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54話 スザンヌとウィンスタート その1
(スザンヌ視点)
「スザンヌ様……ご無礼をお許しください」
「いきなりどうしたの、ウィンスタート?」
相変わらず、彼は影のように私の前に現れた。素早い行動は流石だけれど、少し驚かされることもある。
「私と逃げませんか?」
「……!? どういう意味かしら?」
ウィンスタート・ドルチェは淡々と……そして、ハッキリと言った。ここが誰も居ない書斎でなければ大問題になっていた一言かもしれない。
「失礼致しました。アーチェ様がネプト国王陛下の側室になるという話を聞いて、どうしてもこの話をしておきたかったのです」
「一緒に逃げる、というのは穏やかな話ではないわね」
どういう意味かは理解しているつもりだ。彼が……ウィンスタートが私を一人の女性として愛していることは、以前から分かっていたことだから。それが今、自惚れなんかではないことが分かったのだ。
「私はネプト様とアーチェ様の世界にスザンヌ様が入ることを受け入れることが出来ません。きっと、ネプト様はアーチェ様のみを愛するでしょうから」
「それは元々分かっていたでしょう? 相手がアーチェでなくても変わらないわ。私とネプトは仮面夫婦でなければならなかったのだから……それを若さゆえに破ってしまった。ネプトが側室を招き入れる現状はおかしなことではないのよ。むしろ、私との恋愛を封印するという意味では正しいことね」
「慣習……ということですか」
「ええ、そういうことね。過去にも側室の立場の者を一番愛した国王が居たらしいし」
「私はそれを納得するわけにはいきません……」
「ウィンスタート……」
彼は……ウィンスタートは私を憐れんでいるのかもしれない。決して逃れることの出来ない王妃という呪縛からの解放……それを与えようとしているのだ。
「スザンヌ様……私と逃げていただけませんか? 王族と言う肩書きが消えたとしても、あなた様を幸せに出来る甲斐性はあると自負しております!」
これはおそらく事実だ。周辺国家を超えた遠くの国に行けば、正体がバレることはまずないだろう。私とウィンスタートの二人であれば、暮らしていけるだろうし。特にウィンスタートの能力があれば大金の獲得も夢ではないはず。
「そうね、ウィンスタート……それは決して、悪くないことだと思うわ。ネプトには振られたも同然なのだし。アーチェとネプトの二人の間には、私は不要だったのよ」
争いの火種になりかねない者は消えた方が良い……それは間違いがなかった。私が姿を隠せば、アーチェがおそらくは正妃として迎え入れられるだろう。それとも、本当の意味での仮面夫婦として適当な貴族が正妃として宛がわれるか。
贅沢な暮らしが目的で、対外的な対応だけはしっかりとこなせる貴族令嬢は多いはず。本来ならばそういう者が正妃になるのが理想的だ。私はそう言う意味で理想的な正妃にはなれなかった。彼に恋をしてしまったばかりに。自分の中に呪縛を生んでしまったのだ。
「いいかもしれないわね、ウィンスタート。あなたとどこまででも逃げるのも……」
「スザンヌ様……! それでは……!」
「夜逃げ……ふふふ、しばらくマクスレイ王国は混乱するでしょうけれど……面白そうね」
私はこの時、深く考えることを止めていた。ウィンスタートと二人で逃亡し、人並みの幸せを手にしたい。それだけを考えていたのだから。そのくらいの願いは許されるはず……それだけを考え、私達は行動を移すことになる。
「スザンヌ様……ご無礼をお許しください」
「いきなりどうしたの、ウィンスタート?」
相変わらず、彼は影のように私の前に現れた。素早い行動は流石だけれど、少し驚かされることもある。
「私と逃げませんか?」
「……!? どういう意味かしら?」
ウィンスタート・ドルチェは淡々と……そして、ハッキリと言った。ここが誰も居ない書斎でなければ大問題になっていた一言かもしれない。
「失礼致しました。アーチェ様がネプト国王陛下の側室になるという話を聞いて、どうしてもこの話をしておきたかったのです」
「一緒に逃げる、というのは穏やかな話ではないわね」
どういう意味かは理解しているつもりだ。彼が……ウィンスタートが私を一人の女性として愛していることは、以前から分かっていたことだから。それが今、自惚れなんかではないことが分かったのだ。
「私はネプト様とアーチェ様の世界にスザンヌ様が入ることを受け入れることが出来ません。きっと、ネプト様はアーチェ様のみを愛するでしょうから」
「それは元々分かっていたでしょう? 相手がアーチェでなくても変わらないわ。私とネプトは仮面夫婦でなければならなかったのだから……それを若さゆえに破ってしまった。ネプトが側室を招き入れる現状はおかしなことではないのよ。むしろ、私との恋愛を封印するという意味では正しいことね」
「慣習……ということですか」
「ええ、そういうことね。過去にも側室の立場の者を一番愛した国王が居たらしいし」
「私はそれを納得するわけにはいきません……」
「ウィンスタート……」
彼は……ウィンスタートは私を憐れんでいるのかもしれない。決して逃れることの出来ない王妃という呪縛からの解放……それを与えようとしているのだ。
「スザンヌ様……私と逃げていただけませんか? 王族と言う肩書きが消えたとしても、あなた様を幸せに出来る甲斐性はあると自負しております!」
これはおそらく事実だ。周辺国家を超えた遠くの国に行けば、正体がバレることはまずないだろう。私とウィンスタートの二人であれば、暮らしていけるだろうし。特にウィンスタートの能力があれば大金の獲得も夢ではないはず。
「そうね、ウィンスタート……それは決して、悪くないことだと思うわ。ネプトには振られたも同然なのだし。アーチェとネプトの二人の間には、私は不要だったのよ」
争いの火種になりかねない者は消えた方が良い……それは間違いがなかった。私が姿を隠せば、アーチェがおそらくは正妃として迎え入れられるだろう。それとも、本当の意味での仮面夫婦として適当な貴族が正妃として宛がわれるか。
贅沢な暮らしが目的で、対外的な対応だけはしっかりとこなせる貴族令嬢は多いはず。本来ならばそういう者が正妃になるのが理想的だ。私はそう言う意味で理想的な正妃にはなれなかった。彼に恋をしてしまったばかりに。自分の中に呪縛を生んでしまったのだ。
「いいかもしれないわね、ウィンスタート。あなたとどこまででも逃げるのも……」
「スザンヌ様……! それでは……!」
「夜逃げ……ふふふ、しばらくマクスレイ王国は混乱するでしょうけれど……面白そうね」
私はこの時、深く考えることを止めていた。ウィンスタートと二人で逃亡し、人並みの幸せを手にしたい。それだけを考えていたのだから。そのくらいの願いは許されるはず……それだけを考え、私達は行動を移すことになる。
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