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~ ??? 視点 ~
俺の家族は、ちょっと可笑しい。
それに気付いたのは、高校に入ってから…と、
比較的に最近なのだが…。
それ迄、違和感が働かない程に仲が良いせいだろう。
「 あ、兄さん…! 」
「 凪咲。一緒に帰るか? 」
「 うん!! 」
中•高一貫校へと入学した事で、3歳年下の弟と一緒に、帰宅する時は多い。
黒髪に茶系の瞳をした中学1年の弟は、スクールカバンをリュックサックの様に担いで駆け寄って来ると、俺の横へとぴったりとくっついて来た。
「 少し離れろ…… 」
「 え……はい…… 」
しょんぼりとした弟は、この歳になっても兄っ子だから、呆れてくる。
「 学校から離れたら……いいぞ 」
「 ふぁー!やった! 」
分かりやすく笑顔になり、その表情にフッと息を吐く。
…弟の落ち込んだ顔を見るのは、どうも苦手だ。
門を出るなり、見慣れた人物が立っていると弟は俺を放置して、駆け寄った。
「 湊お父さん!ただいま! 」
「 おかえりなさい。凪咲くん 」
笑みを深めて、弟の頭をそっと撫でた人物は、その場にいるだけで絵になりそうな程に美形で格好いい。
クラスの女子達が、身内なら紹介してって執拗い程には、かなり人気なのだが…。
「 和菜くんも、おかえりなさい 」
「 ただいま… 」
目立つから、車内に居て欲しいのだが…。
ほぼ毎日立って待ってるから、明日も噂されるんだろうなって思う。
少しだけ目線を逸らしては、車内へと乗り込んで、父の運転で自宅へと帰る。
自宅は、バカでかいと周りから言われる三階建ての邸宅。
この周りにある家では、一番でかいのは自覚してるけど…。
バカでかいって言われると…悩むものがある。
自動シャッターのついたガレージへと車を駐めると、左右と前にもあり、此処だけで六台駐車している。
それでも駐めれるスペースのあるガレージの、部屋へと繋がる扉を入って行く。
「 ただいまー!帰ってきた! 」
「 おかえり、凪咲 」
直ぐに、リビングの方からやって来たのは…
何歳になっても若いと言われると言うか、実年齢が謎すぎると噂の母親。
弟は、遠慮なく抱き着くとその頭部とズボンのベルトの境から獣の尻尾は現れ、これでもかってほどに左右に振っていた。
「 ふふ、今日も頑張ったね 」
「 うん!がんばった!! 」
弟は、こう見えて…獣人である。
それを知ったのは生まれて直ぐだが、俺を含めて家族はそんなに気にしてなかった。
此の母親も、今は人の姿だが…獣人だからだ。
毎日の様に行われる盛大なハグを眺めていると、後から戻ってきた父は、扉を閉めた。
「 お疲れ様、湊。いつもお迎え、ありがとう 」
「 ただいま、麗菜。ふふ…構いませんよ 」
子供がいるってのを気にせず、二人は近寄ると俺の横で普通に頬をすり寄せては、キスを重ねた。
余り見ないように顔を背けるも、弟は二人の間に割入る。
「 僕も、僕! 」
「 ふふ、おかえり 」
「 おかえりなさい 」
「 ふふん! 」
二人は凪咲の頭部や額、頬に口付けを落すと、母は視線を向けてきた。
「 和菜も、おかえりのチューする? 」
「 しなくていい… 」
「 そう… 」
もう高校生なんだ。
いつまでも子供じゃない。
そんな挨拶必要ないと、三人を放置して先に廊下を進み、リビングへと入ると、キッチンに立っている人物に近づく。
「 実那斗とーさん。ただいま 」
「 おう、和菜おかえり。手を洗って、手伝ってくれるか?皿を並べて欲しい 」
「 りょーかい 」
荷物をソファに置き、キッチンで手を洗ってから食器をテーブルに並べて行くと、弟はやって来る。
「 とーさん!!ただいマッチョ!! 」
「 おかえりマッチョ。凪咲 」
「 おう!! 」
筋肉質な父に合わせて、マッチョ…なんて変な挨拶をする弟も、荷物を放置してはキッチンに来て、手を洗っては料理へと目を向けた。
「 ふぁー!オムライス!僕、これだぁぁあいすき! 」
「 そうか、なら…沢山食べてな 」
「 うん!! 」
父の作るオムライスは、上の部分がパカーンと割るタイプのやつで、ふわとろの玉子が美味しい。
生唾を飲み込んで、食卓に並べていくと、父と母も戻って来て、其々に準備を手伝うと丸いダイニングテーブルへと座る。
中央っぽいところに母が座り、その左に湊、右に実那斗が座ってる。
そして俺は湊側で、弟は実那斗側。
そう…
俺達には、父親が二人いるんだ。
「 それじゃ、頂きましょうか。いただきます 」
「「 いただきます 」」
「 いたーだきます! 」
この違和感に、何故気づかなかったのか…。
本当に、俺自身も謎だ。
俺が生まれた時点で父親は二人居たし、
母も全く気にしないように、二人との接し方に違和感はなかった。
「 んー!うまぁー! 」
「 そうか、良かった 」
二人の父も、俺達に対する接し方は変わらない。
湊はいつも優しくて落ち着いてるし、
実那斗は怒ると五月蝿いけど、言ってる事は筋が通っている。
何方かと言えば、母がちょっと抜けてるから、 二人が補ってるのだろうなって思う。
金曜日の夜は、いつも決まってオムライスを食べてるけど…。
他にも決まった事がある。
全員の風呂が終わり、弟が子供部屋に戻った後母は既に寝室に行ったのだろう、何気無く冷蔵庫から牛乳を出して、コップに注ぎながら父達を眺める。
「 じゃーんけん…ぽん 」
「 ぽん。あいこで… 」
「「 しょっ… 」」
何かしらのじゃんけんが始まると、勝ったのは湊さんだった。
「 勝ちました。では、お先に失礼します 」
「 くっ…そ、おやすみ! 」
「 えぇ、おやすみなさい 」
意味深に笑った湊は、俺の方へと来ては頭へと口付けを落としてから、そのままリビングを出て行った。
「 父さん…先週も負けてなかった? 」
「 負けてる…その前の週もな。なんか、勝てない 」
少し落ち込んでた父は、気を取り戻したのかノートパソコンを開き始めた。
仕事をする気なんだと思いつつ、偶に見てるじゃんけんを思い出す。
「 そりゃとーさん。グーグーチョキ…又はグーポーパーグーの確率高いから…負けるんじゃ? 」
「 え、俺…そんな癖出てるのか? 」
「 出てる。それを湊父さんは見抜いてるから勝てるんだよ 」
「 うあ、マジか…なら勝てねぇわ 」
言葉よりも何一つ落ち込んでない父さんは、ノートパソコンを起動させ、持ち帰った仕事を行い始める。
「 キッチン消すね 」
「 嗚呼。おやすみ、和菜 」
「 おやすみなさい 」
キッチンの電気を消して、リビングを出て行く。
子供部屋があるのは2階で、両親の部屋は3階なのだが…。
上は寝室が2ヶ所ある。
湊の寝室と実那斗の寝室。
そして、じゃんけんで勝った方に母は、
その週は寝てるらしい。
「( 流石に…高1だから、分かるけど… )」
父が二人も居るんだ…。
その理由ぐらいは、察しがつくけど、
気になるもの。
リビングの父さんが上がって来ないか、少し確認してから3階へとそっと脚を向け、湊の寝室の前に行く。
「 はぅ、はっ…ふ、っ…! 」
「 麗菜…… 」
「( っ!! )」
軋むベッドのスプリング音と母の吐息と湊が、母を呼ぶ時だけ聞く優し過ぎる声に、こっちまで恥ずかしくなってその場を離れようとすると、階段に立って、手摺に凭れてる人物と鉢合わせる。
「 あ……その… 」
「 …好奇心があるのは悪くない。寧ろ、子供が起きてる時間に始める方が悪いが…まぁ、湊が…明日休みだから仕方ないか 」
「 ……父さんは、妬いたり…しないの? 」
ずっと気になっていた事を問いかけると、実那斗は3階の方に目線を向けた後ちらっと見ては、
片手で付いてこいという合図をして、2階へと行く。
後をついていくと、俺の子供部屋へと入り、勉強机の椅子に座った為に、俺はベッドへと腰を掛けた。
「 御前が生まれる前までは…妬いていた。でも、いつの間にか妬かなくなった 」
「 何故? 」
「 好きな女が一緒と言う共通点と…彼女を好きになる理由なんていくらでもある。寧ろ、恋愛感情を抱かないと言うのは…一緒にて難しいものだ 」
「 …そう、なんだ…? 」
まだ恋愛をした事が無いから分からないけど、
なんか深い事は言われてるんだなって、何となく思う。
「 御前は…湊と麗菜の子供で、凪咲は俺と麗菜の子供だが…。御前が生まれる前から…妊娠中の麗菜を俺達は、かなり気に掛けててな…。生まれた時はどっちの子だろうが…本当に嬉しかったんだ 」
「 ……そう 」
改めて、この人は実の父親ではないんだと少し落ち込んでしまうと、実那斗は椅子からベッドの方へと来て、俺の横に座っては肩を抱き寄せて来た。
「 本当に…御前が生まれてきて良かった。愛してる…和菜 」
「 っ……ありがとう、俺も…父さんのこと…大好きだ 」
ぐっと感情を我慢して顔を上げると、父はじっと見つめてから強く抱き締めてきた。
「 御前は、何方かと言えば俺っ子だもんなー!マジかわいい…!! 」
「 くる、し…… 」
頭を撫で回されながら抱き締められると、恥ずかしいけど、嬉しかった。
俺は…湊の息子かも知れない。
けど、尊敬してるのは実那斗の方だから…
仕事はいつか継ぎたいと思う。
「 ねぇ、皆……聞いてほしいことがある 」
「「 なんだ? 」」
「 どうしたのー? 」
「 妊娠したの 」
何故、凪咲の後に…子供がいないのか、
それを聞いたことはなかったけど…。
多分…こうなるからなんだろう。
「 おめでとうございます!妊娠何ヶ月ですか!? 」
「 1ヶ月…? 」
「 ちょ、いまて…1ヶ月前なら…どっちだ?よし!!俺の可能性大!! 」
「 いえ、生理周期を考えて私の可能性だってありますよ! 」
「 それがさ、オスがわからないんだよね 」
「「 ミーシャ!!?? 」」
「 うん、そう。誰と勘違いしてた?まさか、私?あははーないない 」
朝っぱらから、母の妊娠疑惑に振り回された父だけど、飼い猫であるミーシャが妊娠した事は、
我が家では七不思議の一つになった。
「 いつ…脱走した? 」
「 寧ろ…避妊してますよね? 」
「 ねぇ、ミーシャ…いたよ? 」
「 あら、そっくりね? 」
「「 この子誰!!? 」」
ちょっとボケてる母が、ミーシャが腹ボテだったから病院に連れて行ったら、妊娠してたけど…
実は、そっくりな野良猫だった…って話を、
クラスメートに言ったら、爆笑する以前の問題に、幼馴染みは真剣な顔をして告げた。
「 御前の…母さん、視力。落ちてるんじゃね?大丈夫? 」
「 え、そうなのか?帰ったら、聞いてみる… 」
そして、家に帰り…
母の様子を見ていると、俺達の足音や匂いとかで、判断してたのが分かった。
「 嗚呼…母さんは、もう…殆ど視えてないぞ 」
「 え…… 」
「 元々獣人って、身体が弱いんですよね…。それに短命ですし。なので…出来るだけ一緒に居て上げてくださいね 」
「 ………分かった 」
母は、特に獣らしさが強かったらしい。
だから…父達は、出来るだけ…
残された時間を幸せにして上げたかったと言っていた。
でも、それは…最後まで母さんには伝えなかった。
父達なりの愛情なんだろう。
「 ねぇ、兄さん… 」
「 なんだ? 」
「 どうして…母さんは、父さんを二人にしたのかな…… 」
俺の手を強く握る弟に、そっと頭に頬を擦り乗せた。
「 ……きっと、俺達が寂しくないようにする為だ。それに…俺は、御前が居てくれてよかったよ。大好きだぞ…凪咲 」
「 ん!!僕も、兄さん…大好き! 」
「 お前等、飯食いに行くぞ 」
「 ファミレスとレストランどっちがよろしいですか? 」
「 僕、ファミレス! 」
二人の呼ばれ走って行った弟を見た後に、
火葬場へと振り返った。
「 父さんを…寂しくさせない為でもあるんだよな?母さん……ありがとう。ゆっくり…休んでな 」
一人きりになるなら、きっと心が壊れてしまうだろう。
けれど、二人だからこそ支え合える。
それを誰よりも…
父さん達よりも…
母さんは知ってたんじゃないだろうか。
「 和菜はどっちがいい? 」
「 ファミレスー 」
「 では、決まりですね 」
俺と凪咲には、二人の父がいる。
仕事ばかりしてる湊と
家事を中心に行ってる実那斗。
其の二人は、誰よりも俺達を愛してくれた。
だから俺達は、父が二人いることへの違和感は感じなかった。
「 俺……湊ならいける気がする 」
「 何いってんですか。もしそうだとしても…貴方がネコですから。私、イヌですし 」
「 はぁ!?どう考えても逆だろ! 」
「 まぁまぁ、二人共。三人仲良く寝ない?川の字! 」
「「 絶対却下。寝室別で 」」
「 ……それって、私が面倒だよね。なら…じゃんけんで勝った方の部屋に行くよ。それでいい? 」
「「 絶対勝つ 」」
そんな話をして、寝室を分けたってことは…。
更に、俺が成長してから湊に聞いたことだった……。
俺の家族は、ちょっと可笑しい。
それに気付いたのは、高校に入ってから…と、
比較的に最近なのだが…。
それ迄、違和感が働かない程に仲が良いせいだろう。
「 あ、兄さん…! 」
「 凪咲。一緒に帰るか? 」
「 うん!! 」
中•高一貫校へと入学した事で、3歳年下の弟と一緒に、帰宅する時は多い。
黒髪に茶系の瞳をした中学1年の弟は、スクールカバンをリュックサックの様に担いで駆け寄って来ると、俺の横へとぴったりとくっついて来た。
「 少し離れろ…… 」
「 え……はい…… 」
しょんぼりとした弟は、この歳になっても兄っ子だから、呆れてくる。
「 学校から離れたら……いいぞ 」
「 ふぁー!やった! 」
分かりやすく笑顔になり、その表情にフッと息を吐く。
…弟の落ち込んだ顔を見るのは、どうも苦手だ。
門を出るなり、見慣れた人物が立っていると弟は俺を放置して、駆け寄った。
「 湊お父さん!ただいま! 」
「 おかえりなさい。凪咲くん 」
笑みを深めて、弟の頭をそっと撫でた人物は、その場にいるだけで絵になりそうな程に美形で格好いい。
クラスの女子達が、身内なら紹介してって執拗い程には、かなり人気なのだが…。
「 和菜くんも、おかえりなさい 」
「 ただいま… 」
目立つから、車内に居て欲しいのだが…。
ほぼ毎日立って待ってるから、明日も噂されるんだろうなって思う。
少しだけ目線を逸らしては、車内へと乗り込んで、父の運転で自宅へと帰る。
自宅は、バカでかいと周りから言われる三階建ての邸宅。
この周りにある家では、一番でかいのは自覚してるけど…。
バカでかいって言われると…悩むものがある。
自動シャッターのついたガレージへと車を駐めると、左右と前にもあり、此処だけで六台駐車している。
それでも駐めれるスペースのあるガレージの、部屋へと繋がる扉を入って行く。
「 ただいまー!帰ってきた! 」
「 おかえり、凪咲 」
直ぐに、リビングの方からやって来たのは…
何歳になっても若いと言われると言うか、実年齢が謎すぎると噂の母親。
弟は、遠慮なく抱き着くとその頭部とズボンのベルトの境から獣の尻尾は現れ、これでもかってほどに左右に振っていた。
「 ふふ、今日も頑張ったね 」
「 うん!がんばった!! 」
弟は、こう見えて…獣人である。
それを知ったのは生まれて直ぐだが、俺を含めて家族はそんなに気にしてなかった。
此の母親も、今は人の姿だが…獣人だからだ。
毎日の様に行われる盛大なハグを眺めていると、後から戻ってきた父は、扉を閉めた。
「 お疲れ様、湊。いつもお迎え、ありがとう 」
「 ただいま、麗菜。ふふ…構いませんよ 」
子供がいるってのを気にせず、二人は近寄ると俺の横で普通に頬をすり寄せては、キスを重ねた。
余り見ないように顔を背けるも、弟は二人の間に割入る。
「 僕も、僕! 」
「 ふふ、おかえり 」
「 おかえりなさい 」
「 ふふん! 」
二人は凪咲の頭部や額、頬に口付けを落すと、母は視線を向けてきた。
「 和菜も、おかえりのチューする? 」
「 しなくていい… 」
「 そう… 」
もう高校生なんだ。
いつまでも子供じゃない。
そんな挨拶必要ないと、三人を放置して先に廊下を進み、リビングへと入ると、キッチンに立っている人物に近づく。
「 実那斗とーさん。ただいま 」
「 おう、和菜おかえり。手を洗って、手伝ってくれるか?皿を並べて欲しい 」
「 りょーかい 」
荷物をソファに置き、キッチンで手を洗ってから食器をテーブルに並べて行くと、弟はやって来る。
「 とーさん!!ただいマッチョ!! 」
「 おかえりマッチョ。凪咲 」
「 おう!! 」
筋肉質な父に合わせて、マッチョ…なんて変な挨拶をする弟も、荷物を放置してはキッチンに来て、手を洗っては料理へと目を向けた。
「 ふぁー!オムライス!僕、これだぁぁあいすき! 」
「 そうか、なら…沢山食べてな 」
「 うん!! 」
父の作るオムライスは、上の部分がパカーンと割るタイプのやつで、ふわとろの玉子が美味しい。
生唾を飲み込んで、食卓に並べていくと、父と母も戻って来て、其々に準備を手伝うと丸いダイニングテーブルへと座る。
中央っぽいところに母が座り、その左に湊、右に実那斗が座ってる。
そして俺は湊側で、弟は実那斗側。
そう…
俺達には、父親が二人いるんだ。
「 それじゃ、頂きましょうか。いただきます 」
「「 いただきます 」」
「 いたーだきます! 」
この違和感に、何故気づかなかったのか…。
本当に、俺自身も謎だ。
俺が生まれた時点で父親は二人居たし、
母も全く気にしないように、二人との接し方に違和感はなかった。
「 んー!うまぁー! 」
「 そうか、良かった 」
二人の父も、俺達に対する接し方は変わらない。
湊はいつも優しくて落ち着いてるし、
実那斗は怒ると五月蝿いけど、言ってる事は筋が通っている。
何方かと言えば、母がちょっと抜けてるから、 二人が補ってるのだろうなって思う。
金曜日の夜は、いつも決まってオムライスを食べてるけど…。
他にも決まった事がある。
全員の風呂が終わり、弟が子供部屋に戻った後母は既に寝室に行ったのだろう、何気無く冷蔵庫から牛乳を出して、コップに注ぎながら父達を眺める。
「 じゃーんけん…ぽん 」
「 ぽん。あいこで… 」
「「 しょっ… 」」
何かしらのじゃんけんが始まると、勝ったのは湊さんだった。
「 勝ちました。では、お先に失礼します 」
「 くっ…そ、おやすみ! 」
「 えぇ、おやすみなさい 」
意味深に笑った湊は、俺の方へと来ては頭へと口付けを落としてから、そのままリビングを出て行った。
「 父さん…先週も負けてなかった? 」
「 負けてる…その前の週もな。なんか、勝てない 」
少し落ち込んでた父は、気を取り戻したのかノートパソコンを開き始めた。
仕事をする気なんだと思いつつ、偶に見てるじゃんけんを思い出す。
「 そりゃとーさん。グーグーチョキ…又はグーポーパーグーの確率高いから…負けるんじゃ? 」
「 え、俺…そんな癖出てるのか? 」
「 出てる。それを湊父さんは見抜いてるから勝てるんだよ 」
「 うあ、マジか…なら勝てねぇわ 」
言葉よりも何一つ落ち込んでない父さんは、ノートパソコンを起動させ、持ち帰った仕事を行い始める。
「 キッチン消すね 」
「 嗚呼。おやすみ、和菜 」
「 おやすみなさい 」
キッチンの電気を消して、リビングを出て行く。
子供部屋があるのは2階で、両親の部屋は3階なのだが…。
上は寝室が2ヶ所ある。
湊の寝室と実那斗の寝室。
そして、じゃんけんで勝った方に母は、
その週は寝てるらしい。
「( 流石に…高1だから、分かるけど… )」
父が二人も居るんだ…。
その理由ぐらいは、察しがつくけど、
気になるもの。
リビングの父さんが上がって来ないか、少し確認してから3階へとそっと脚を向け、湊の寝室の前に行く。
「 はぅ、はっ…ふ、っ…! 」
「 麗菜…… 」
「( っ!! )」
軋むベッドのスプリング音と母の吐息と湊が、母を呼ぶ時だけ聞く優し過ぎる声に、こっちまで恥ずかしくなってその場を離れようとすると、階段に立って、手摺に凭れてる人物と鉢合わせる。
「 あ……その… 」
「 …好奇心があるのは悪くない。寧ろ、子供が起きてる時間に始める方が悪いが…まぁ、湊が…明日休みだから仕方ないか 」
「 ……父さんは、妬いたり…しないの? 」
ずっと気になっていた事を問いかけると、実那斗は3階の方に目線を向けた後ちらっと見ては、
片手で付いてこいという合図をして、2階へと行く。
後をついていくと、俺の子供部屋へと入り、勉強机の椅子に座った為に、俺はベッドへと腰を掛けた。
「 御前が生まれる前までは…妬いていた。でも、いつの間にか妬かなくなった 」
「 何故? 」
「 好きな女が一緒と言う共通点と…彼女を好きになる理由なんていくらでもある。寧ろ、恋愛感情を抱かないと言うのは…一緒にて難しいものだ 」
「 …そう、なんだ…? 」
まだ恋愛をした事が無いから分からないけど、
なんか深い事は言われてるんだなって、何となく思う。
「 御前は…湊と麗菜の子供で、凪咲は俺と麗菜の子供だが…。御前が生まれる前から…妊娠中の麗菜を俺達は、かなり気に掛けててな…。生まれた時はどっちの子だろうが…本当に嬉しかったんだ 」
「 ……そう 」
改めて、この人は実の父親ではないんだと少し落ち込んでしまうと、実那斗は椅子からベッドの方へと来て、俺の横に座っては肩を抱き寄せて来た。
「 本当に…御前が生まれてきて良かった。愛してる…和菜 」
「 っ……ありがとう、俺も…父さんのこと…大好きだ 」
ぐっと感情を我慢して顔を上げると、父はじっと見つめてから強く抱き締めてきた。
「 御前は、何方かと言えば俺っ子だもんなー!マジかわいい…!! 」
「 くる、し…… 」
頭を撫で回されながら抱き締められると、恥ずかしいけど、嬉しかった。
俺は…湊の息子かも知れない。
けど、尊敬してるのは実那斗の方だから…
仕事はいつか継ぎたいと思う。
「 ねぇ、皆……聞いてほしいことがある 」
「「 なんだ? 」」
「 どうしたのー? 」
「 妊娠したの 」
何故、凪咲の後に…子供がいないのか、
それを聞いたことはなかったけど…。
多分…こうなるからなんだろう。
「 おめでとうございます!妊娠何ヶ月ですか!? 」
「 1ヶ月…? 」
「 ちょ、いまて…1ヶ月前なら…どっちだ?よし!!俺の可能性大!! 」
「 いえ、生理周期を考えて私の可能性だってありますよ! 」
「 それがさ、オスがわからないんだよね 」
「「 ミーシャ!!?? 」」
「 うん、そう。誰と勘違いしてた?まさか、私?あははーないない 」
朝っぱらから、母の妊娠疑惑に振り回された父だけど、飼い猫であるミーシャが妊娠した事は、
我が家では七不思議の一つになった。
「 いつ…脱走した? 」
「 寧ろ…避妊してますよね? 」
「 ねぇ、ミーシャ…いたよ? 」
「 あら、そっくりね? 」
「「 この子誰!!? 」」
ちょっとボケてる母が、ミーシャが腹ボテだったから病院に連れて行ったら、妊娠してたけど…
実は、そっくりな野良猫だった…って話を、
クラスメートに言ったら、爆笑する以前の問題に、幼馴染みは真剣な顔をして告げた。
「 御前の…母さん、視力。落ちてるんじゃね?大丈夫? 」
「 え、そうなのか?帰ったら、聞いてみる… 」
そして、家に帰り…
母の様子を見ていると、俺達の足音や匂いとかで、判断してたのが分かった。
「 嗚呼…母さんは、もう…殆ど視えてないぞ 」
「 え…… 」
「 元々獣人って、身体が弱いんですよね…。それに短命ですし。なので…出来るだけ一緒に居て上げてくださいね 」
「 ………分かった 」
母は、特に獣らしさが強かったらしい。
だから…父達は、出来るだけ…
残された時間を幸せにして上げたかったと言っていた。
でも、それは…最後まで母さんには伝えなかった。
父達なりの愛情なんだろう。
「 ねぇ、兄さん… 」
「 なんだ? 」
「 どうして…母さんは、父さんを二人にしたのかな…… 」
俺の手を強く握る弟に、そっと頭に頬を擦り乗せた。
「 ……きっと、俺達が寂しくないようにする為だ。それに…俺は、御前が居てくれてよかったよ。大好きだぞ…凪咲 」
「 ん!!僕も、兄さん…大好き! 」
「 お前等、飯食いに行くぞ 」
「 ファミレスとレストランどっちがよろしいですか? 」
「 僕、ファミレス! 」
二人の呼ばれ走って行った弟を見た後に、
火葬場へと振り返った。
「 父さんを…寂しくさせない為でもあるんだよな?母さん……ありがとう。ゆっくり…休んでな 」
一人きりになるなら、きっと心が壊れてしまうだろう。
けれど、二人だからこそ支え合える。
それを誰よりも…
父さん達よりも…
母さんは知ってたんじゃないだろうか。
「 和菜はどっちがいい? 」
「 ファミレスー 」
「 では、決まりですね 」
俺と凪咲には、二人の父がいる。
仕事ばかりしてる湊と
家事を中心に行ってる実那斗。
其の二人は、誰よりも俺達を愛してくれた。
だから俺達は、父が二人いることへの違和感は感じなかった。
「 俺……湊ならいける気がする 」
「 何いってんですか。もしそうだとしても…貴方がネコですから。私、イヌですし 」
「 はぁ!?どう考えても逆だろ! 」
「 まぁまぁ、二人共。三人仲良く寝ない?川の字! 」
「「 絶対却下。寝室別で 」」
「 ……それって、私が面倒だよね。なら…じゃんけんで勝った方の部屋に行くよ。それでいい? 」
「「 絶対勝つ 」」
そんな話をして、寝室を分けたってことは…。
更に、俺が成長してから湊に聞いたことだった……。
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高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
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