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王都編
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しおりを挟む声のした方へ振り向けば、ドアが開いていて誰かが仁王立ちしているではないか。
美しくたっぷりある髪の毛がふんわりと風に舞う。
体の曲線がはっきりわかるロングドレスを身に纏った、女性。
勝気な目がサラを品定めするようにじっと捉えた。その女性は先日命の木で祈祷をしていた祈祷師だった。
「……誰だ?」
「誰だ、ですって!?」
つかつかと歩み寄ってくる女性はサラの目の前にやってくるとビシッと指を指してきた。
「わたくしがあなたの教育をするように言われた、アンジェリカですわ!」
「は?」
「本当にありえませんわ! どうしてこのわたくしがあなたのような者を教育しなければなりませんの!? しかもあなた、命の木にいた騎士じゃない!!」
キーッと目を吊り上げて睨んでくるが、どうしてそこまで敵対心むき出しなのだろうか。意味がわからない。
「……じゃ、やめてくれ」
「そうはいきませんわ! これは王からのご命令ですので! でも、わたくし、あなたに教育するなんて、とっても嫌ですわ! 王族の女性が騎士なんて……! はしたないですのよ! そもそもひょっこり出てきたあなたが王族なんて信じられませんし! それに、さっさと窓から床に降りなさいな! 御行儀悪いですのよ!!」
怒涛のように文句を言い始めたアンジェリカに、サラは「はあ」と深いため息を吐く。
この人物はかなり面倒くさいかもしれない。
教育とは一体何を押し付けられるのだろうか?
勉強ははっきり言って嫌いだ。
知識だけを詰め込む学習など私には必要ないから。
ただ、高度な浄化や祈祷に関しては知りたい。
姉さんを救うヒントになるかもしれないから。
そこでふと気が付く。
……ちょっと待てよ。
もし、私が王族の血を継いでいるとする。
ということは、姉さんもそうなのか?
だとしたら、姉さんもウィンテールの血を引いているということなのか?
その場合は精石を体内に入れているのとは違った状態になるのだろうか?
様々な疑問が浮かんだが、果たしてこの人は答えられるのだろうか?
まあ、この人が答えられないのなら、別の人を探せばいい。
ここは王宮だ。王族がうじゃうじゃいるのだ。誰かわかる者がいるだろう。
それに、ここには書庫があるはずだ。
そこには普段ではお目にかかれない書籍があるかもしれない。
つまり、必要な情報を得るためにはここから堂々と出る必要がある。
嘘でもいいから王族を演じなければいけないということだ。
そのためにアンジェリカがこの場にいる。
ここから逃げるのは、必要な情報を収集してからでも遅くはないだろう。
むしろその情報が猛烈に欲しい。
姉さんを助けるためには遠回りかもしれないが。
いや、もしかしたら王族での勉強が一番の近道かもしれない。
「……気が変わった」
「何ですの?」
「私を王族として教育してくれ」
アンジェリカの整った眉毛がピクリと動く。大きくため息をつくとギロリ、とサラを睨み上げた。かなり気迫のある睨み方だった。
「あなた、本当に気に入りませんわ」
「……それを承知で頼んでいる。それに、私を教育することは王の命令なんだろ?」
「その上から目線の言い方、どうにかなりませんの!? 立場が上なのはわたくしよ! これだから立場をわきまえない人間は嫌いなのよ!」
キーキーと喚き散らすアンジェリカに、サラは頭が痛くなってきた。
どうしてもっとマシな教育者はいなかったのだろうか。
今もなお命の木を浄化しているから、そちらに手がかかっているからだろうか?
サラは考えた。
おそらくこの人物は何を言っても癇に障るのだろう。だったら。
「思ったんだが……あんた、教育なんてできるのか? 見たところ私と年齢はそんなにも変わらないだろう? 祈祷ばかりをしている王族は騎士として生きている人間と比べたら人生経験なんて少ないだろ。だから、今のあんたにとっては王からの命令は荷が重いんじゃないのか? その言い訳を私になすりつけているだけじゃないのか?」
「な、何ですって!? わたくしはあなたよりも十歳は上ですわよ!?」
怒りでぷるぷる震えているアンジェリカに、面倒くさいな、とサラが人知れずため息をこぼす。
「何も知らないくせに……」とぼそりと呟いたアンジェリカが深く息を吸った後、もう一度ビシリとサラに向かって指を指す。
「あなた、本当に気に入らないわ! だから、気に入らないあなたを、わたくしは教育という名の元、いびり倒しますわ! そしてこのわたくしがあなたに王族としての自覚を持たせて差し上げますわ! 覚悟なさい!」
変なやる気を出させてしまった。挑発するという行為に、サラは若干の後悔を覚えた。
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