自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり

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プロローグ

第2話:いや俺も知らなかったんだし俺のせいじゃなくね?

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 次の日。

 俺は一番早く街の門にたどり着いた。

 まぁいつものことさ。

 あいつらはいつも遅れてやってくる。

 バカデカい荷物を持ったまま待ってるなんて慣れたもんだよ。


 次の目的地はここから歩いてもそんなに時間はかからん。

 日帰りできるレベルだろう。

 だが山の途中まで登らなきゃならんからなぁ。

 山を登るのはいつもより疲れるんだ。


「おっさん。はえーじゃねーか」

「いんや?今来たとこだぜ」


 ザブラ達が到着した。

 これから討伐に向かうのに士気を下げちゃいけねぇ。

 俺は気も使える男だからな!

 しかし……相変わらずイコルとフレイは俺に挨拶もしやがらねぇ。

 まぁ俺と喋るのも恥ずかしいんだろうな。

 目も合わせねぇし、俺から距離も取ってやがる。


 こいつらは俺が25の時に拾ったんだ。

 3人でゴブリンに苦戦してたからな。

 俺が颯爽と現れて軽ーく倒したら目を輝かせてやがった。

 それから12年、ずっと一緒にパーティ組んでんだ。

 最初は危なっかしかった3人もどんどん強くなってってなぁ。

 あっという間に俺を抜いて行きやがった。

 子供の成長を見守る親の気持ちってこんなんだろうな。

 子供いねーからわかんねーけど。


「おっさん!なに呆けてんだよ!行くぞ!」

「……気持ち悪い」


 っと、ザブラ達がもう行っちまってる。

 フレイは相変わらずだが……まぁ照れ隠しだ。

 思春期の子供は親に反抗するだろ?

 まぁあいつはもう25ぐらいのはずだけどな。


「すまん!今行く!」


 荷物を崩さないように走って行く。

 バランス感覚も俺は持ってるから、荷物を持ちながら走るなんて朝飯前だ。

 だがある程度近付いたらそれ以上は前に行かないようにする。

 これはあいつらが戦闘に集中出来るようにだ。

 決して「気持ち悪いから近付くな」なんて言われた訳じゃねぇ。

 ある程度距離を話しておいた方が都合がいいんだよ。

 俺が襲われたら助けてくれるはずだしな。

 荷物を放り投げるわけにもいかんし。


 しばらく歩くと山が見えて来た。

 ここにコカトリスキングがいる。

 念のためふもとでもう一度荷物の確認をする。

 うん、大丈夫だ。

 石化ブレス対策のポーションもすぐに取り出せる。


 っと、ヤバイな。

 尿意だ。

 ちょっと立ちションでも……


「すまん!ちょっと荷物置いとくからみといてくれ!」

「はぁ!?」

「しょんべんだ!すぐ戻る!」


 やべーやべー。

 朝行くの忘れてたわ。


 少し離れた場所まで来た俺は、周囲になにもいないことを確認して行為に及んだ。

 この開放感。

 たまらないでもないが、すぐに戻らないとまたなにを言われるかわからん。

 行為が終わるとすぐにまた荷物の場所まで戻った。


 戻るとなんかおかしい。

 荷物の一部が濡れてるのだ。

 いやまて、あそこはまずいぞ。


「あああああ!割れてる!ポーションが!!」


 思わず声に出してしまった。

 いや、さっきまでは確かに割れてなかった筈だ。

 石化を解除するポーションが1本を残して割れていたのだ。


「おっさんうるせーよ」
「気持ち悪い」
「……黙れ」


 いやいやいや!おかしいだろ?


「ザブラ、これなんかしたか?割れてるんだよポーションが!」

「はぁ?自分の管理ミスだろ?」

「いやさっきまでちゃんと……」


 俺はその時気付いた。

 ザブラの腰あたりが少し濡れている。

 もしかして……座ったのか?

 確かにこの周りに座れそうなものはない。

 歩き続けて疲れているのもわかる。

 だがそれでも荷物に座ろうとなんてするのか?


「なぁ、もしかしてここに座ろうと……」

「んなわけないじゃん。おっさんの管理ミス。いいから行くぞ」

「コカトリスキングは厄介だぞ!?一度街に戻って……」

「……私の魔法があるから大丈夫」


 いや間違いない。

 ザブラが座ったんだ。

 なんでそれを俺のミスにするんだ?

 いやいや、おかしいだろ。

 確かにフレイがいれば石化は防げるかもしれないが、魔力だって限界はある。

 戦闘で疲れ果てた上で石化を食らったらヤバイんだ。


 しかし俺が反論しても意味ないだろう。

 石化される前に倒せばいい。なんて言われたら元も子もない。

 まぁ大丈夫だと思うしかないか。


 俺たちはその後も歩いて山越えをした。

 地図を見る限りは、もうまもなくコカトリスキングが発見された場所へ出るだろう。

 あとは倒して帰るだけだ。


 しかしほんとザブラ達は強い。

 俺が勝てるかわからん魔物でもバッサバサ倒して行く。

 小さい頃は俺に剣を教わっていたのに、今じゃ遥かに上だからなぁ。

 魔法もイコルとフレイは一流だ。

 詠唱中は集中もするから周りを疎かにしてしまうが、ザブラがそれをカバーしている。

 本当に危ない時ぐらいしか俺も声を出していない。

 嫌な予感ってのは大事なんだよな。


 そしてくだんの場所についた。

 山越えをした直後に洞穴があり、その中にコカトリスキングがいるらしい。

 中は真っ暗だ。

 イコルが光魔法を唱えて照明を作ると、中へどんどん進んでいった。


 洞窟の中はシンプルだ。

 薄暗く、イコルの魔法がないと周りもよく見えない。

 俺の足元が不安だったため、イコルの魔法の近くに移動しようとしたが拒否られた。

 そんなに近付かれるのか嫌なのか……。

 だが一本道であり、すぐにコカトリスキングのいる広間へと到着した。


 体長は3mはあろう鶏と蛇の尾をもった怪物。

 その目は鋭く、入ってきた俺たちをすぐに捉えた。


「イコル援護を!フレイは支援魔法で強化!」

「「はい!」」


 イコルが魔法を唱えると、ザブラの剣に炎が宿る。

 エンチャント魔法だ。

 これで攻撃力が何倍にも跳ね上がり、弱点をつけば一撃で倒せるほどだ。

 ザブラの元々の攻撃力も相まって、一撃でコカトリスキングが沈んだ。


「ま、こんなもんかな」


 全く危なげがない。

 剣を鞘に納めると、ザブラが振り向いてきた。

 だがその瞬間俺は嫌な予感がしたんだ。

 もしかしたらまだ終わってない?

 いや、首と胴を切り離している。

 終わってる筈だが……。


 俺は何かを見た。

 それはザブラの後方からくる煙で、そのまま石にされる瞬間だ。

 思わず叫んでしまった。


「ザブラ!油断するな!まだそいつは死んでない!」

「はぁ?俺がしっかりとトドメを……」


 振り向くと、先ほどとは別のコカトリスがいた。

 コカトリスクイーン。

 ここのコカトリスはつがいだったのだ。


「こんなの聞いてねぇぞ!」


 いやそれは俺も聞いてなかった。

 つがいがいるなんて話は初耳だ。

 だがそんな文句を今言っても意味がない。

 目の前に敵がいるんだ。


「ザブラ!避けろ!」

「くそっ!」


 ザブラが瞬時に横飛びした。

 ブレスを避けて、俺が見た最悪な状況は免れた。

 さっきのは幻覚なのだろうか。

 すぐに体制を整えたザブラがまた一刀両断する。

 これでしっかりと倒せたのだろう。

 もうあの嫌な予感はしていない。


「あ、危なかったな……」

「おっさん!なんでつがいのこと話さなかったんだよ!俺に恨みでもあんのか!?」

「ち、違う!俺も知らなかったんだよ!」


 凄い剣幕で俺の胸ぐらを掴んできた。

 でも知らないものは本当に知らない。

 クエストを受けた時ですらそんな話はなかったんだ。


「さいてー」

「……最低です」


 フレイもイコルもおかしいだろ。

 俺は知らなかったんだぞ?

 クエストにも1匹としかなかったんだし、俺は悪くないだろ!


「いや……なんかすまん」

「ほんと使えねーな」


 ザブラが掴んでいた手を話した。

 腑に落ちない。

 なんだよこれ。

 コカトリスが2匹とも霧散すると、そこには装飾された宝箱が落ちていた。

 フレイとイコルがそれに気付き、ザブラを呼んでいる。

 俺も気になって見に行こうとしたが拒否られた。


「おぉ……これは……」


 なんかアイテムを手に入れたらしい。

 俺からは見えないが、3人が目線を合わせて頷いている。

 それを服にしまったザブラが帰ろうと言い始め、俺たちは帰路に着いた。
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