《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃

ぜらちん黒糖

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5.統合の戴冠と、真実の愛

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​ オルカス帝国の宮殿の1室で、エドワードは窓の外に広がる冬の夜空を眺めていた。そこへ、静かにイザベラが歩み寄る。
 
「エドワード様、お考え事ですか?」
 
「いや……ただ、君とバーストンのことを考えていた。イザベラ、君の決意は固いか?」
 
 イザベラは迷うことなく、深く頷いた。
 
「はい。私はこの子のために、正当な後継者としての地位を取り戻したい。そして、バーストとグラスト王国の裏切りを、白日の下に晒したいのです」
 
 エドワードは振り返り、慈しむように微笑んだ。
 
「わかった。私が力を貸そう。君たちのために、グラスト王国との戦の準備を進める。……もはや、話し合いで解決する段階は過ぎた」
 
「戦に……なるのですね」
 
「ああ。すでにエンゼルの地を武力で占領したことで、彼らとは一触即発の状態だ。何より、バーストは君を金貨で売った男だ。バーストンを正当な後継者と認めるはずもない。ならば、力ずくで分からせるしかないのだ」
 
 イザベラは胸を打たれた。彼は私たちのために、自国を危険に晒すことさえ厭わない。
 
「ありがとうございます。ですが、あなたにそこまでの負担を強いるわけには……」
 
「犠牲などではない。これは、私が君と交わした幼い日の約束を果たすための、正当な行いだ。それに、バーストンは私の息子も同然だ。君たちのためなら、私は何だってしよう」
 
 エドワードはイザベラを引き寄せると、愛おしげにその唇を塞いだ。幼い日の純粋な約束が、長い時を経て、今この瞬間に真実の愛として結ばれた。

「……イザベラ、君宛てに手紙が届いている」

エドワードが懐から取り出した封筒の差出人は、バーストだった。中には非情な離縁状が同封されていた。イザベラは迷わず署名し、その日のうちに送り返した。
 
 バーストとの離婚手続きは完了したが、彼もグラスト王国も、バーストンの存在を無視し、認知することはなかった。
 
 
 ❖
 
 それから3年。イザベラとエドワードは正式に結婚し、二人の絆はより強固なものとなっていた。
 
 バーストンはエドワードを実の父のように慕い、日々、彼から剣術や帝王学を学んだ。その瞳には、母を守るという強い光が宿る、文武両道の少年に成長していた。
 
 そして、ついにその時が訪れる。オルカス帝国は、グラスト王国に対し宣戦布告を行った。
 
「グラスト王国は、わが妃イザベラを欺き、金貨のために不当に追放した。さらには正当な後継者を邪悪な策略によって排除した。我々は彼らの名誉を回復し、その不正を正すために起つ!」
 
 エドワードの宣戦布告は大陸中に衝撃を与えた。グラスト王国は慌てて各国の王族に援軍を求めたが、エドワードが事前に送っていた密書により、バーストの卑劣な行いはすべて露呈していた。どの国も、グラスト王国に味方する者はいなかった。
 
 孤立無援となったグラスト王国は、圧倒的な武力を誇る帝国軍の前に敗北し、無条件降伏した。
 
 ❖
 
 エドワードは王都を占領し、国王ボンベル、バースト、そしてバーストの妻カミラを捕らえた。グラスト王国の玉座の間で、エドワードとバーストが対峙する。
 
「バースト、覚えているか。君は第一夫人であるイザベラを金貨で売った。君の傲慢さと嘘が、この国の破滅を招いたのだ」
 
「エドワード、貴様……イザベラをそそのかしたな! 私は彼女を愛していた。彼女も私を愛していたんだ! 私の妻だったんだ!」
 
 見苦しく叫ぶバーストの前に、イザベラが静かに姿を現した。
 
「バースト様。私を愛していたとおっしゃいましたね? ならば、なぜ私を売ったのですか? なぜ私を欺いたのですか?」
 
 バーストが言葉を詰まらせる。イザベラの隣には、凛々しく成長したバーストンが立っていた。
 
「バースト様。この子は、あなたの息子です。あなたが認めずとも、グラスト王国の正当な後継者なのです」
 
 バーストは絶句した。目の前の少年は、自分と同じ髪の色を持ち、かつての自分に生き写しだったからだ。己が捨てた「価値」の大きさを突きつけられ、バーストは力なく膝をついた。
 
 ❖
 
 国王ボンベルは退位し、バーストは全ての王族特権を剥奪された。彼はカミラとは別々に、王城の1室に幽閉され、二度と表舞台に立つことはなかった。
 
 そして、エドワードは統合帝国の樹立を宣言した。
 
「この瞬間を以て、両国は合併し、オルカス・グラスト帝国が誕生する。そして、わが妃イザベラの長子であり、正当な血統を持つバーストンを、統合帝国の皇太子に指名する!」
 
 イザベラとエドワードの息子として、そして旧王国の継承権を持つ者として、バーストンは両国の未来を背負う立場となった。イザベラはついに、愛する息子の未来を守り抜き、自らの誇りを取り戻したのだ。
 
 戴冠式のまばゆい光の中で、イザベラの顔には、これまでの苦難が嘘であったかのような、穏やかで幸福な笑みが浮かんでいた。

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