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第575話 アンカース領編入へ
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俺達の突然の登場により、軍議の場はアンカース家ともふもふアニマルキングダム側に分かれての会談へと姿を変えた。
席に着いたのはアンカース家の当主ロウエルに、その令嬢ネスト。対してこちら側にはリリーとキャロが席に着く。
その他の者は起立での参加。仮にではあるが、万が一会談中に王国軍が侵攻を始めた場合には、俺達も支援に加わることを約束している。
「リリー様……。その……失礼ですが、新たな国を興したというのは……」
「ネストが耳を疑いたい気持ちも理解出来ます。しかし、これは紛れもない事実。私がその女王として立ち上がろうと決意したのです」
リリーは王都を発った後、コット村で何があったのかを懇切丁寧に語った。
呪詛のこと。グリンダのこと。そしてアルバートの犯した罪の数々。当然その中には国王殺害の件も含まれている。
「陛下……アルバート様がアドウェール様を!?」
俺へと向けられるネストの視線。
リリーの言う事なのだからそのままの意味で信じればいいのに、余程の衝撃だったと見える。
それとも、俺がリリーを騙して敵対するよう焚き付けているとでも思っているのか……。
「間違いありません。直接本人の魂から聞き出した訳ではないですが……。まぁ、アルバートの行動を見ればわかるでしょう?」
「そういうことね……。九条が禁呪を使えるから……」
流石はネスト。話が早くて助かる。
「私達はその事実を大義名分に新たな国を建国する……いや、しました。既にグランスロードとの対話を終え、正式な国として承認するとの声明、調印もいただいています。更には同盟も締結し、あとは宣言を残すのみ……。キャロはその証明にと出向いて下さったのです」
「こ……こんにちは……。巫女のキャロです」
リリーの隣に座るキャロは、緊張気味にそのまま頭をちょこんと下げた。
先程まで羽織っていたコートは、荷物の中。現在は俺がデザインした巫女の衣装を着用している。
勿論常に着ている訳ではなく、会談の為の特別感を演出する為に着てもらっている……というのが認識的には正しいだろうか。
その胸に輝くのはグランスロード王国の徽章。八氏族評議会に認められた者のみが与えられる、特別な身分を証明する物。
一応正式なグランスロードからの使者……という体ではあるが、「コット村を見てみたい」というキャロの突然の申し出により、急遽同行が決定してしまったのだ。
当の本人は観光気分での発言だったのだろうが、それが八氏族評議会の耳に入り、あれよあれよと公式の外交特使として仕立て上げられてしまったというわけ。
今は危険だから……とは言ったものの、メリルの「お前が守ってやればいいだろ」の一言と、ミアのおねだり。さらには八氏族評議会のお墨付きという同時波状攻撃に、屈せざるを得なかったというのが事の真相である。
「……巫女……?」
「それについては、俺が説明します」
隠していたのは俺なので、文句は言えないのだが、いちいち説明しなければならないのが、すこぶる面倒臭い……。
できればリリーに全部丸投げしたいのだが、こればっかりは仕方ない。
「なるほど……。じゃぁ九条は、最初から黒き厄災とグルだったわけね?」
「まぁ、そうなりますね」
「黒き厄災がフェルス砦の防衛に加担したのも、知っていたわけね?」
「まぁ、そうなりますね」
「じゃぁ、レナへの占いも私への占いも、全部嘘っぱちだった……ってわけね?」
「まぁ、そうなりますね」
「黒き厄災とは無関係を装いグランスロードに向かっておいて、何もせず封印完了をでっちあげようとしていた訳ね!?」
「ま……まぁ、そうなりますね……」
徐々に顔を引き攣らせていくネストに、顔が怖いですよ? とは、冗談でも言える雰囲気ではなかった。
そのやるせない怒りは尤もなのだが、仕方がなかったのだ。
フェルス砦を破壊したのはバルザックだが、まさかその子孫であるネストに責任を取らせる訳にもいかないだろう。
かと言って、俺個人で砦の修繕費など支払えるはずもなく、放っておいたらニールセン公の軍は甚大な被害を被っていたはずである。
感謝しろ……とまでは言わずとも、その意図を少しくらい汲んでくれてもバチは当たるまい。
「い……今はそんなことより、現状をどうにかした方が……」
「……はぁ、確かにそうね……」
どうみても腑に落ちたとは言えない顔だが、ひとまず話題を逸らす事には成功した。
ネストの父、ロウエルがわざとらしい咳払いで注目を集めると、緩んだ空気が引き締まる。
「話を戻しましょう。リリー様は、我々に王国を裏切れと……そう仰りたいのですね?」
「端的に言うなら、そういう事になります。アンカース領をもふもふアニマルキングダムへと編入する。その交渉の為の来訪であるとお考え下さい」
「も……もふ……?」
「我が国の名に、なにか?」
「いえ……」
まぁ、それが一般的な反応だろう。ふざけているのかと言われても仕方がない名前である。
一方のリリーは恥を捨てたのか真顔を貫いていて、その威圧感たるや子供とは思えないほど。
流石は王族、ビジネスモードには一分の隙も見当たらない。
「とは言え、私達に出来る事はそう多くありません。それでも現状を打破するだけの力は有しているつもりです」
「アレの事……ですか?」
ロウエルがチラリと視線を移したのは、窓の外。
2階からでも見える巨体は、黒き厄災ことファフナーである。
俺達をここに連れて来た後、上空にて待機してもらっていたのだが、現在はアンカース邸の庭でお昼寝中だ。
「もちろん……と、言いたいところではありますが……。九条……どうしましょう?」
当然ファフナーは戦力として数えてもらって構わないが、問題はそこじゃない。
ファフナーはグランスロードの所有物。実際はそうじゃないが、管理を任されているという意味で、他の国からはそう認識されている。
そのファフナーが同盟国のスタッグに手出しするのは、グランスロードの立場的にはマズイのではないだろうか?
恐らくファフナーは、王国軍に目撃されているだろう。俺達も、まさかノーピークスがこんな切迫した状態だとは思わなかったのだ。
「ファフナーの管理権限を譲渡された……ってのはどうでしょう?」
「うーん。少し信憑性に欠けますね……。そもそも獣人達が黒き厄災の管理を任されたのは、罰として……であれば、グランスロード側にその権限はないのでは? それでしたら、私達が無理矢理ファフナーを奪ったと言った方が、まだマシのような……。丁度九条は魔獣使いでもありますし……」
「そうですか? ファフナーを奪った賊と同盟を組むというのも、おかしな話では?」
「確かにそうですね……」
何かいい案はないものか……。小首を傾げながらも腕を組み唸る俺とリリー。
そこに割って入ったミアの声。
「元に戻った――じゃダメなの?」
「元に?」
「だって、おにーちゃんは魔王様なんでしょ? なら、黒き厄災を従えててもいいんじゃない?」
「それだッ!」「それですッ!」
リリーと同時にハモる俺。
流石はミアだ。視野が広いと言うべきか、完全に盲点であった。
確かに魔王であれば、四天魔獣皇と呼ばれる魔獣達を従えていても、なんら不思議なことはない。
既に金の鬣を使役して見せているのだ。魔王の証明は完了している。
元の鞘に納まった。ただそれだけのことだ。
「さて……。黒き厄災の問題が解決したところで、アンカース卿。今一度改めてお伺い致します」
喜ばしい笑顔から一転。リリーは真剣な面持ちでロウエルを見据えた。
「我々の理念に賛同して下さるのであれば、是非我が盟友の一員として運命を共にしていただきたい。……そうですね……。出来れば返事は王国軍の動く前に……」
その言葉を待たずして、俺達を除いた全ての者がリリーへと駆け寄り、その足元に跪く。
「どこに迷う余地などありましょう。我が君の願いは我等の願い。アンカース家一同、これからも粉骨砕身の覚悟を持って王女……いえ、女王陛下に尽くす事を誓います」
「ありがとうロウエル。そしてネストも……」
満面の笑みを浮かべながらも、盛大な拍手を送るミア。
それにつられて弱々しい拍手をするキャロに和みながらも、アンカース領は正式にもふもふアニマルキングダムへの編入を果たしたのだ。
席に着いたのはアンカース家の当主ロウエルに、その令嬢ネスト。対してこちら側にはリリーとキャロが席に着く。
その他の者は起立での参加。仮にではあるが、万が一会談中に王国軍が侵攻を始めた場合には、俺達も支援に加わることを約束している。
「リリー様……。その……失礼ですが、新たな国を興したというのは……」
「ネストが耳を疑いたい気持ちも理解出来ます。しかし、これは紛れもない事実。私がその女王として立ち上がろうと決意したのです」
リリーは王都を発った後、コット村で何があったのかを懇切丁寧に語った。
呪詛のこと。グリンダのこと。そしてアルバートの犯した罪の数々。当然その中には国王殺害の件も含まれている。
「陛下……アルバート様がアドウェール様を!?」
俺へと向けられるネストの視線。
リリーの言う事なのだからそのままの意味で信じればいいのに、余程の衝撃だったと見える。
それとも、俺がリリーを騙して敵対するよう焚き付けているとでも思っているのか……。
「間違いありません。直接本人の魂から聞き出した訳ではないですが……。まぁ、アルバートの行動を見ればわかるでしょう?」
「そういうことね……。九条が禁呪を使えるから……」
流石はネスト。話が早くて助かる。
「私達はその事実を大義名分に新たな国を建国する……いや、しました。既にグランスロードとの対話を終え、正式な国として承認するとの声明、調印もいただいています。更には同盟も締結し、あとは宣言を残すのみ……。キャロはその証明にと出向いて下さったのです」
「こ……こんにちは……。巫女のキャロです」
リリーの隣に座るキャロは、緊張気味にそのまま頭をちょこんと下げた。
先程まで羽織っていたコートは、荷物の中。現在は俺がデザインした巫女の衣装を着用している。
勿論常に着ている訳ではなく、会談の為の特別感を演出する為に着てもらっている……というのが認識的には正しいだろうか。
その胸に輝くのはグランスロード王国の徽章。八氏族評議会に認められた者のみが与えられる、特別な身分を証明する物。
一応正式なグランスロードからの使者……という体ではあるが、「コット村を見てみたい」というキャロの突然の申し出により、急遽同行が決定してしまったのだ。
当の本人は観光気分での発言だったのだろうが、それが八氏族評議会の耳に入り、あれよあれよと公式の外交特使として仕立て上げられてしまったというわけ。
今は危険だから……とは言ったものの、メリルの「お前が守ってやればいいだろ」の一言と、ミアのおねだり。さらには八氏族評議会のお墨付きという同時波状攻撃に、屈せざるを得なかったというのが事の真相である。
「……巫女……?」
「それについては、俺が説明します」
隠していたのは俺なので、文句は言えないのだが、いちいち説明しなければならないのが、すこぶる面倒臭い……。
できればリリーに全部丸投げしたいのだが、こればっかりは仕方ない。
「なるほど……。じゃぁ九条は、最初から黒き厄災とグルだったわけね?」
「まぁ、そうなりますね」
「黒き厄災がフェルス砦の防衛に加担したのも、知っていたわけね?」
「まぁ、そうなりますね」
「じゃぁ、レナへの占いも私への占いも、全部嘘っぱちだった……ってわけね?」
「まぁ、そうなりますね」
「黒き厄災とは無関係を装いグランスロードに向かっておいて、何もせず封印完了をでっちあげようとしていた訳ね!?」
「ま……まぁ、そうなりますね……」
徐々に顔を引き攣らせていくネストに、顔が怖いですよ? とは、冗談でも言える雰囲気ではなかった。
そのやるせない怒りは尤もなのだが、仕方がなかったのだ。
フェルス砦を破壊したのはバルザックだが、まさかその子孫であるネストに責任を取らせる訳にもいかないだろう。
かと言って、俺個人で砦の修繕費など支払えるはずもなく、放っておいたらニールセン公の軍は甚大な被害を被っていたはずである。
感謝しろ……とまでは言わずとも、その意図を少しくらい汲んでくれてもバチは当たるまい。
「い……今はそんなことより、現状をどうにかした方が……」
「……はぁ、確かにそうね……」
どうみても腑に落ちたとは言えない顔だが、ひとまず話題を逸らす事には成功した。
ネストの父、ロウエルがわざとらしい咳払いで注目を集めると、緩んだ空気が引き締まる。
「話を戻しましょう。リリー様は、我々に王国を裏切れと……そう仰りたいのですね?」
「端的に言うなら、そういう事になります。アンカース領をもふもふアニマルキングダムへと編入する。その交渉の為の来訪であるとお考え下さい」
「も……もふ……?」
「我が国の名に、なにか?」
「いえ……」
まぁ、それが一般的な反応だろう。ふざけているのかと言われても仕方がない名前である。
一方のリリーは恥を捨てたのか真顔を貫いていて、その威圧感たるや子供とは思えないほど。
流石は王族、ビジネスモードには一分の隙も見当たらない。
「とは言え、私達に出来る事はそう多くありません。それでも現状を打破するだけの力は有しているつもりです」
「アレの事……ですか?」
ロウエルがチラリと視線を移したのは、窓の外。
2階からでも見える巨体は、黒き厄災ことファフナーである。
俺達をここに連れて来た後、上空にて待機してもらっていたのだが、現在はアンカース邸の庭でお昼寝中だ。
「もちろん……と、言いたいところではありますが……。九条……どうしましょう?」
当然ファフナーは戦力として数えてもらって構わないが、問題はそこじゃない。
ファフナーはグランスロードの所有物。実際はそうじゃないが、管理を任されているという意味で、他の国からはそう認識されている。
そのファフナーが同盟国のスタッグに手出しするのは、グランスロードの立場的にはマズイのではないだろうか?
恐らくファフナーは、王国軍に目撃されているだろう。俺達も、まさかノーピークスがこんな切迫した状態だとは思わなかったのだ。
「ファフナーの管理権限を譲渡された……ってのはどうでしょう?」
「うーん。少し信憑性に欠けますね……。そもそも獣人達が黒き厄災の管理を任されたのは、罰として……であれば、グランスロード側にその権限はないのでは? それでしたら、私達が無理矢理ファフナーを奪ったと言った方が、まだマシのような……。丁度九条は魔獣使いでもありますし……」
「そうですか? ファフナーを奪った賊と同盟を組むというのも、おかしな話では?」
「確かにそうですね……」
何かいい案はないものか……。小首を傾げながらも腕を組み唸る俺とリリー。
そこに割って入ったミアの声。
「元に戻った――じゃダメなの?」
「元に?」
「だって、おにーちゃんは魔王様なんでしょ? なら、黒き厄災を従えててもいいんじゃない?」
「それだッ!」「それですッ!」
リリーと同時にハモる俺。
流石はミアだ。視野が広いと言うべきか、完全に盲点であった。
確かに魔王であれば、四天魔獣皇と呼ばれる魔獣達を従えていても、なんら不思議なことはない。
既に金の鬣を使役して見せているのだ。魔王の証明は完了している。
元の鞘に納まった。ただそれだけのことだ。
「さて……。黒き厄災の問題が解決したところで、アンカース卿。今一度改めてお伺い致します」
喜ばしい笑顔から一転。リリーは真剣な面持ちでロウエルを見据えた。
「我々の理念に賛同して下さるのであれば、是非我が盟友の一員として運命を共にしていただきたい。……そうですね……。出来れば返事は王国軍の動く前に……」
その言葉を待たずして、俺達を除いた全ての者がリリーへと駆け寄り、その足元に跪く。
「どこに迷う余地などありましょう。我が君の願いは我等の願い。アンカース家一同、これからも粉骨砕身の覚悟を持って王女……いえ、女王陛下に尽くす事を誓います」
「ありがとうロウエル。そしてネストも……」
満面の笑みを浮かべながらも、盛大な拍手を送るミア。
それにつられて弱々しい拍手をするキャロに和みながらも、アンカース領は正式にもふもふアニマルキングダムへの編入を果たしたのだ。
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