侯爵様に婚約破棄されたのですが、どうやら私と王太子が幼馴染だったことは知らなかったようですね?

ルイス

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59話 VSエドモンド公爵 その2

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「エドモンド公爵……勝ち誇っているところ、申し訳ないのだが」

 エドモンド様と同じく、拡声器を通して声を出しているフューリ。その大きくなった声は、中央広場全体に響いていた。

「なんですかな? フューリ王太子殿下。釈明でもするつもりですかな?」

「釈明か……まあ、間違ってはいないが。私がレオーネと一緒の部屋で泊まったのは事実だ」


 フューリは拡声器を使って事実を認める。本当のことだから仕方ないけれど……拡声器を使っている分、たくさんの人の耳に入ったことだけは後悔だった。おそらく、フューリ自身も後悔しているはず。耳まで真っ赤になっているから。

「まったく……大胆な」


 ダンテ兄さまはその事実を知らなかったのか、私を軽く睨んでいた。まあ……あれは不可抗力みたいなものだったし。男女がデートの後にすることと言ったら……ねえ?


「事実なのですね、王太子殿下。お認めになられるということで、間違いございませんな?」

「そうだな、エドモンド。先ほどの一件に関する話は事実だ。しかし、私達はいずれ婚約する間柄として認識しあっている。同じ部屋に泊まることは、特に問題ないと思うのだが?」

「な、何をおっしゃいますか、王太子殿下……! 次期国王であるあなたと伯爵令嬢でしかない娘が婚約など……」

「差別意識を持っているのはむしろ、エドモンドの方ではないのか?」

「なっ……!?」


 強烈なボディブローのような突っ込みに、エドモンド様は言葉を失っていた。思考が追い付いていないんだと思う。

「伯爵令嬢レオーネの立場は貴族の中でも、十分に高い方だと言えるだろう。オルカスト王国の歴史の中でも、王族と結婚した伯爵令嬢の事実もあるくらいだからな」

「ぬ、ぬう……しかし……! あなた方は一つの部屋で一夜を明かしたのでしょう……? 間違いが起こったはずだ!! オルカスト王国の今後の中心人物が婚前交渉など……断じて許してはならん!」


「そ、そうだそうだ! エドモンド様、万歳~~~!!」


 やや苦しい攻め方をしているエドモンド様。声を荒々しくなっている気がする。彼を信奉している貴族達は、必死で歓声を上げているけれど、国民からの支持は得られていないようだった。

「婚前交渉か……まあ、貴族の間では誉められたものではないかもな~


「でも、私達は結構してるわよね……?」


「な、なんだと……!?」


 貴族の考えと国民の考え……双方の基本的な考えの違いをエドモンド様は理解していなかった。だからこそ、今頃になって予定外のことが起きているんだと思う。

 それから……エドモンド様にはもう一つ、大きなミスがあった。

「エドモンド……なんでも決めつけるのは良くない。公爵という立場にあるのだから、物事は冷静に見つめないといけないな」

「ど、どういうことですかな……?」


 エドモンド様の焦った表情を見ながら、フューリはゆっくりと答えた。


「私たちは清廉潔白だ。婚前交渉はしていないさ」


「な、なんとまさか……!?」

「事実だ。私がそんなことをするとでも思っていたのか? まったく……心外だな」


 さらに焦るエドモンド様に、フューリは抑揚のない言葉を浴びせた。そう、私達は婚前交渉なんてしていない。だから、何も恐れる必要なんてなかった。
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