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9話 ガイア・バークス公爵 その2
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私はリグリット様に言われたことをなるべく細かいところまで、ガイア様に説明した。半信半疑どころか、ヨハン第二王子殿下が同行しているにも関わらず、ガイア様は完全に疑っていたから。半分くらいは信じているとかそういったレベルではないのは確かだった。
「リグリット様はアミーナ様と二人で出掛けることは日常茶飯事でした。婚約者だったはずの私に、仕事を任せるようにもなって」
「まあ、そのくらいは……夫婦になるのだから、今後、もっと困難な状況にもなるだろう? その為の予行演習みたなものだろうしな」
「予行演習ですか……」
「そう、予行演習だ。実際、エレナ嬢にとっては良い勉強になったこともあるだろう?」
結婚後の困難を乗り越える為の予行演習、か。少々、苦しい言い訳のような気がする。いえ、相当苦しいわね。
「確かに良い勉強にはなりました。ガイア様の言う通り、貴族令嬢として器が少し大きくなった気が致します」
「ほう! それは良いことではないか。なにせ、次期バークス家当主の妻となる身なのだからな。器は大きいに越したことはないだろう!」
このお方は私の知るバークス公爵で間違いないのかしら? 非常によく似た替え玉とかではないわよね? 彼くらいの立場なら用意されていても不思議ではなさそうだけれど。ここまで親バカなお方だったとは……言ってることが滅茶苦茶だけれど、それで貫き通せると思っているみたいね。
ヨハン様はガイア様の発言に口出しせず無言を貫いている。とりあえず、説明については私に任せるというスタンスで良いのかしら? 不安だったけれど、私はそのまま話を進めることにした。
「この前開かれた、リグリット様のパーティーをご存知ですか?」
「そんな催し物が開かれていたな。非常に盛り上がったと聞いているが、何もトラブルは聞いていないぞ?」
やっぱり、ガイア様は何も知らないのね。最近は特に多忙だったみたいだから、仕方ないのかもしれないけれど。
「そのパーティー開催の管理や運営も実質は私が全て執り行いました」
「な、なに……? バカなことを言うな、エレナ嬢。あの責任感の強いリグリットがそんなことをするわけがないだろう?」
責任感が強い……か。アミーナ様に夢中になっているリグリット様に、責任感は皆無だと思う。これは、ガイア様も騙されていた可能性があるのかしら……?
「事実です。リグリット様から聞いていないのですか? 彼は私に全て押し付けたのです。ガイア様風に申し上げますと、非常に良い勉強にはなりましたが」
「……」
皮肉を多分に交えて私は話している。特にガイア様の「勉強になる」という趣旨の言い訳については、分かりやすく反復まで披露しながら。ガイア様の口数が明らかに少なくなっているのが目に見えて分かる状況だった。
「ガイア様……夫婦の為の勉強、と言うのでしたら、リグリット様も同様に勉学に勤しむ必要があるのではないですか?」
「それは……そうだな」
「私が知る限り、最近のリグリット様は公爵としての勉強を、怠っているようにしか見えません。アミーナ様とのことを注意すると、ヤキモチを妬いていると煽ってきました。このままでは婚約を続けることが難しい旨を申し上げると……」
私はその時、眉間にしわを寄せ歯を食いしばっていた。それくらいに悔しい出来事がフラッシュバックしたからだ。
「彼女……エレナとは絶対に別れないと言ったらしい。侯爵令嬢である彼女と婚約を続ける方が、バークス家にとって都合が良いと。しかし、リグリット殿の気持ちは完全に幼馴染のアミーナ嬢に向かっているようだ」
私は言葉が途切れてしまったけれど、そのタイミングを見逃さなかったヨハン様が上手く繋げてくれた。ガイア様はそれを聞いて唖然としている。
「バカな……そんなことあるわけが……!」
「さらに、リグリット様は婚約を解消するなら、私の家系であるランカスター家がどうなるか分からないぞ、と脅してきました。おそらくは公爵の力を使って何かをする、という意味合いなのでしょう」
最後はヨハン様からバトンを受ける形で、私の言葉で締めくくった。リグリット様の悪事をほぼ全て伝えきれたと思う。
「リグリット……いや、そんなわけが……」
「信じられないというのであれば、自分自身の目で観察すれば良い。リグリット殿がどんな態度をエレナの前で取るか、それが分かれば完璧だろう」
本来なら、屋敷に居る使用人に話を聞くのが一番早いだろう。でも、ガイア様を完璧に納得させる為には、実際に見てもらうのが一番効率が良い。ヨハン様の考えに間違いはないと思った。
「エレナ、済まないが協力してもらえるか?」
「畏まりました、ヨハン殿下」
「ありがとう、助かるよ」
「いえ、どのみち私はリグリット様の婚約者ですし、彼の元に帰る必要がありますからね」
「リグリット……」
「よろしいかな、ガイア殿? また、時間を作ってもらいたい」
「……承知いたしました」
ヨハン様やガイア様達が近くに居る状況とはいえ……リグリット様のところへ戻るのはもうこりごりではあった。出来ればこのままフェードアウトしたいのだけれど……でもそれ以上に、ガイア様に現状をしっかりと認識してもらいたかった。
そして、私の幼馴染のヨハン様がいらっしゃる……彼が提案してくれた内容であれば、出来るだけ協力して差し上げたい。なぜこんな気持ちになるのかは分からないけれど、私はどうやらヨハン様のことを信用し切っているようだった。
リグリット様に裏切られた反動は確かにあるだろうけど……なんだか、もっと別の感情も生まれ始めているような気がする。まあ、今は深く考えないでおくけれど。
「リグリット様はアミーナ様と二人で出掛けることは日常茶飯事でした。婚約者だったはずの私に、仕事を任せるようにもなって」
「まあ、そのくらいは……夫婦になるのだから、今後、もっと困難な状況にもなるだろう? その為の予行演習みたなものだろうしな」
「予行演習ですか……」
「そう、予行演習だ。実際、エレナ嬢にとっては良い勉強になったこともあるだろう?」
結婚後の困難を乗り越える為の予行演習、か。少々、苦しい言い訳のような気がする。いえ、相当苦しいわね。
「確かに良い勉強にはなりました。ガイア様の言う通り、貴族令嬢として器が少し大きくなった気が致します」
「ほう! それは良いことではないか。なにせ、次期バークス家当主の妻となる身なのだからな。器は大きいに越したことはないだろう!」
このお方は私の知るバークス公爵で間違いないのかしら? 非常によく似た替え玉とかではないわよね? 彼くらいの立場なら用意されていても不思議ではなさそうだけれど。ここまで親バカなお方だったとは……言ってることが滅茶苦茶だけれど、それで貫き通せると思っているみたいね。
ヨハン様はガイア様の発言に口出しせず無言を貫いている。とりあえず、説明については私に任せるというスタンスで良いのかしら? 不安だったけれど、私はそのまま話を進めることにした。
「この前開かれた、リグリット様のパーティーをご存知ですか?」
「そんな催し物が開かれていたな。非常に盛り上がったと聞いているが、何もトラブルは聞いていないぞ?」
やっぱり、ガイア様は何も知らないのね。最近は特に多忙だったみたいだから、仕方ないのかもしれないけれど。
「そのパーティー開催の管理や運営も実質は私が全て執り行いました」
「な、なに……? バカなことを言うな、エレナ嬢。あの責任感の強いリグリットがそんなことをするわけがないだろう?」
責任感が強い……か。アミーナ様に夢中になっているリグリット様に、責任感は皆無だと思う。これは、ガイア様も騙されていた可能性があるのかしら……?
「事実です。リグリット様から聞いていないのですか? 彼は私に全て押し付けたのです。ガイア様風に申し上げますと、非常に良い勉強にはなりましたが」
「……」
皮肉を多分に交えて私は話している。特にガイア様の「勉強になる」という趣旨の言い訳については、分かりやすく反復まで披露しながら。ガイア様の口数が明らかに少なくなっているのが目に見えて分かる状況だった。
「ガイア様……夫婦の為の勉強、と言うのでしたら、リグリット様も同様に勉学に勤しむ必要があるのではないですか?」
「それは……そうだな」
「私が知る限り、最近のリグリット様は公爵としての勉強を、怠っているようにしか見えません。アミーナ様とのことを注意すると、ヤキモチを妬いていると煽ってきました。このままでは婚約を続けることが難しい旨を申し上げると……」
私はその時、眉間にしわを寄せ歯を食いしばっていた。それくらいに悔しい出来事がフラッシュバックしたからだ。
「彼女……エレナとは絶対に別れないと言ったらしい。侯爵令嬢である彼女と婚約を続ける方が、バークス家にとって都合が良いと。しかし、リグリット殿の気持ちは完全に幼馴染のアミーナ嬢に向かっているようだ」
私は言葉が途切れてしまったけれど、そのタイミングを見逃さなかったヨハン様が上手く繋げてくれた。ガイア様はそれを聞いて唖然としている。
「バカな……そんなことあるわけが……!」
「さらに、リグリット様は婚約を解消するなら、私の家系であるランカスター家がどうなるか分からないぞ、と脅してきました。おそらくは公爵の力を使って何かをする、という意味合いなのでしょう」
最後はヨハン様からバトンを受ける形で、私の言葉で締めくくった。リグリット様の悪事をほぼ全て伝えきれたと思う。
「リグリット……いや、そんなわけが……」
「信じられないというのであれば、自分自身の目で観察すれば良い。リグリット殿がどんな態度をエレナの前で取るか、それが分かれば完璧だろう」
本来なら、屋敷に居る使用人に話を聞くのが一番早いだろう。でも、ガイア様を完璧に納得させる為には、実際に見てもらうのが一番効率が良い。ヨハン様の考えに間違いはないと思った。
「エレナ、済まないが協力してもらえるか?」
「畏まりました、ヨハン殿下」
「ありがとう、助かるよ」
「いえ、どのみち私はリグリット様の婚約者ですし、彼の元に帰る必要がありますからね」
「リグリット……」
「よろしいかな、ガイア殿? また、時間を作ってもらいたい」
「……承知いたしました」
ヨハン様やガイア様達が近くに居る状況とはいえ……リグリット様のところへ戻るのはもうこりごりではあった。出来ればこのままフェードアウトしたいのだけれど……でもそれ以上に、ガイア様に現状をしっかりと認識してもらいたかった。
そして、私の幼馴染のヨハン様がいらっしゃる……彼が提案してくれた内容であれば、出来るだけ協力して差し上げたい。なぜこんな気持ちになるのかは分からないけれど、私はどうやらヨハン様のことを信用し切っているようだった。
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