落ちこぼれ職人、万能スキルでギルド最強になります!

たまごころ

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第28話 創星の剣、世界を裂く

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春を越え、創星の炉の火は再び高く燃え上がっていた。  
神鍛冶エルヴァンとの邂逅から二ヶ月。レオンの中には一つの言葉が残っていた。  
『次に会うのは、星の鍛えが完成したその時だ。』  

それが彼の新たな使命となった。  
“星を打つ”――それは神話に記された幻想。  
人の手で“世界そのもの”を鍛える試みだ。  
火を以て空を裂き、鉄を以て運命を繋ぐ。  
すべての職人が夢見て、誰一人たどり着けなかった頂。  

夜の王都の片隅、レオンは新しい設計図を前にしていた。  
紙の表面には幾重にも重なる符号と法陣。  
そして中央には一語――「創星剣〈コスモブレード〉」。  
アストリアが小さくため息を漏らす。  
『本当に……作るんですね。星の剣を。』  
「ああ。神鍛冶にも届き、誰も殺さぬ火を持った剣。力ではなく、“創る意思そのもの”を形にする。」  
彼の声は静かだが、目の奥の光はかつてないほど強かった。  

「マスター、でも……もしこの剣が間違って使われたら?」  
ティナが不安げに口を開く。  
「世界が壊れる。創るということは、破壊の隣に立つってことだ。」  
「それでも?」  
「それでもだ。俺たちは初めから、“火”という危うい力と生きてきた。」  

エルナが肩を叩いた。  
「なら、私たちはあなたの炉になる。どんな熱だって支えるから。」  
ガルドが笑った。  
「わしらの誇りじゃ。星すら打てるなら、もう怖いもんはない。」  

青い光が炉を包み、準備は整った。  

◇  

制作は、それまでのどんな鍛造とも違っていた。  
世界そのものの理を変えるため、鍛えられる素材もまた常識を超えていた。  
火霊の灰、星鉄の核、水晶大気の露、そしてレオン自身の血。  

「創精鍛造・最終段階――星界融合!」  
レオンが槌を振り下ろすたびに、夜空の星々が微かに揺らめいた。  
山の鉄脈が歌い、海の潮が応え、雷が遠くで鳴く。  
アストリアが震える。  
『マスター……地脈が賛同している。まるで、大地そのものが、この剣の誕生を祝っているみたいです。』  
「なら、期待に応えるしかないな。」  

鍛造の音は三日三晩止まらなかった。  
仲間たちは交代で炉の温度を保ち、魔力循環を安定させ続けた。  
やがて四日目の夜明け、レオンは最後の一撃を打った。  

「創精鍛造・心打ち――“創星焔界!”」  

轟音が天地を裂く。  
閃光が夜空を白く焼き、王都中の人々が空を見上げた。  
その瞬間、青と金の火が絡まり合い、一本の剣として結晶化していく。  

刃は透明、柄は光そのもの。  
周囲の空気が凪ぎ、鳥も風も息を潜めた。  

「これが……創星剣〈コスモブレード〉。」  

アストリアの声が震える。  
『……美しい。まるで、世界の心臓。』  
レオンは剣をゆっくり持ち上げた。虚無のように軽い――それでも、腕の中で確かな鼓動を感じる。  

その時、工房の外で轟音が響いた。  
空が割れ、巨大な裂け目が生まれる。  
「何だ!?」  
ティナが悲鳴を上げる。  

空の裂け目の向こう、銀の霧の中から影が現れた。  
それは人の形をしていたが、その背には無数の光る炉心が浮かび、視線だけで火を孕ませるほどの存在感。  
アストリアが小さく呻く。  
『あれは……天炉の番人、“大星融神〈メテオラ〉”です。』  

メテオラ――古代の記録に記された、神々が使った最初の鍛冶炉の守護者。  
星を創る者を選定し、資格なき者には壊滅の炎を放つ。  

「資格試験ってことか……面白い。」  
レオンは剣を握り直した。  
「創星の火の価値、確かめてやる。行くぞ!」  

メテオラの眼が血のように輝く。  
空間を裂いて降り注ぐ紅蓮の火線が地上を焼き尽くそうとする。  
アストリアが悲鳴を上げた。  
『マスター、避けて! それは“星の熔解炎”です!』  
「避けるつもりはない! 炉とは火を受け止めるためにある!」  

レオンが創星剣を掲げる。  
剣が青く光り、周囲の炎を吸い込む。  
膨大な熱量が一瞬で収束し、蒼炎の防壁となって空を覆った。  
その美しさに、見る者全てが息を呑んだ。  

「火の意志に、俺の鍛えを問え!」  
剣が振るわれる。  
青白い衝撃波が空を裂き、紅蓮を浄化する。  

だがメテオラは笑った。  
「人の身で星を創るとは無謀な夢よ。ならば見せよ――世界を割る力を!」  

数百の炉心から光が奔流のように広がる。  
地面が浮かび、王都ごと天地が揺れた。  
「アストリア、限界出力だ!」  
『了解――! 魂導核、全面展開!』  

蒼炎が天を貫いた。  
レオンとアストリアが一体化し、世界が一瞬無色になる。  
創星剣が唸り、振り抜かれる軌跡が空を割った。  

閃光は星の軌跡のごとく走り、紅蓮と銀光の境を切り裂く。  
メテオラの身体が斜めに割れ、光の残滓を散らしながら崩れ落ちた。  
その声が風に溶ける。  
『……認めよう。お前の火は、創造の火だ。破滅ではない。』  

巨大な裂け目が閉じ、青い雨が降り始めた。  
それは炎の雨でありながら、触れれば痛どころか温もりを与える不思議な光の雨だった。  

レオンは剣を地面に突き立てた。  
体中が痛みに痺れていたが、笑いがこみ上げた。  
「これでようやく、火は“天”と同じ場所に並んだ。」  

エルナとティナが駆け寄る。  
「マスター! 大丈夫!?」  
「なんとか、終わった……」  
ガルドが笑った。  
「まったく、星まで切り裂くとはのう。神様も腰を抜かすわい。」  

『マスター』アストリアの声が優しく響く。  
『この剣……ほんとうに世界を斬りました。でも、同時に繋ぎました。』  
レオンは頷いた。  
「ああ。破壊するための刃じゃない。人の火を未来へ繋ぐための剣だ。」  

その瞬間、青い火がまばゆく輝いた。  
世界の空に一本の光の筋が走る。それは新たな大陸を貫くエネルギー路となり、人々に永遠の温もりを与える“星の道”と呼ばれるようになる。  

◇  

夜。  
静かな工房で、レオンは炉の前に座っていた。  
青い剣を膝に置き、静かに呟く。  
「創星剣〈コスモブレード〉……これで終わりか。」  
アストリアの笑い声が小さく響く。  
『いいえ。これは始まりです。世界を斬ったからこそ、新しい世界を“創り直せる”のです。』  
「そうか……なら、まだ槌は置けないな。」  

彼は立ち上がり、炉を見つめた。  
火は静かだが、確かに燃えている。  
その炎はもう、彼だけのものではなかった。  

(第28話 完)
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