不器用な大富豪社長は、闇オクで買った花嫁を寵愛する

獅月@体調不良

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18 大富豪と花嫁

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湊さんは、実那斗さんの自立に向け
2週間は関わらなくて良い、ときっぱりと言ってしまった。

散歩の時間は、湊さんとだけ行く事になって、
少しだけ寂しさを感じる。

それ以外に変わった事は、湊さんと兄弟であると知ってから、少しだけ距離感が縮んだことだろうか。

他には……前と余り変わらないかもしれない。

いや、彼の事が気になって仕方ないのは…
前よりもある。

「( 会わなくなって…経った5日なのに、なんだろ…。この気持ち… )」

大きなTVで、アニメ映画を流してぼんやりと眺めては、心ここにあらずの状態だと自覚はある。

今頃、彼は仕事だろうか…。

そんな事を考えてると、インターホンが鳴った。

「 えっ……? 」

鳴ることなんて殆ど、いや…初めてだったから、
戸惑って視線を背後に向け、恐る恐るに玄関モニターの前に立つと、画面には深く帽子を被った男性が、段ボール箱を持って立っていた。

「 配達員かな…?はーい 」

誰かしらが頼んだのだろうかと思い、玄関を開けて出て見ると、高身長の男性は俯いたまま、問い掛けて来た。

「 神樹さかき 麗菜れいな様の御自宅ですか? 」

「 ……はい 」

聞き覚えが有る過ぎる声に、如何して彼がその格好をしてるのか分からず、違和感を感じたまま返事をすると、段ボールが差し出された。

「 上の階への、御忘れ物を御届けに参りました 」

「 ……実那斗さん、なんで…配達員なんてしているんですか? 」

紺色の作業着を着ていた彼から、段ボールを受け取って問い掛けると、ゆっくりとした動作で、
彼は左手で帽子の鍔を上げた。

やっと見えた瞳は、経った5日しか離れてなかったのに、懐かしさを感じるのは、何故だろうか…。

「 …忘れ物を届けに来ただけです。では… 」

「 え、実那斗さん……? 」

本当に、其れだけの為だけに…
態々、配達員の格好をして来たのか…。
 
私が困惑してる間に、彼は早々にエレベーターに入り、立ち去ってしまった。

「 ……夢?いや…現実だよね…? 」

彼の事を考え過ぎて、実那斗さんに似た配達員を間違えてしまったのかと疑問に抱くも、そんな訳は無い。

取り敢えず、中身を確認する為に部屋に戻って、リビングにあるカーペットの上に座り、開封してみることにした。

無地の段ボールは蓋を閉められていただけで、ガムテープは貼られてない。

容易く開くと、そこには見覚えのあるものがあった。

「 あ……え、これって…… 」

入ってた物を手にとって見ると、それは4日前に実那斗さんと映画鑑賞しながら話していた、お菓子の缶。

だけど、私が貰うはずだった柄ではなく、夜空と獣が描かれた缶の蓋に、実那斗さんの貰う方では?と疑問が増える。

「 あ……… 」

更に、缶の蓋を開けると中には、一枚の手紙があった。

季節外れの菜の花の封筒の中には、ブーケレターと呼ばれるものがあった。

様々な黄色い花を集めてブーケにしたような可愛らしい便箋には、綺麗な文字で書かれていた。

― 麗菜様へ ―

先日の、失礼な言動お許し下さい。
考えが浅はかだった事を、重々反省しています。
其の謝罪を込めて、今夜20時頃。
我が家で、御食事等如何でしょうか?
腕によりをかけて準備致しております。
気が向いたらいらしてください。

           ― 実那斗より ―

手紙を書くのが、凄く苦手なんだろうなって思うぐらいの不器用内容。

あの場で、謝って食事に誘えばいいのに…。

敢えて、手紙で誘うなんて。

「 行ってみてもいいですか? 」

3時のおやつの時間帯に来た湊さんに、許可を貰う為に手紙の内容を伝えると、彼は自らの顎に手を起き、考える素振りを見せた。

「 行くのは構いませんが…。我々やシェフが料理を作ってないのに…何を準備する気なんでしょう。実那斗様は…料理等、出来ないでしょうに 」

「 それを含めて、気になるから行ってみるよ。多分…何かを知って欲しいんだと思うし 」

「 そうですね…。5日は放置しましたので、何かしら分かりましょう。私達はもう少し関わりませんので、どうぞ…お好きに行ってみてください 」

「 うん、そうしてみるよ 」

本当に関わってない事が驚くけど、実那斗さんが使用人の方々が居なくとも夕食に誘ってくれるのが嬉しくて、
ある意味…彼の成長をいち早く知る機会でもあると思う。

どんな夕食なのか、其ればかりを考えて、
時間が来るのが待ち遠しい。
 
着飾ること無く、比較的なラフな格好をして、湊さんに行って来ます、と伝えてから上の階へと向かった。

インターホンを鳴らし、一つ息を吐いて気持ちを落ち着かせていると、実那斗さんは玄関の扉を開く。

「 こんばんは、どうぞ 」

「 こんばんは。失礼します 」

ほんのつい最近まで、無断で入っていたとは自分でも思えないぐらいに、丁寧に挨拶をしてから、室内へと足を踏み込んだ。

髪型を作ってない彼は、無地の黒いシャツにパンツを履いてる程度。

着飾ってないのに、高級感があるのは元々の育ちの良さだろう。

ちょっと羨ましいと思いつつ廊下を歩き、リビングへと行くと、驚いた。
 
「( えっ…… )」

「 散らかっててすまない…。どうも、掃除は苦手でな…。嗚呼、座ってくれ 」

「 あ、はい…… 」 

綺麗だったリビングは、ゴミが部屋の片隅に寄せられてる程度で、捨て切れていなかった。

燃えそうなゴミは、ゴミ箱に入ってるけど、それも溢れている。

部屋の変わりように驚くけど、これが湊さんが言ってた話なんだと察したから、直ぐに受け入れることは出来た。

「 どうぞ。見栄えも味も上手くないが…どうしても…食べてもらいたかったんだ 」 

「 ふぁ… 」 

ダイニングテーブルへと近づくと、高級なお皿には似合わない程の不格好なオムライスが乗っていた。

ご飯は形が歪で、卵はボロボロで穴が空いている。

でも、彼なりに頑張って作ったと思うのが伝わるから、それだけで嬉しい。

「 オムライス…ですか? 」

「 嗚呼、俺が唯一作れるものだ 」

「 そうなんですね。いただきます 」
 
「 どうぞ 」

御互いに椅子へと座り、直ぐに両手を合わせると、実那斗さんも軽く手を合わせた。

添えられてるスプーンを掴み、先にご飯だけ掬って口へと運ぶと、どこか懐かしいシンプルなケチャップご飯だった。

具は玉ねぎとウィンナーだけで、味付けはケチャップと塩コショウぐらいかな?
そんな味付けに、二口目は玉子と一緒に食べると、玉子は甘くて美味しかった。

「 んっ、美味しいです! 」

「 本当にそうならいいんだが…。俺は、これしか作れない… 」

「 十分だと思いますよ?世間には、オムライスを作れない方は沢山いますので 」
 
カップ麺すら、作るのに失敗する庶民だっているのだから…。

切って焼いて、味付けて、別で卵を準備して溶いて、焼いて乗せる。 

その面倒な工程を行ってる時点で、凄いと思う。

「 …その辺のファミレスやコンビニですら、これより良いものは出て来る… 」

「 見た目は関係ありませんよ。私は、味なら断然こっちの方が好きです。ケチャップのご飯に、バターも含まれてて美味しい。玉子も、バターを溶かした後に巻いてますよね? 」

「 そうだな…。よく分かったな? 」

「 油より香りがいいので…美味しいです。あ…何故、オムライスを作ろうと思ったんですか? 」

一口も食べようとはせず、スプーンを持ったまま目線をオムライスに落としてる彼に、これを練習するきっかけはあったんじゃないかと思い、問い掛けるとゆっくりと答えた。

「 中学生の頃…家庭で出るオムライスに憧れた事があった。だが…俺の家ではいつも完璧なオムライスが、シェフの手によって出されるから…それが普通なのだと思っていたのだが、湊が話したんだ。妹に唯一作って…食べさせることが出来て、喜んでくれたのがオムライスだったと… 」

「 ………! 」

「 不格好なオムライスを、喜んでくれたと…。それを聞いて、オムライスを作ろうと練習した。味付けや作り方は、湊に聞いたものだ 」

だから、どこか…懐かしい気持ちになる味なんだと思った。

オムライスへと視線を落としていると、彼はスプーンを置き、水の入ったグラスを持って一口飲んでは言葉を続ける。

「 家族で食べる料理って認識が…オムライスになった。まぁ…玉子が上手く作れず、挫折した結果…中途半端なんだが…。それでも…俺は、オムライスが一番好きだな。憧れとか含めて 」

きっと彼の憧れには、土日の夜に、子供達と両親がいる中で、食卓にオムライスが出ることなんだろう。

シェフが居たとしても、一人でご飯を食べていたと思われる、彼らしい…憧れだ。

「 ふっ、気持ち悪いだろ。この歳になって…オムライスが好きなんて 」 

鼻で笑った彼は、スプーンを持ち直し、雑に掬って食べようとした。

「 いえ、素敵ですよ。何一つ…気持ち悪くありません。だって私も…オムライスが一番好きですから 」
 
家族皆で食べるオムライス。
それに憧れる理由は分かる。

私も、母と一緒に食べたかったから…。

でも…私の過去に、兄…湊さんと一緒に食べて記憶が少なからずあったから、自然とオムライスが一番好きになってたのかも知れない。

「 ……ありがとうな。否定しないでくれて 」

「 否定なんてしませんよ。オムライスで、世界は救えますもん。万国共通して、オムライス嫌いな子はいませんって 」 

「 ふは、なんだそれ 」

吹き出して笑った彼は、それまで止めていた手を進め、オムライスを食べ始めた。

色んな高級なものを食べてきたはずなのに、ここのオムライスは好きなんだと分かる程に、口角を上げて食べていた。

その表情は、何処か子供っぽくて可愛いものがある。

「 …無理にやろうとしたり、頑張らなくていいんです 」

「 何故だ? 」

食事を終えた後に、先に立ち上がってから自分の分と彼のお皿を持って、荒れてるシンクの方に行き、蛇口を捻って湯を出し、食器洗剤を下の棚から取り出して洗っていく。

「 こう言う事は、得意な方がすればいいんです。でも…本当に偶に、私が体調が悪い時にでもオムライスを作ってくれたら、それはきっと手紙や花束より価値があって、嬉しいものになりますね 」

「 ……それって 」

石鹸で洗った物を洗い流しつつ何処か照れ臭い気分になると、キッチンの方へと来た彼を直視出来ないまま呟く。

「 ……私で良ければ、これからも時々オムライスを作って欲しいです… 」

「 っ…!麗菜……。こんな、物しか作れない…掃除も出来ない奴でいいのか? 」

「 気にしませんよ。私は…専業主婦でしょうから、部屋の事は任せてください 」 

洗い物を終え、シンクを綺麗にしてから、タオルで手を拭いて彼の方を向き合うと、口元に片手を当てた実那斗さんは、驚いた表情の後に泣きそうな顔を見せた。

「 協力し合って…生きていきましょう? 」

「 っ…あぁ、絶対にそうする…。麗菜…俺の、お嫁さんに…なってくれますか? 」

「 ふふ、私で良ければ…貴方のお嫁さんにして下さい 」

恋愛と言う段階を超えてしまったけれど、
きっと好意は…これからもっと付いてくる。

今は、一生懸命に私に寄り添おうとしてくれる、彼に向き合いたかった。 

そっと両手を広げると、彼は少し戸惑った後に抱き付いて来た。
 
「 もちろんだ……。出来る限りの事はする…覚えもする…。だから、色々家事を含めて教えて欲しい…君の負担にはなりたくないから 」

「 その気持ちだけで、嬉しいですよ… 」

「 気持ちだけじゃダメだ。絶対に行動で示す 」

「 ふふ、では…楽しみにしてますね 」

「 あぁ…そうしてくれ… 」

完璧な夫は求めてない。
不出来で不器用でもいい。

寧ろ、そういった部分がある方が…
色々劣ってしまってる私が、フォロー出来る範囲がある事に安堵する。


強く抱き締め合った後に、私はそっと胸板に触れては、離れた。
 
「 さて、片付けましょう!このゴミ袋持って! 」

「 は、はい!! 」

気合いを入れ直しては、部屋の片付けを行った。

その間も、ゴミの分別や捨て方は叩き込んだから、次からはちゃんと行えるようになっていた。
 
「 おや……。我々が居なくても…なんとかなりそうですね? 」

「 麗菜の教え方は…御前に似て、スパルタだったぞ 」
 
「 それはそれは、良い事です 」

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