生臭坊主の異世界転生 死霊術師はスローライフを送れない

しめさば

文字の大きさ
380 / 722

第380話 閑話

しおりを挟む
 俺達が村に帰ってから数日。代わり映えしない景色とは打って変わって、村は再建に向けての建設ラッシュに沸いていた。
 そんな中、俺はミアに誘われカガリを連れてのお散歩タイム。

 あの後、どういう風の吹き回しかエルザはダンジョンでのことを謝罪に来た。
 それは見たこともないような礼儀正しさで、一見反省しているように見えたのだが、恐らくは世間体を気にしただけの見せかけだ。
 エルザは、ダンジョンの奥へと向かった目的を頑なに喋ろうとはしなかったのである。
 ネクロガルドが各地のダンジョンを調査しているのは知っている。とは言え、俺を仲間に入れたいなどとほざいておきながらも反感を買うような行動は、目に余るとしか言いようがない。
 ダンジョンにはそれよりも重要な何かがあるのだろうか? 魔法書? 魔剣? それとも何か別の理由……。
 エルザとフードルがダンジョンで対峙した時、エルザは大きな舌打ちをしたそうだ。
 フードルは俺が殺したことになっているが、その虚偽情報を流したのはネクロガルド。当然エルザはフードルが生きていることを知っている。
 しかし、魔族を前にして舌打ちだけというのもおかしくはないだろうか?
 もちろん個人差はあるだろう。泣き叫ぶ者もいれば、脱兎の如く逃げる者、腰が抜け立てなくなる者もいるかもしれない。
 それが、エルザは驚いた素振りも見せず、魔族に対して面と向かって舌打ちをしただけ。その様子は、隙あらば強行突破に打って出そうなほどの気迫に溢れていたと言うのだ。
 フードル曰く、それは少なくとも魔族を見たことがあり、ある程度慣れている者の反応であったとのこと。
 今回ルールを破ったのはエルザだ。強制的な尋問をしても許されるような気もするが、既に村での話し合いは終わった後。
 次があれば村からの追放ということで許しを得たようだが、ひとまずは未遂であるということで溜飲は下げよう。
 下手に手を出してネクロガルドと敵対するのも得策ではない。

「……ちゃん? おにーちゃん? 聞いている?」

「ん? ……あぁ……」

 俺の思考を止めたのはミアの不機嫌そうな声。正直全然聞いていなかった。
 気が付くとカガリに乗ったミアが頬を膨らませていて、目の前には雑貨屋のおばちゃんが立っていたのだ。

「このドレスは王女様から貰ったんだよね?」

「ああ」

「へぇ。そうなのかい。すごいねぇ。良く似合ってるよミアちゃん」

「えへへ……」

 笑顔でミアを褒めてくれる雑貨屋のおばちゃん。
 一体何をしているのかというと、ミアのドレス自慢に付き合わされているのである。
 カガリに跨るミアは、白馬に乗った王子様……もとい、白狐に乗ったお姫様。道行く人に声を掛け、王女から貰ったドレスを披露する。それが嘘ではないことの証明に相槌を打つのが、俺の今日の仕事なのだ。
 余程嬉しいのだろう。満足気な顔を見せるミアは微笑ましいのだが、付き合わされている俺としては正直少し恥ずかしい。
 そもそも平民が王族から何かを賜ることなぞ、そうある事ではない。ミアにとっては皆で貰った勲章よりも、リリーから貰った1着のドレスの方が、何倍もの価値があるのだろう。

「次は村長さんのお家のほう!」

「かしこまりました。お姫様」

 ギルドではしっかり者でも、やはりこういうところはまだまだ子供。今日くらいはミアに合わせてやっても罰は当たるまい。
 こんなことが出来るのも、村が平和であるからだ。……言い換えれば暇であるという事と紙一重なのだが、忙しいよりは全然いい。

「よう九条。今日はミアと散歩か?」

「ああ。まぁそんなところだ」

 途中、出くわしたのは村付き冒険者のカイル。泥にまみれボロボロだが、その様子は以前とは少し違っていた。

「カイルは相変わらず酷いな……」

「まぁそう言うなって。鍛錬の帰りなんだ。シャーリーがもう上がってもいいってさ」

「本当か? 逃げたんじゃなく?」

「ホントだよ。あんまり急激に身体を作るのも良くないんだとさ。さすがゴールドの冒険者は言うことがちげぇや」

 その表情から多少の疲れは見られるも、充実しているかのような爽やかな笑顔は清々しい。

「そうか。頑張ってるじゃないか」

「ああ。もう甘えるのはやめたんだ。今回の事で思い知った。九条がいなくても村を守れるようにならなきゃダメなんだ……」

 それはカイルを変えるだけの出来事だったのだろう。そんなカイルに水を差すつもりはないのだが、それには相当な努力が必要そうである。

「それで九条。ものは相談なんだが、手っ取り早く強くなる方法とかって知らないか?」

 そんな方法あれば、皆やっている。

「……甘えるのは、やめたんじゃなかったのか?」

「もちろんだ。でも楽に強くなれるならそれに越したことはないだろ?」

 そんなことを自信満々に言われても……と、言いたいところではあるが、激しく同意せざるを得ない。
 楽して強く。楽してお金持ちに。楽してモテたい。それは万人の夢だ。もちろんそこには俺も含まれている。
 しかし、それが叶わないからこそ精進が必要であり、努力無くしては成し得ないことなのである。

「カイル。いいことを教えてやろう。――己をととのえ成すところ、常につつしみあり。かく己につは、全ての他の人々にてるにまさる――だ」

 それは法句経ほっくぎょうと呼ばれる仏の教えの1つ。

「おのれをととのえ……なんだって?」

「慎みを以て行動し自分自身に克つ者は、他人にも勝るであろう……という意味だ。何事も自分自身に打ち勝たなければ願いは成せない。ぶっちゃけると、努力しろ……ってことだな」

 異世界に放り出され、良くわからない内に強くなっていた俺に説得力があるかと言われると首を傾げざるを得ないが、決して自分を棚に上げているわけではない。

「そりゃそうだよな。地道にやるよ」

 もちろん最初からカイルが本気で言っているわけではない事はわかっていた。だからこそ少しからかってやろうと、ワザと真面目そうな顔をして悩むそぶりをして見せた。

「簡単に強くなる方法がないわけではないが……」

「ホントか!? 是非教えてくれ!」

 いきなり俺の肩を掴み、ガクガクと揺らすカイル。あまりの食いつきっぷりに一瞬、頬を緩めてしまったほどだ。

「頭蓋骨と魂をくれれば、無敵の戦士に……」

 それを聞いたカイルは、肩を落とし顔を歪めた。

「死ねってことじゃねぇか!」

「間違ったことは言ってないだろう?」

「あーはいはい俺が悪かったよ。期待させやがって……。いつか俺も九条みたいに強くなって吠え面をかかせてやるからな!」

 ニヤニヤと笑う俺にビシッと人差し指を突き立て、宣言して見せるカイル。
 随分と大きく出たものだが、目標が大きなことはいいことだ。
 俺はその決意が揺るがない事を願いながらも、少々ご立腹のミアに引き摺られつつ村長宅を目指したのである。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月
ファンタジー
異世界へと転生した有名料理人は、この世界では最強でした。しかし自分の事を理解していない為、自重無しの生活はトラブルだらけ。しかも、いつの間にかハーレムを築いてます。平穏無事に、夢を叶える事は出来るのか!?

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

美女エルフの異世界道具屋で宝石職人してます

網野ホウ
ファンタジー
小説家になろうで先行投稿してます。 異世界から飛ばされてきた美しいエルフのセレナ=ミッフィール。彼女がその先で出会った人物は、石の力を見分けることが出来る宝石職人。 宝石職人でありながら法具店の店主の役職に就いている彼の力を借りて、一緒に故郷へ帰還できた彼女は彼と一緒に自分の店を思いつく。 セレナや冒険者である客達に振り回されながらも、その力を大いに発揮して宝石職人として活躍していく物語。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

処理中です...