不器用な大富豪社長は、闇オクで買った花嫁を寵愛する

獅月@体調不良

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使用人の方々は、2週間の有給休暇を終えると、何事も無く戻って来たけど、前より実那斗さんの身の周りの世話は手伝わなくなった。

だから、彼は…お風呂に入る前は、お風呂を洗って、着替えを準備して、上がった後は身なりを整えて、飲み物を作ったり軽食を作るようになったし、
スーツも一人で着れるようになった。

手を貸さなくてと出来る事が嬉しいのか、進んで行う辺り、お手伝いを覚えたての子供みたいで可愛いものがある。

そんな事は、本人には言わないのだけど…。

「 やっぱり場違いですよ… 」

「 そんな事はない。綺麗だ…麗菜 」

今夜は、上級階級の人達が集まって行うパーティー。

それに参加して欲しいと言われたから、着飾って来たのだけど…。

心の支えである湊さんは、用事を済ませて行くからと…此処にはいない。
 
不安要素しかない実那斗さんだけで、本当に大丈夫かな?と心配になっては、彼が差し出して来た手を取り、黒塗りの高級車から下りて、レッドカーペットを歩く。
 
「 堂々としているといい。麗菜は、世界一綺麗だ 」

「 お世辞ありがとう…。はぁ、帰りたい…引きこもりたい 」

「 フッ、なら…挨拶が終わったら帰ろうか 」

「 そうして下さい…… 」

胃が引っくり返りそうな程に、緊張で気分が悪いから、出来るだけ早く帰りたくなる。

会場である大きなホテルへと入り、そのホールへと案内されるままに、脚を向けた。

案内人が扉を開くと、そこには大勢の人達が、一気にこっちを見ていたんだ。

「( え…… )」

「 それでは、金鈴院 実那斗様と婚約者様に入場して頂きましょう 」 

「( えっ!えっ!?これってまさか…お披露目パーティー!? )」

婚姻届けを書いたばかりなのに、こんなにも早くお披露目パーティーみたいなのが開かれるとは思わなくて驚いていると、何食わぬ顔で実那斗さんは歩き出した。

上辺だけの拍手が心に刺さりつつ、彼は人の避けた中央を歩き、一番前へと行くと振り返り、会場内にいる方々へと視線を送る。

直ぐに、司会の方がマイクを持ってくると、彼は口を開く。

「 今夜…お集まりの皆様。私…金鈴院 実那斗は、此の度…強く美しい女性…神樹 麗菜さんと結婚する事を…この場を持って報告致します 」
 
「( 上級階級の人って…こう言う事をしなければいけないんだ…少し面倒くさいね )」

宣言しないと、きっと色んな人からアプローチされるのだろうと思った。

仕方ないのだろうけど…。

恥ずかしさを通り越して、面倒臭いと思ってきた。

「 誰…あの女。知ってる? 」

「 知らなーい 」 

「 でも…、あの名字…被ることある? 」

「 偶々でしょ 」

実那斗さんを狙ってたであろう女性達の、チクチクとした会話が耳に届くから、帰りたくなる。

彼はスピーチのようなものを終えると、マイクを司会者へと返しては、私の方を向いた。

「 重要なのは…ここからだ 」

「 ん? 」

「 行ってこい 」

「( え、何処に? )」

背中をそっと押されるように前に出され、実那斗さんが後ろに下がった事に困惑していると、人込みは誰かに気付いて、後ろの方から左右へと開けて行った。

「( あ……… )」

「 ウソでしょ… 」

「 あの方が…こんな場所に来るなんて、と言うか… 」

「 本当に…? 」

「 身内がいるなんて…聞いたことがない 」

ざわついた会場内を気に求めず、その人物はゆっくりとした足取りで私の方へと歩いて来た。

いつも見ていた燕尾服ではなく、ドレススーツには、肩に金の装飾品が施され、白いファーがついたマントを掛け、まるで御伽噺に出てくる王子様みたいな雰囲気があった。
 
髪は半分を後ろに掻き上げて、左右に宝石の付いたピアスをした男性は、私の前まで来ては、足を揃え、軽く会釈をしては右手を差し出した。

「 麗菜……私と一曲、踊ってくれませんか? 」

「 ……喜んで 」
 
そう言えば、このパーティーの為に、連日ダンスの猛特訓を行った。

相手はいつも実那斗さんや先生だったから、何で湊さんじゃないのかなと疑問だったけど、今ならわかる気がする。

最初に…必ず踊るのは、実那斗さんより目上の人、つまり…花嫁の身内だからだ。

手を取ると中央へと移動し、御互いに身を乗せては、クラシック音楽と共にダンスを行う。

「 …湊さん、なんで…その格好を? 」
 
「 ふふ、直ぐに分かりますよ 」

まるでコスプレ?みたいなレベルで、一人だけ派手だから、疑問になる。

エスコートが上手く、ダンスの先生以上に上手く思える湊さんに、殆ど身を任せる感じで踊る。

彼の横顔や私を見詰める表情は、普段とは違った優しさがある。

そして、何処か…意味深な感じも含まれている。

数分のダンスを終えると、湊さんは私の手を掴んだまま、そっと片膝を付き指先へと口付けを落とし、言葉を告げた。

「 おかえりなさい。我が…、神樹財閥の…御息女である、プリンセス。そして…私の愛しい…妹よ 」

「 ……ざい、ばつ…? 」

「 はい。貴女は…此の国を支える、神樹財閥の御息女です。私は…現当主をさせて頂いてるのです 」

「 え、え……っ?? 」

全く理解出来なくて困惑していると、湊さんは立ち上がっては、ニッコリと笑顔を向けた。

「 つまり、この国で…天皇陛下の次に…偉い立場ってことですね。寧ろ、資産に関しては天皇陛下を上回る程の超々お金持ちってことです 」

「 ふぇぇぇえ……!!?? 」
 
分かりやすく、語彙力を消すって教えてくれたと思うけど…。

それでも、理解が出来なかった。

ポカーンとしてる私を余所に、背後から実那斗さんがやって来ると手を取り、引き寄せた。

「 逆玉の輿ってやつだな 」

「 最早、逆シンデレラって言い方もありますね 」

「 待って待って。お兄さん…なんで普段、執事なんてしてるの…!? 」

何気無く演奏が始まって、実那斗さんがダンスをするのに引っ張られるように驚き、顔だけ湊さんの方を向けると、彼は笑った。

「 身分を隠して遊んでるのは、楽しいじゃないですか。それに、実那斗には…私が居ないとダメでしたから 」

「 これからは、そんな事はないからな? 」

「 おやおや、ちょっと家事の知識に毛が生えた程度の赤子が、何を言ってるんですかね 」

「 くっ…! 」

「( そう言えば…実那斗さんが、何気無く湊さんの言動に頭が上がらないのって…立場を含めてってこと?いや、それでも…湊さんって何者よ!! )」
 
本当に理解できないまま、実那斗さんとのダンスを終えた後、いつもお世話になってるという方々からダンスの誘いがあったから、断ることは出来なかった。

こういった場面でのダンスって、同じ人と踊れないらしいね。

途中から彼等は、私を放置してお酒を呑みながら祝してるような人達と会話をしていた。

いや、ちょっとは嫉妬とかしないのかな!?

「 では、次は私と… 」

「 すみません!疲れたので、休みますね!! 」
 
「 あ…… 」
 
どんなに緩やかなダンスでも、何度も踊っていたら疲れるもの。

それも、慣れないピンヒールを履いてるのだから…。

逃げる様にホールを出て、通路を歩き中庭へと向かった。
 
星が綺麗に出る程の夜空に、ちょっと面白くなってピンヒールを脱いで、片方を放置してから歩き、噴水の方に歩いて行く。

「 はぁー…疲れた……… 」

ホール内の人の多さで酔いそうなのに、くるくる周ってばかりのダンスは尚更、吐きそうになる。

ピンヒールの片方を手に持ち、噴水の縁に立って歩いては、夜空を見上げる。

「 毒親に育てられたと思えば…実の母親じゃなくて、オークションに売られ…大富豪に買われたと思ったら…求婚されて…。いざ…婚約したら、私の方が大富豪でしたって…なにそれ、夢物語なの…?必死に生きてきたのに…誰かの描いた物語の中なら…笑えちゃうな… 」 

なんの星かは分からないけど…。

それでも、私も数多い星の中で…ちっぽけな、
小さな星の一つだと思うと笑いを通り越して、切なくなる。

「 これからどうしよう…。まぁ、考えても仕方ないよね…!っと… 」

その場でくるっと回転しようとすると、身体のバランスは崩れた。

「 っ!!? 」

「 !!! 」

あ、転けるな…。

そう思ったのに、掴まれた手首に気付き、視線は真上から、少し落とす。

こういう時…王子様が助けてくれるのだろうけど、
私の王子様は…きっと今頃、酔ってるのだろう。

「 助けれそう……? 」

「 ちょっ、と……無理そうか…な……?っ!! 」

態勢的に、やっぱり転ける運命だった。 

それも向こうも前のめりになっていたし反対の手には、私が落としたピンヒールを持っていたのだから仕方ない。

諦めて、一緒に噴水へと落下すると、彼は上半身を起こす。

「 麗菜!?大丈夫ですか!? 」

「 ふふ……あははっ…!! 」

本当、なんで気づかなかったんだろう…。

王子様って、別に絶望の淵から助けてくれた人って訳じゃない…。

こうして、誰よりも先に私がホールから抜け出した事に気付いて、手を伸ばしてくれる人なんだ…。

可笑しくて笑った後に、込み上げる感情が我慢し切れずに、涙を流した。

「 うっ、っ……私、ばかだ…… 」

「 麗菜…? 」
 
婚約届けも書いて、お披露目パーティーも終えたのに…。
 
こんな感情を抱くなんて……。

「 ……私、私……湊さんが、好き…… 」

「 !! 」

「 …ずっと、見守ってくれて、助けてくれていたの…知ってた……。どうして…気づかないフリをしてたんだろう……どうして、私達は…兄妹…なの…、どうして…今に、なって……貴方を、好きって…自覚したんだろう… 」

溢れる涙を堪えることは出来ず、メイクが崩れることを気に留めず目元を擦っては、顔を上げた瞬間、影は近付く。

「 っ………!! 」

驚いた時には、濡れた唇は深く重なっていた。

目を見開いてはゆっくりと瞼を閉じて受け入れると、
彼はもう一度角度を変えて口付けを重ねて、
そっと離れた。

「 ……どうしてでしょうね。私も…麗菜が好きで好きで、たまらなく…大好きです 」

「 湊…さん… 」

彼は眉を下げては、私の頬をなぞり見詰めてきた。

「 …愛してます、麗菜……。私達の間に子供は…作れないけど…、…駆け落ちでもしませんか…?世界の反対側にでも行きましょうか 」

冗談っぽく言った彼に、私は笑顔で頷いた。

「 はい!!! 」

もし、此れが誰かが描いた物語なら…

それに抗って生きていこう。

誰が考えただろうか、誰が思いついただろうか…。

「 麗菜?湊?は?ちょ、二人は何処に行った…!? 」

「 お二人なら先程…ヘリを呼んで、何処かに飛んでいきましたよ 」

「 はぁ!?馬鹿!止めろよ!!追いかけるぞ!! 」

「 えっ、金鈴院様!本気ですか!? 」

「 当たり前だろ!? 」

花嫁が、駆け落ちするなんて話を…。

そして、意地で探し当てられたって事を…。
 
もちろん、私達はそれが楽しくて笑っていた。

「 実那斗さんなら来ると思ってましたよ。特定に半年も掛かりましたけど 」

「 マジでウルグアイ日本の反対の国にいるなんて思わねぇよ!そして、めっちゃ満喫してんな!羨ましい!!こっちは血眼になって探したっていうのに 」

「 実那斗さんも食べます?ミラネーゼ 」  

「 いらねぇーぜ 」
 
「「 ミラネーゼがいらねぇーぜ…ぶはははっ!!!! 」」

「 笑いのツボも同じようで安心したわ。で、麗菜…帰るぞ 」

「 はーい 」

「 案外すんなり頷くんだな? 」

レストランで食べていた食事を止めては、ゆっくりと席を立ち、先に歩いては振り返って笑顔を見せた。

「 だって私、貴方に買われてるからね 」

「 ……なら、逃げんな。湊も帰るぞ 」

「 おや、私も宜しいのですか? 」

「 当たり前だろ……。御前も、俺の家族なんだ 」

「 仕方ありませんね…また、執事に戻りましょうかね 」

「 世界旅行楽しかった! 」

「 えぇ、とても楽しめました。また行きましょうね 」

「 その時は俺も一緒だからな 」
 
「「 どうしましょう…? 」」

傍から見たら駆け落ちだけど、
私からすれば贅沢な世界旅行だった。
 
そんな旅行も終わりを迎え、私達は母国へと戻ったのだった。

そして今度こそ、正式な結婚式を挙げ…… 

「 実那斗様。新婦が"また"逃亡しました 」

「 くっっそ……!!探し出せ!!地球の裏側だろうが、ゴミ箱の中でも!! 」

「「 は、はい!!! 」」

無かったのだった__。

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