生臭坊主の異世界転生 死霊術師はスローライフを送れない

しめさば

文字の大きさ
303 / 722

第303話 新たな仲間

しおりを挟む
 次の日。ギルド入り口付近の壁に寄りかかり、立っていたのは魔術師風の冒険者。
 見覚えのある意匠の杖に、これまた見覚えのあるフード付きのローブ。それを深く被っている所為で顔の確認はできないが、背格好から誰なのかはすぐにわかった。

「もしかしてアニタか? こんな所で会うなんて奇遇だな」

 アニタが一瞬だけ見せたのは深刻そうな表情。それは俺を認識した途端に晴れ、嬉しそうな笑顔へと変わった。

「久しぶり、九条! ホントに奇遇ね!」

 だが、その表情もすぐに崩れる。

「……なんだ。1人じゃないんだ……」

「なんだとは何よ。失礼ね……」

 シャーリーとアニタが睨み合い、険悪な雰囲気を醸し出す。別に仲が悪い訳ではないのだろうが、アニタの気性が荒い為か度々反発し合う2人。
 正直このまま見ていても面白そうだが、ここはギルドの入口だ。行き交う人々の往来の邪魔になる。

「2人ともその辺にしておけ。……それで? アニタはどうしてここに? 誰かと待ち合わせか?」

「ううん。そうじゃなくて、ここのギルドが私のホームなの」

「ああ、そうだったのか。……急に話しかけて悪かったな。じゃぁ、俺達はこれで……」

「立ち話もなんだから中へ入りましょ? ここじゃ他の人の迷惑になっちゃうし」

 俺が別れを切り出そうとしたその時。アニタは俺の腕を掴むと、そのまま強引に中へと引っ張る。
 朝イチのギルドは非常に混雑していた。にも拘らず、綺麗に1つだけ開いているテーブルは、運がいいのか悪いのか。
 そこへ無理矢理座らせられると、アニタは前のめりにペラペラと喋り始めた。

「九条はどうしてここに? バイスは一緒じゃないの? 何かの仕事? 私で良ければ手伝ってあげようか? 報酬はいらないわ。私と九条の仲じゃない。ブラムエストでの恩を返すまたとない機会だからさ。……ね?」

「待て待て待て。少し落ち着け。なんなんだ急に……」

 それは最早アニタのペース。その勢いに、周りの冒険者達も目を奪われるほどだ。

「これが落ち着いていられるわけがないでしょ? 久しぶりの再会なんだし、ちょっとくらい浮かれたっていいじゃない? それよりどうなの? どんな仕事でも手伝うからさ。ゴールドの魔術師がこれだけ言ってるんだから当然いいわよね?」

 顔が近い。シャーリーもミアも、ついでに言うとシャロンや従魔達まで呆気に取られているといった状態だ。

「だから待てって。強引が過ぎるぞ。パーティを組むならシャーリーにも一応相談しないと……」

「はぁ? あんたプラチナでリーダーなんだから、そんなの聞かなくたっていいのよ。ねぇシャーリー?」

 隣で茫然と立ち尽くすシャーリーの表情が歪む。口に出さずとも嫌そうである。

「ほら。シャーリーもこう言ってるしさ」

「何も言ってないわよ……」

「ならいいってことよね? 否定はしてないんだから」

 またしてもお互い睨み合い、火花を散らす。

「あーもーわかったわかった。丁度作戦会議室を借りてるから、そこで話そう」

 ここでは人目が気になって仕方がない。作戦会議室ならゆっくりと話も聞けるだろうと、衆目に晒されながらもひとまずは話し合いの場を作戦会議室へと移した。


「へぇ。リブレスからの依頼なんだ。さすがは唯一無二のプラチナ死霊術師ネクロマンサーね」

 俺達がここにいる事情を簡単に説明すると、アニタは感心したように頷く。

「依頼の内容は詳しく話せないが、正直言ってアニタに手伝ってもらう作業は何もないぞ? これは俺にしか出来ないことだ」

「それは間違いないでしょうね。でも、途中魔物や盗賊に襲われるかもしれないじゃない?」

「そりゃそうだが、俺達が自衛も出来ない無能だとでも思っているのか?」

「そういう事じゃなくて、戦力としては多い方がいいでしょ? 獅子は兎を狩るにも全力を尽くすって言うじゃない?」

「言いたいことは理解できるが……」

「なら観光でもいいから連れてってよ。リブレスなんて滅多に入れないんだからさ」

 恐らくそっちが本音ではなかろうか? 先程からそわそわと落ち着かない様子は、仕事を真面目に手伝うような雰囲気ではない。
 個人的に興味はないが、それほどまでに人を引き付けるリブレスという国は、さぞ素晴らしい所なのだろう。

「まぁ、俺はどちらでも構わないが……」

 チラリとシャーリーの顔色を窺う。

「私も別にいいけどさぁ……」

 口ではそう言っても多少の不満はある様子。
 正直に言ってアニタを連れて行くメリットはほぼないのだが、デメリットがないかと言われると、些か疑問が残る。
 リブレスでは一蓮托生である。仮にアニタが悪さをすれば、その責任を全員が負わなければならない。
 疑っている訳ではないが、完全に信用しているわけでもないのである。

「ならば、条件を付けよう。それを守れるなら同行しても構わない」

「いいよ。なんでも言って?」

 得意気に胸を張るアニタ。どうせ何を言っても首を縦に振るのだろうが、こちらにはカガリがいるのだ。

「まずは、俺の仕事に口を出さない事。それと、仲間意識を持つことだ」

「仲間意識?」

「そうだ。ぶっちゃけて言えば仲良くしろってことだ。さっきみたいにシャーリーに突っかかるのはご法度。子供じゃないんだからそれくらい守れるだろう?」

 俺から見れば年齢的にはまだ子供と言っても差し支えないが、冒険者として独り立ちしているなら難しいことではないはずだ。

「いいわ。契約成立。これで今から私もパーティメンバーね」

 カガリに視線を向けるも反応はない。ならば何の問題もないのだが、正直意外だった。
 満面の笑みを浮かべ、興奮冷めやらぬ様子のアニタが、心の底から喜んでいるように見えたからだ。
 アニタが年齢の割に大人びて見えるのは、冒険者の実力もさることながら、何事にも冷静沈着を貫き通していたから。
 少なくとも、ブラバ卿に仕えていた当時はそう見えた。
 とは言え、俺はそれが上辺だけなことを知っている。アニタが対処しきれない事態に陥るとクールビューティーは鳴りを潜め、隠れていた感情が露になるのだ。
 今の状態がまさにそれであった。それが仲間だけに見せる本当のアニタであれば微笑ましい限りだが、リブレスへと行けることがそれほどに歓喜する事なのかと、疑問にも思ってしまうのである。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜

黒城白爵
ファンタジー
 とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。  死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。  自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。  黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。  使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。 ※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。 ※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月中旬出棺です!! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...