生臭坊主の異世界転生 死霊術師はスローライフを送れない

しめさば

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第487話 九条調査報告書

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 ほどなく、呼び出した者達がギルドの応接室に集合した。その表情は、皆が一様に険しい顔つき。
 当然だ。俺とミアだけではなく、そこにはエルザも同席している。
 モフモフ団の仲間としてシャーリーとアーニャ。ギルドの代表としてソフィアと、ネクロガルドからエルザ。そして何故かケシュアがおまけでついてきた。
 ピリピリと張り詰めた空気感。……と、言いたいところではあるが、それを真っ先にぶち壊したのは他でもないミアである。

「私は、おにーちゃんの上ぇ!」

 ピョンと飛び上がり、俺の膝に座ったミアは満面の笑み。
 それというのも、席が1つ足りない為だ。応接室には、3人掛けのソファがテーブルを挟んで1つずつしか置いていない。
 ギスギスした雰囲気の中、どう話を切り出そうかと苦慮していた俺に対し、知ってか知らずかミアのおかげで場の空気は一変して穏やかに。
 そんなミアに、心の中で感謝をしつつ本題へ。

「この面子に思うところもあるだろうが、ひとまずそれには目を瞑って俺の話を聞いてくれ。全てを聞けば、その理由もわかるはずだ」

「え? もしかして九条……」

 俺とエルザを交互に見ては、眉間にシワを寄せるシャーリー。
 その反応だけで、何が言いたいのかは理解した。
 あれだけ訝しんでいたネクロガルドの最高顧問と一緒に帰って来たのだ。
 その勧誘に屈してしまったのではないか――と、疑われても仕方がない。

「いや、大丈夫。エルザは、これから話す事の証明として同席してもらっているだけで、俺がネクロガルドの手先になった訳じゃない」

「……ならいいけど……」

 そんなシャーリー同様、俺に疑いの目を向ける者がもう一人。ギルド支部長のソフィアだ。

「九条さん……。今……ネクロガルドって仰いました?」

「え? ええ。実は少し前から勧誘を受けていまして……。知ってるんですか?」

「勿論です! 絶対にやめた方がいいですよ! あそこは黒い噂が絶えなくて……」

 それはギルドから与えられた知識だろう。初期のシャロンと一緒だ。
 ダンジョンを狙う小悪党。冒険者を攫い、魔王の生贄にしているなどと吹聴しているらしいが……。

「黒い噂が絶えなくて悪かったの」

 その返事は俺ではなく、その隣に腰掛けたエルザからのものである。

「……へ? ……えっ……?」

 まさかその最高顧問が、同席しているとは思うまい。
 ソフィアはそのまま硬直。きっとその頭の中では、様々な可能性を必死に模索しているに違いない。

「すいません、ソフィアさん。それも含めて今から説明するんで」

 これは俺とエルザとの協議の結果だ。
 メナブレアからの帰り道、エルザからコット村での活動が窮屈であるとの指摘を受けた。
 従魔達の警備網が優秀過ぎるのだろう。ネクロガルドの往来を許可してくれ――というのが、エルザからの要望だ。
 和解したからと言って調子に乗るな――と、言いたいところではあるのだが、確かにその所為でシャーリーとアーニャに迷惑を掛けた。
 そこで、ある程度のネクロガルドとの交流を許可する代わりに、エルザにはいくつかの条件を提示したのだ。
 1つ目は、コット村の内部では、住民の迷惑になるようなことは避けること。
 同じ村の住民なのだ。協力しろとは言わないが、表向きだけでも良くしておくべきである。
 2つ目は、コット村に大勢の構成員を住まわせないこと。
 ネクロガルドがその気になれば、村の乗っ取りくらい容易いだろう。数人程度なら構わないが、大規模な拠点はお断り。
 そして3つ目が、ソフィアさんにその存在を明かす事だ。
 コット村ギルド内で、ネクロガルドとエルザの関係について知っているのは、ミアとシャロンだけ。
 そこに支部長であるソフィアさんも加われば、鬼に金棒。監視という意味でも、また何かしらの選択を迫られた時、色々と判断がしやすいだろうことを見越して提案した。
 そもそも、ソフィアさんを含めた村の住民の殆どが、俺がダンジョンで魔族を匿っている事を知っていて黙っている。
 当然それが明るみに出れば、罰せられる事になるだろう。
 言い方は悪いが、既に村全体が共犯者。故に、ネクロガルドの存在を明かしたところで俺が認知していれば、受け入れは容易であると踏んだのだ。

「じゃぁ、まずは今回の仕事の事から話そう。途中、色々と聞きたいこともあるかもしれないが、質問は最後に受け付ける」

 そして、俺は今回の出来事を淡々と語った。
 天空への階段と呼ばれる塔の調査。ネクロエンタープライズとネクロガルドとの関係に加え、メリルとの決闘に生贄であるキャロを助けたこと。
 更には太古の魔獣であるベヒモスを倒し、その過程でカイエンが魔獣化してしまったことにも触れておく。
 そして最後に、エルザが謝罪に来た本当の理由だ。


「――って事で、俺は別の世界からこの世界にやってきた。隠していたのは、身の安全を優先した為だ」

 皆が一様に驚いた様子を見せる中、知っている者だけが平然としている状況。
 ここからが本番。ドキドキの質問コーナーである。

「えっ!? では、魔力欠乏症オーバーメモリーは、それを隠す為の……嘘?」

「すいませんソフィアさん。あの時はそれ以外に方法がなくて……」

 今思えば、それが全ての始まりだった。
 ソフィアとカイルは、記憶を失ったフリをしていた俺を見て好都合だとカッパープレートを渡し、俺は逆に余計な詮索はされずに済んだと安堵する始末。
 要は、お互いが上手く騙せたと思っていただけであり、結果的にはどちらも騙されていたのである。

「でも、俺も騙されてたんで、両者痛み分けという事で……」

「あはは……」

 引きつった笑顔を浮かべるソフィアに対し、シャーリーは素直に飲み込めてはいない様子。

「ちょっと待ってよ。さらっと言ってるけど、ホントなの?」

 信用されていない訳ではないが、それでも知らぬ者からすれば疑ってもおかしくないほど突拍子もない話。
 シャーリーの反応も当然だ。

「嘘ではない。九条について調べた資料を持って来た。良ければ目を通してみるか?」

 エルザからの提案をすぐには受けず、シャーリーの視線は俺へと移る。

「俺に気を使わなくていい。気の済むまで読んでくれ。そこに書いてあることは全て本当のことだ。むしろ、良くそこまで調べ上げたもんだと感心してるよ……」

 エルザから手渡された紙の束を、食い入るように読み始めたシャーリー。
 世界樹の魔力が逆流する降臨の儀。そこから5年後に生まれる特異点が、ベルモント付近に現れるであろうこと。
 魔法書『デ・ウェルミス・ミステリイス』を所持する冒険者の発見に加え、俺にそれを扱えるだけの力があるとケシュアから報告されている。
 そこから、俺についての調査が本格的に始まったようだが、コット村以前の足取りは不明。その過去は無いに等しく、出自も同様だと記載されている。
 過去、魔王に仕えていたとされる四天魔獣皇の内3体を始末した事で、勇者としての疑いが強まったことも付け加えられていたのだが、それが晴れたであろう最大の要因は、俺がアーニャとフードルを受け入れたことだ。
 確かに、俺が魔王と敵対する勇者であるとするならば、魔族との共存はあり得ない事象なのである。
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