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第三幕 エーヴェルトの墓所
5. 神の森
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「何!?あの森にトロールだと?クノプの集落は大丈夫か?」
「ひとまず、住人には地下室に避難するように伝えました。兵士たちが集落の周囲を守っています。」
「分かった。すぐに現地に向かおう。緊急事態だ。」
トロールについては、以前図鑑で読んだことがある。木を根元から引っこ抜き、巨石をも投げる怪力だ。だが、知能は高くない。日光の下ではすぐに石化してしまうから、日中は洞窟に籠っている。
「――私も行きます!」
「よし、戦闘狂令嬢!そう来なくっちゃ。シモンはチビたちを頼む。」
「お、おい。エディーが行くなら、俺も行くぞ。」
慌てた様子で、リアスも名乗り出た。
「おい、坊主。神童だか何だか知らんが、足手まといになる。お前は大人しく待ってろ。」
スヴェンの言う通りだと思うのだが、リアスはその後も「エディーも大して実戦経験は多くない」、「治癒魔法が使えないから行くべきじゃない」とか騒いでいた。無視して準備を整えた。
「では、リアス。行ってきます。これは緊急事態です。ポーションは持ったので治癒魔法が苦手でも大丈夫です。私の心配はせず、大人しくしていて下さい。」
「やめろ。行くな!」
「おいこら!いい加減、大人しくしていろ坊主。」
リアスがシモンの首根っこを掴んだ。
「じゃあ、行くぞ。エディー。」
「ええ。スヴェン!」
東の森にはスヴェンと馬で向かった。
「この辺は、魔獣がよく出るのですか?」
「いや、聞いたことがない。西の森は、聖地・神の森とも呼ばれているからな。」
「――神の森?」
「勇者イリスと賢者エーヴェルトの故郷と伝承されている土地さ。神が降り立ったんだと。」
ああ。神の子の村か。神の子の伝承が残るこの土地に近いことも、最近発見された遺跡がエーヴェルトの墓所だと考えられている理由の一つだ。
「民間信仰だが、今でもクノプの集落には神を信じ、神の子を崇めている連中がいる。」
「――神の子を、つまり今の王家ですか。」
馬で進むと、クノプの集落まではすぐだった。集落にいた兵士たちにトロールが出没した正確な位置を確認する。
「よし、ここからは自分の足で行くぞ。貴族令嬢、走れるか?」
「頑張ります。」
私たちは兵士たちに馬を預け、暗い森をトロールが現れたという洞窟周辺に向かって走った。
「ひとまず、住人には地下室に避難するように伝えました。兵士たちが集落の周囲を守っています。」
「分かった。すぐに現地に向かおう。緊急事態だ。」
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「――私も行きます!」
「よし、戦闘狂令嬢!そう来なくっちゃ。シモンはチビたちを頼む。」
「お、おい。エディーが行くなら、俺も行くぞ。」
慌てた様子で、リアスも名乗り出た。
「おい、坊主。神童だか何だか知らんが、足手まといになる。お前は大人しく待ってろ。」
スヴェンの言う通りだと思うのだが、リアスはその後も「エディーも大して実戦経験は多くない」、「治癒魔法が使えないから行くべきじゃない」とか騒いでいた。無視して準備を整えた。
「では、リアス。行ってきます。これは緊急事態です。ポーションは持ったので治癒魔法が苦手でも大丈夫です。私の心配はせず、大人しくしていて下さい。」
「やめろ。行くな!」
「おいこら!いい加減、大人しくしていろ坊主。」
リアスがシモンの首根っこを掴んだ。
「じゃあ、行くぞ。エディー。」
「ええ。スヴェン!」
東の森にはスヴェンと馬で向かった。
「この辺は、魔獣がよく出るのですか?」
「いや、聞いたことがない。西の森は、聖地・神の森とも呼ばれているからな。」
「――神の森?」
「勇者イリスと賢者エーヴェルトの故郷と伝承されている土地さ。神が降り立ったんだと。」
ああ。神の子の村か。神の子の伝承が残るこの土地に近いことも、最近発見された遺跡がエーヴェルトの墓所だと考えられている理由の一つだ。
「民間信仰だが、今でもクノプの集落には神を信じ、神の子を崇めている連中がいる。」
「――神の子を、つまり今の王家ですか。」
馬で進むと、クノプの集落まではすぐだった。集落にいた兵士たちにトロールが出没した正確な位置を確認する。
「よし、ここからは自分の足で行くぞ。貴族令嬢、走れるか?」
「頑張ります。」
私たちは兵士たちに馬を預け、暗い森をトロールが現れたという洞窟周辺に向かって走った。
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