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王都編
2
しおりを挟む部屋に放り投げられるようにして入れられたサラは、絨毯の敷かれた床に体を打ちつける。
「いって!」
「あなたはここで生活してもらいます。何かあれば王族専用の無線で要望をどうぞ」
そう言って放り投げられたのは、美しい曲線を描く王族専用の無線。
恐らく使わないだろうと思いつつ、サラは手に取る。
「じゃあ、ここで大人しくしているんだよ、じゃじゃ馬ちゃん」
ルドルフがウィンクして、扉を閉めた。
ガチャリ、とカギを閉められたことにハッとして、サラはドアノブをガタガタ揺らす。
「おい! 出せ!」
部屋の内側からはカギが開かないように設計されており、どうやら本当にここから出られないようだ。
「……くそ」
壊すか。
だが、壊せばその破壊音でバレるだろう。
この宮殿には数多くの王族騎士がいる。
すぐに捕まってしまうし、王族騎士に追われて逃走し続けるというのは面倒だ。
逃げるならば、気づかれないようにそっと、がいい。
ため息をつきながら、どうやってここから出るかをサラは思考を巡らせる。
部屋の中には高級そうな調度品がずらり。
ベッドなんて天蓋付きだ。
なんだ、この居心地の悪い空間は。
「サラは……王族だったんだな」
アルグランドが驚きを隠さず呟く。
「どうやらそうらしいが、私は信じていない」
「ははは。そうか。……サラがもし祈祷師となったら、あの服を着ることになるのか?」
「あー……あのテロテロした服だろ。絶対にいやだ」
アルグランドは想像してみたようで、クスッと笑っている。
「おい。絶対に似合わないって思っただろ」と言おうと思ったが、サラも想像してみたので言わないことにする。
確かに絶対に似合わない。
祈祷師はフード付きの純白のローブを身に纏っている。
そのローブの下から覗くのは恐らくロングドレス。
装飾品は華美なものではなく、品があるもの。
王族の洗礼された女性が着ると、神々しく美しい。
人々から崇拝される程、神秘的なヴェールに包まれる。
サラはそんな高貴な女性になる気など全くないし、たとえ王族であったとしても騎士をやめることなど考えていない。
アルグランドは「……面白いな」と笑っているが、笑い事ではない。
サラは眉間に皴を寄せ、窓からの脱出を考えようと窓へ向かった。
こんなところでぐずぐずしている場合ではないのだ。
ここにいれば永久に閉じ込められる気がして、サラは王族としての自分ではなく、さっさと特務としての自分に戻りたかった。
サラが窓に近づいて確認すれば、窓ははめ込み式ではなかった。
どうやらカギを開ければ簡単に開くようだ。
だが、窓から地上へ飛び降りようとしても、今閉じ込められている部屋はかなり階層が高い。
飛び降りれない事はないが、着地に失敗すれば骨折するだろう。
骨折だけで済めばいいが。
飛び降りれないような部屋を選んで監禁したと考えられる。
サラは視線をくまなく動かした。脱出するならば、数メートル先のベランダを利用して降りるしかないな。
まあ、数メートルならば、身体能力的に問題はないし、ベランダ伝えで降りるなら、大きな音もたたないので上手いこと逃げられるだろう。
サラは扉の方へ視線を向ける。
よし、誰かが来る気配はない。
「……今のうちに」
逃げるか、と窓を開けた直後。
「ちょっと、一体何をしているのです?」
だ、誰か来た!
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