお前……私の信頼を、心の中では笑っていたのか?」
その場に崩れ落ちたビクティム侯爵だけれど、少し時間が経過した後、ザイールさんに突っかかっているようだった。ザイールさんも困ったような表情になっている。
「あなたとのチェスは、楽しかったですよ。それに、話も面白かった。私がフューリ王太子殿下の配下でなければ……あなた側に付いていたかもしれません」
「ちっ、そんなことは後になれば、誰にでも言えることだ……!」
「そうですね、失礼いたしました」
「ふん……!!」
ザイールさんも大変ね……この状況でビクティム侯爵に対して気を使わなければならないなんて。まあ、酒盛りが楽しかったというのは事実なのだろうけど。
「さて、ビクティム。私の質問に答えてもらおうか?」
「くっ……なんでしょうか……?」
ビクティム侯爵はまだ反抗的だった。まだ逆転が出来るとでも思っているのかしら? 周囲は敵だらけだというのに……。それを見たフューリはダメ押しの言葉を彼に掛ける。
「先に言っておくが、お前は正直に話す以外に道はない。議会で決定した労役の責務……それを完全に放棄したことになるのだからな。今回の私の質問に嘘を吐くまたは返答拒否をしようものなら……本当に死刑になるかもしれんぞ?」
「か、畏まりました……」
完全にビクティム侯爵は縮み上がっていた。質問をしやすくなったと感じられる。フューリは一呼吸おいて話し出した。
「まずはビクティム。お前のこの辺境地での仕事を申してみよ」
「……極寒の開拓地を耕すことにあります」
「それ以外には?」
「馬車の通れる道路の敷設、有刺鉄線の敷設、木々の伐採などと多岐に渡るもののはずでした」
「そうだな。お前の仕事はオルカスト王国にとっても重要なものだった。新たなる移民の確保や、周辺住民にも役立つことではあったからな」
地味な作業なのかもしれないけれど、それは確実にオルカスト王国に活きてくる作業と言えた。インフラの整備は国家繁栄にとって最重要であると言っても過言ではないからね。
「それで、実際はどうだったのですか?」
「レオーネ……」
私は我慢できずに割って入ってしまった。私もビクティム侯爵に質問を質問を投げかける。答えてくれる保証はなかったけれど。
「ここの状況を見る限り……ザイールさんに伺わなくても想像はつきます。ビクティム様は……管理者という立場で派遣されてからずっと、屋敷で過ごしているのと変わらない生活をしていましたね?」
「……!」
ビクティム侯爵の睨みがとても怖かった。でも、負けるわけにはいかない。こんなところで怖気づいていては、彼よりはるかに上手なエドモンド様と対面なんて出来なくなってしまうから。
「どうなんですか? ビクティム様?」
「……その通りです。私は管理者の立場に甘んじ、派遣直後から貴族としての生活と変わらない生活を行ってきました」
思いのほかビクティム侯爵は素直だった。まあ、嘘を吐くのは自殺行為なのだけれど……。辺境地での生活だけに、屋敷での生活と比べたら色々と粗末ではあるんだろうけど、私はその時点で彼を許すことが出来ないでいた。あの議会での決定はなんだったんだろうと思えてしまう。
「よく話してくれた、ビクティム・クラウス。では次は……エドモンド・デューイについてだ」
「お、叔父上についてですか……?」
「当然だ。むしろ、そっちが本命だからな」
フューリは私以上に容赦がなかった。ビクティム侯爵が答えにくそうな質問をさらに続けるつもりみたいね。もしかしたら、全て話したことによる減刑も考えていないのかもしれない。私としては、そっちの方が嬉しいけれど。
その場に崩れ落ちたビクティム侯爵だけれど、少し時間が経過した後、ザイールさんに突っかかっているようだった。ザイールさんも困ったような表情になっている。
「あなたとのチェスは、楽しかったですよ。それに、話も面白かった。私がフューリ王太子殿下の配下でなければ……あなた側に付いていたかもしれません」
「ちっ、そんなことは後になれば、誰にでも言えることだ……!」
「そうですね、失礼いたしました」
「ふん……!!」
ザイールさんも大変ね……この状況でビクティム侯爵に対して気を使わなければならないなんて。まあ、酒盛りが楽しかったというのは事実なのだろうけど。
「さて、ビクティム。私の質問に答えてもらおうか?」
「くっ……なんでしょうか……?」
ビクティム侯爵はまだ反抗的だった。まだ逆転が出来るとでも思っているのかしら? 周囲は敵だらけだというのに……。それを見たフューリはダメ押しの言葉を彼に掛ける。
「先に言っておくが、お前は正直に話す以外に道はない。議会で決定した労役の責務……それを完全に放棄したことになるのだからな。今回の私の質問に嘘を吐くまたは返答拒否をしようものなら……本当に死刑になるかもしれんぞ?」
「か、畏まりました……」
完全にビクティム侯爵は縮み上がっていた。質問をしやすくなったと感じられる。フューリは一呼吸おいて話し出した。
「まずはビクティム。お前のこの辺境地での仕事を申してみよ」
「……極寒の開拓地を耕すことにあります」
「それ以外には?」
「馬車の通れる道路の敷設、有刺鉄線の敷設、木々の伐採などと多岐に渡るもののはずでした」
「そうだな。お前の仕事はオルカスト王国にとっても重要なものだった。新たなる移民の確保や、周辺住民にも役立つことではあったからな」
地味な作業なのかもしれないけれど、それは確実にオルカスト王国に活きてくる作業と言えた。インフラの整備は国家繁栄にとって最重要であると言っても過言ではないからね。
「それで、実際はどうだったのですか?」
「レオーネ……」
私は我慢できずに割って入ってしまった。私もビクティム侯爵に質問を質問を投げかける。答えてくれる保証はなかったけれど。
「ここの状況を見る限り……ザイールさんに伺わなくても想像はつきます。ビクティム様は……管理者という立場で派遣されてからずっと、屋敷で過ごしているのと変わらない生活をしていましたね?」
「……!」
ビクティム侯爵の睨みがとても怖かった。でも、負けるわけにはいかない。こんなところで怖気づいていては、彼よりはるかに上手なエドモンド様と対面なんて出来なくなってしまうから。
「どうなんですか? ビクティム様?」
「……その通りです。私は管理者の立場に甘んじ、派遣直後から貴族としての生活と変わらない生活を行ってきました」
思いのほかビクティム侯爵は素直だった。まあ、嘘を吐くのは自殺行為なのだけれど……。辺境地での生活だけに、屋敷での生活と比べたら色々と粗末ではあるんだろうけど、私はその時点で彼を許すことが出来ないでいた。あの議会での決定はなんだったんだろうと思えてしまう。
「よく話してくれた、ビクティム・クラウス。では次は……エドモンド・デューイについてだ」
「お、叔父上についてですか……?」
「当然だ。むしろ、そっちが本命だからな」
フューリは私以上に容赦がなかった。ビクティム侯爵が答えにくそうな質問をさらに続けるつもりみたいね。もしかしたら、全て話したことによる減刑も考えていないのかもしれない。私としては、そっちの方が嬉しいけれど。
22
あなたにおすすめの小説
地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに
reva
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。
選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。
地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。
失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。
「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」
彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。
そして、私は彼の正妃として王都へ……
病弱を演じる妹に婚約者を奪われましたが、大嫌いだったので大助かりです
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
『病弱を演じて私から全てを奪う妹よ、全て奪った後で梯子を外してあげます』
メイトランド公爵家の長女キャメロンはずっと不当な扱いを受け続けていた。天性の悪女である妹のブリトニーが病弱を演じて、両親や周りの者を味方につけて、姉キャメロンが受けるはずのモノを全て奪っていた。それはメイトランド公爵家のなかだけでなく、社交界でも同じような状況だった。生まれて直ぐにキャメロンはオーガスト第一王子と婚約していたが、ブリトニーがオーガスト第一王子を誘惑してキャメロンとの婚約を破棄させようとしたいた。だがキャメロンはその機会を捉えて復讐を断行した。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
幼い頃、義母に酸で顔を焼かれた公爵令嬢は、それでも愛してくれた王太子が冤罪で追放されたので、ついていくことにしました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
設定はゆるくなっています、気になる方は最初から読まないでください。
ウィンターレン公爵家令嬢ジェミーは、幼い頃に義母のアイラに酸で顔を焼かれてしまった。何とか命は助かったものの、とても社交界にデビューできるような顔ではなかった。だが不屈の精神力と仮面をつける事で、社交界にデビューを果たした。そんなジェミーを、心優しく人の本質を見抜ける王太子レオナルドが見初めた。王太子はジェミーを婚約者に選び、幸せな家庭を築くかに思われたが、王位を狙う邪悪な弟に冤罪を着せられ追放刑にされてしまった。
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる