59 / 60
59話 VSエドモンド公爵 その2
しおりを挟む
「エドモンド公爵……勝ち誇っているところ、申し訳ないのだが」
エドモンド様と同じく、拡声器を通して声を出しているフューリ。その大きくなった声は、中央広場全体に響いていた。
「なんですかな? フューリ王太子殿下。釈明でもするつもりですかな?」
「釈明か……まあ、間違ってはいないが。私がレオーネと一緒の部屋で泊まったのは事実だ」
フューリは拡声器を使って事実を認める。本当のことだから仕方ないけれど……拡声器を使っている分、たくさんの人の耳に入ったことだけは後悔だった。おそらく、フューリ自身も後悔しているはず。耳まで真っ赤になっているから。
「まったく……大胆な」
ダンテ兄さまはその事実を知らなかったのか、私を軽く睨んでいた。まあ……あれは不可抗力みたいなものだったし。男女がデートの後にすることと言ったら……ねえ?
「事実なのですね、王太子殿下。お認めになられるということで、間違いございませんな?」
「そうだな、エドモンド。先ほどの一件に関する話は事実だ。しかし、私達はいずれ婚約する間柄として認識しあっている。同じ部屋に泊まることは、特に問題ないと思うのだが?」
「な、何をおっしゃいますか、王太子殿下……! 次期国王であるあなたと伯爵令嬢でしかない娘が婚約など……」
「差別意識を持っているのはむしろ、エドモンドの方ではないのか?」
「なっ……!?」
強烈なボディブローのような突っ込みに、エドモンド様は言葉を失っていた。思考が追い付いていないんだと思う。
「伯爵令嬢レオーネの立場は貴族の中でも、十分に高い方だと言えるだろう。オルカスト王国の歴史の中でも、王族と結婚した伯爵令嬢の事実もあるくらいだからな」
「ぬ、ぬう……しかし……! あなた方は一つの部屋で一夜を明かしたのでしょう……? 間違いが起こったはずだ!! オルカスト王国の今後の中心人物が婚前交渉など……断じて許してはならん!」
「そ、そうだそうだ! エドモンド様、万歳~~~!!」
やや苦しい攻め方をしているエドモンド様。声を荒々しくなっている気がする。彼を信奉している貴族達は、必死で歓声を上げているけれど、国民からの支持は得られていないようだった。
「婚前交渉か……まあ、貴族の間では誉められたものではないかもな~
「でも、私達は結構してるわよね……?」
「な、なんだと……!?」
貴族の考えと国民の考え……双方の基本的な考えの違いをエドモンド様は理解していなかった。だからこそ、今頃になって予定外のことが起きているんだと思う。
それから……エドモンド様にはもう一つ、大きなミスがあった。
「エドモンド……なんでも決めつけるのは良くない。公爵という立場にあるのだから、物事は冷静に見つめないといけないな」
「ど、どういうことですかな……?」
エドモンド様の焦った表情を見ながら、フューリはゆっくりと答えた。
「私たちは清廉潔白だ。婚前交渉はしていないさ」
「な、なんとまさか……!?」
「事実だ。私がそんなことをするとでも思っていたのか? まったく……心外だな」
さらに焦るエドモンド様に、フューリは抑揚のない言葉を浴びせた。そう、私達は婚前交渉なんてしていない。だから、何も恐れる必要なんてなかった。
エドモンド様と同じく、拡声器を通して声を出しているフューリ。その大きくなった声は、中央広場全体に響いていた。
「なんですかな? フューリ王太子殿下。釈明でもするつもりですかな?」
「釈明か……まあ、間違ってはいないが。私がレオーネと一緒の部屋で泊まったのは事実だ」
フューリは拡声器を使って事実を認める。本当のことだから仕方ないけれど……拡声器を使っている分、たくさんの人の耳に入ったことだけは後悔だった。おそらく、フューリ自身も後悔しているはず。耳まで真っ赤になっているから。
「まったく……大胆な」
ダンテ兄さまはその事実を知らなかったのか、私を軽く睨んでいた。まあ……あれは不可抗力みたいなものだったし。男女がデートの後にすることと言ったら……ねえ?
「事実なのですね、王太子殿下。お認めになられるということで、間違いございませんな?」
「そうだな、エドモンド。先ほどの一件に関する話は事実だ。しかし、私達はいずれ婚約する間柄として認識しあっている。同じ部屋に泊まることは、特に問題ないと思うのだが?」
「な、何をおっしゃいますか、王太子殿下……! 次期国王であるあなたと伯爵令嬢でしかない娘が婚約など……」
「差別意識を持っているのはむしろ、エドモンドの方ではないのか?」
「なっ……!?」
強烈なボディブローのような突っ込みに、エドモンド様は言葉を失っていた。思考が追い付いていないんだと思う。
「伯爵令嬢レオーネの立場は貴族の中でも、十分に高い方だと言えるだろう。オルカスト王国の歴史の中でも、王族と結婚した伯爵令嬢の事実もあるくらいだからな」
「ぬ、ぬう……しかし……! あなた方は一つの部屋で一夜を明かしたのでしょう……? 間違いが起こったはずだ!! オルカスト王国の今後の中心人物が婚前交渉など……断じて許してはならん!」
「そ、そうだそうだ! エドモンド様、万歳~~~!!」
やや苦しい攻め方をしているエドモンド様。声を荒々しくなっている気がする。彼を信奉している貴族達は、必死で歓声を上げているけれど、国民からの支持は得られていないようだった。
「婚前交渉か……まあ、貴族の間では誉められたものではないかもな~
「でも、私達は結構してるわよね……?」
「な、なんだと……!?」
貴族の考えと国民の考え……双方の基本的な考えの違いをエドモンド様は理解していなかった。だからこそ、今頃になって予定外のことが起きているんだと思う。
それから……エドモンド様にはもう一つ、大きなミスがあった。
「エドモンド……なんでも決めつけるのは良くない。公爵という立場にあるのだから、物事は冷静に見つめないといけないな」
「ど、どういうことですかな……?」
エドモンド様の焦った表情を見ながら、フューリはゆっくりと答えた。
「私たちは清廉潔白だ。婚前交渉はしていないさ」
「な、なんとまさか……!?」
「事実だ。私がそんなことをするとでも思っていたのか? まったく……心外だな」
さらに焦るエドモンド様に、フューリは抑揚のない言葉を浴びせた。そう、私達は婚前交渉なんてしていない。だから、何も恐れる必要なんてなかった。
30
あなたにおすすめの小説
病弱を演じる妹に婚約者を奪われましたが、大嫌いだったので大助かりです
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
『病弱を演じて私から全てを奪う妹よ、全て奪った後で梯子を外してあげます』
メイトランド公爵家の長女キャメロンはずっと不当な扱いを受け続けていた。天性の悪女である妹のブリトニーが病弱を演じて、両親や周りの者を味方につけて、姉キャメロンが受けるはずのモノを全て奪っていた。それはメイトランド公爵家のなかだけでなく、社交界でも同じような状況だった。生まれて直ぐにキャメロンはオーガスト第一王子と婚約していたが、ブリトニーがオーガスト第一王子を誘惑してキャメロンとの婚約を破棄させようとしたいた。だがキャメロンはその機会を捉えて復讐を断行した。
自称聖女の従姉に誑かされた婚約者に婚約破棄追放されました、国が亡ぶ、知った事ではありません。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
『偽者を信じて本物を婚約破棄追放するような国は滅びればいいのです。』
ブートル伯爵家の令嬢セシリアは不意に婚約者のルドルフ第三王子に張り飛ばされた。華奢なセシリアが筋肉バカのルドルフの殴られたら死の可能性すらあった。全ては聖女を自称する虚栄心の強い従姉コリンヌの仕業だった。公爵令嬢の自分がまだ婚約が決まらないのに、伯爵令嬢でしかない従妹のセシリアが第三王子と婚約しているのに元々腹を立てていたのだ。そこに叔父のブートル伯爵家ウィリアムに男の子が生まれたのだ。このままでは姉妹しかいないウィルブラハム公爵家は叔父の息子が継ぐことになる。それを恐れたコリンヌは筋肉バカのルドルフを騙してセシリアだけでなくブートル伯爵家を追放させようとしたのだった。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
王命により、婚約破棄されました。
緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。
【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?
星野真弓
恋愛
十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。
だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。
そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。
しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――
【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜
早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。
もう愛は冷めているのですが?
希猫 ゆうみ
恋愛
「真実の愛を見つけたから駆け落ちするよ。さよなら」
伯爵令嬢エスターは結婚式当日、婚約者のルシアンに無残にも捨てられてしまう。
3年後。
父を亡くしたエスターは令嬢ながらウィンダム伯領の領地経営を任されていた。
ある日、金髪碧眼の美形司祭マクミランがエスターを訪ねてきて言った。
「ルシアン・アトウッドの居場所を教えてください」
「え……?」
国王の命令によりエスターの元婚約者を探しているとのこと。
忘れたはずの愛しさに突き動かされ、マクミラン司祭と共にルシアンを探すエスター。
しかしルシアンとの再会で心優しいエスターの愛はついに冷め切り、完全に凍り付く。
「助けてくれエスター!僕を愛しているから探してくれたんだろう!?」
「いいえ。あなたへの愛はもう冷めています」
やがて悲しみはエスターを真実の愛へと導いていく……
◇ ◇ ◇
完結いたしました!ありがとうございました!
誤字報告のご協力にも心から感謝申し上げます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる