侯爵様に婚約破棄されたのですが、どうやら私と王太子が幼馴染だったことは知らなかったようですね?

ルイス

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49話 証拠固め その1

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「ザイールお前……私の信頼を、心の中では笑っていたのか?」

 その場に崩れ落ちたビクティム侯爵だけれど、少し時間が経過した後、ザイールさんに突っかかっているようだった。ザイールさんも困ったような表情になっている。


「あなたとのチェスは、楽しかったですよ。それに、話も面白かった。私がフューリ王太子殿下の配下でなければ……あなた側に付いていたかもしれません」

「ちっ、そんなことは後になれば、誰にでも言えることだ……!」

「そうですね、失礼いたしました」

「ふん……!!」


 ザイールさんも大変ね……この状況でビクティム侯爵に対して気を使わなければならないなんて。まあ、酒盛りが楽しかったというのは事実なのだろうけど。

「さて、ビクティム。私の質問に答えてもらおうか?」

「くっ……なんでしょうか……?」


 ビクティム侯爵はまだ反抗的だった。まだ逆転が出来るとでも思っているのかしら? 周囲は敵だらけだというのに……。それを見たフューリはダメ押しの言葉を彼に掛ける。


「先に言っておくが、お前は正直に話す以外に道はない。議会で決定した労役の責務……それを完全に放棄したことになるのだからな。今回の私の質問に嘘を吐くまたは返答拒否をしようものなら……本当に死刑になるかもしれんぞ?」

「か、畏まりました……」


 完全にビクティム侯爵は縮み上がっていた。質問をしやすくなったと感じられる。フューリは一呼吸おいて話し出した。

「まずはビクティム。お前のこの辺境地での仕事を申してみよ」

「……極寒の開拓地を耕すことにあります」

「それ以外には?」

「馬車の通れる道路の敷設、有刺鉄線の敷設、木々の伐採などと多岐に渡るもののはずでした」

「そうだな。お前の仕事はオルカスト王国にとっても重要なものだった。新たなる移民の確保や、周辺住民にも役立つことではあったからな」


 地味な作業なのかもしれないけれど、それは確実にオルカスト王国に活きてくる作業と言えた。インフラの整備は国家繁栄にとって最重要であると言っても過言ではないからね。

「それで、実際はどうだったのですか?」

「レオーネ……」


 私は我慢できずに割って入ってしまった。私もビクティム侯爵に質問を質問を投げかける。答えてくれる保証はなかったけれど。


「ここの状況を見る限り……ザイールさんに伺わなくても想像はつきます。ビクティム様は……管理者という立場で派遣されてからずっと、屋敷で過ごしているのと変わらない生活をしていましたね?」

「……!」


 ビクティム侯爵の睨みがとても怖かった。でも、負けるわけにはいかない。こんなところで怖気づいていては、彼よりはるかに上手なエドモンド様と対面なんて出来なくなってしまうから。

「どうなんですか? ビクティム様?」

「……その通りです。私は管理者の立場に甘んじ、派遣直後から貴族としての生活と変わらない生活を行ってきました」


 思いのほかビクティム侯爵は素直だった。まあ、嘘を吐くのは自殺行為なのだけれど……。辺境地での生活だけに、屋敷での生活と比べたら色々と粗末ではあるんだろうけど、私はその時点で彼を許すことが出来ないでいた。あの議会での決定はなんだったんだろうと思えてしまう。

「よく話してくれた、ビクティム・クラウス。では次は……エドモンド・デューイについてだ」

「お、叔父上についてですか……?」

「当然だ。むしろ、そっちが本命だからな」


 フューリは私以上に容赦がなかった。ビクティム侯爵が答えにくそうな質問をさらに続けるつもりみたいね。もしかしたら、全て話したことによる減刑も考えていないのかもしれない。私としては、そっちの方が嬉しいけれど。
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