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「親分に、様子を見て来いって言付かっている。何度も連絡をしたが、のらりくらりと竜真の野郎言い逃れやがって、埒が明かない。うちの親分も心配している」
「元気かどうか、しかと見て来いって命令されているんだ。親分は今、色々と忙しくて、本家を空けられないからな。だから、こうして挨拶がてら、わざわざオレ達が来たんだ。さぁ、さっさと竜真の野郎を呼んで来い」
別嬪。
一か月前。
関西のヤクザ。
美しいかぐや姫。
傾国の美女。
そういえば、誰かが、その美女は物凄い眼で睨んでくると言っていたような――?
――――なんだか、この符号はヤバイ気がする。
碇は上の空で返事をすると、脱兎の如くその場を後にした。
◇
男たちは、目を奪われていた。
件の、かぐや姫である。
屋敷の、さらに奥まった離れにいるらしいとは聞いていた。
しかし、そこに向かうには池に架けられた一本の橋しか道はなく、しかも、離れの戸は外から厳重に鍵が掛けられており、直接部屋に出向いて顔を拝むことはどうも無理のようだ。
なので、男たちは仕方なしに、対岸から必死になって身を乗り出して、その離れの部屋の様子を観察していた。
離れの周りは、小さいながらも池掘りのような作りなので、これ以上近づくのは困難だ。
なんと、哀れかぐや姫は、こんな離れに閉じ込められていたのか――――そう思い至り、さすがにその虜囚のような身の上が、気の毒になる。
「……オレ、あんな美人――――生まれて初めて見たぜ」
誰かが、そう感歎の声を上げた。
その場にいた全員が、それに頷く。
その美貌たるや……距離はあるし、ガラス越しにしか見えないが、本当に麗しく美しい。
連日のように、あんな美しい少女(?)が、関西の蛇ヤクザに責められているのかと思うと、同情を禁じ得ない。
可哀想だと、心から思う。
助け出せるものなら、助けてやりと、純粋な少年のように思ってしまう。
その時、対岸で様子を窺う男たちの存在に気付いたのか、少女はふと顔を上げ、こっちを見た。
碧瑠璃のようなその美しい瞳と目が合い、男たちは一様に動けなくなる。
少女は、ガラス窓に近寄ると、何事か訴えてきた。
その、桜色の唇を凝視すると、なにを言っているのかは分かった。
『助けてくれ、ここから出してくれ。外は――上野の本家は無事なのか? あの男を、どうにかして大阪へ帰るように、親分を説得してくれ――頼む』
瞼を震わせ、儚い様子でそう言うのが分かった。
叶えられるものなら、その願いを叶えてやりたい――――そう思わずにはいられない程の、嫋やかで哀れな乙女だった。
傾国の美女とは、まるで悪女のような言い回しであったが、いざ実物を目の当たりにすると、その可憐さに目が釘付けになる。
一か月も、こんな場所に閉じ込められているなんて可哀想で仕方がない。
しかも、変態男の玩具にされているなんて酷すぎる。
「――――いや、しかし……オレ達にはどうしようもねぇよ……」
誰かが、諦めたようにそう言った。
しょせんは、この組でも底辺の下っ端だ。
ヤクザというより、チンピラといった方が近い男たちだ。
第一、屋敷のこんな奥まった離れまで、勝手に来たところを兄貴分に見られでもしたら、それだけでかなり具合が悪い。
ヤキを入れられたり、下手したら落とし前に指の一本無くすかもしれない。
今更ながらそれに思い至り、男たちはブルっと震えて正気に戻った。
「は、早く戻ろうぜ」
「ああ、そうだな」
後ろ髪を引かれる思いで、男たちはそろそろと引き返した。
だがその内の一人は、まるで少女に魅せられたように、一時も少女から目を離さずに呆然と立っていた。
「なんて――――綺麗なんだ……」
「元気かどうか、しかと見て来いって命令されているんだ。親分は今、色々と忙しくて、本家を空けられないからな。だから、こうして挨拶がてら、わざわざオレ達が来たんだ。さぁ、さっさと竜真の野郎を呼んで来い」
別嬪。
一か月前。
関西のヤクザ。
美しいかぐや姫。
傾国の美女。
そういえば、誰かが、その美女は物凄い眼で睨んでくると言っていたような――?
――――なんだか、この符号はヤバイ気がする。
碇は上の空で返事をすると、脱兎の如くその場を後にした。
◇
男たちは、目を奪われていた。
件の、かぐや姫である。
屋敷の、さらに奥まった離れにいるらしいとは聞いていた。
しかし、そこに向かうには池に架けられた一本の橋しか道はなく、しかも、離れの戸は外から厳重に鍵が掛けられており、直接部屋に出向いて顔を拝むことはどうも無理のようだ。
なので、男たちは仕方なしに、対岸から必死になって身を乗り出して、その離れの部屋の様子を観察していた。
離れの周りは、小さいながらも池掘りのような作りなので、これ以上近づくのは困難だ。
なんと、哀れかぐや姫は、こんな離れに閉じ込められていたのか――――そう思い至り、さすがにその虜囚のような身の上が、気の毒になる。
「……オレ、あんな美人――――生まれて初めて見たぜ」
誰かが、そう感歎の声を上げた。
その場にいた全員が、それに頷く。
その美貌たるや……距離はあるし、ガラス越しにしか見えないが、本当に麗しく美しい。
連日のように、あんな美しい少女(?)が、関西の蛇ヤクザに責められているのかと思うと、同情を禁じ得ない。
可哀想だと、心から思う。
助け出せるものなら、助けてやりと、純粋な少年のように思ってしまう。
その時、対岸で様子を窺う男たちの存在に気付いたのか、少女はふと顔を上げ、こっちを見た。
碧瑠璃のようなその美しい瞳と目が合い、男たちは一様に動けなくなる。
少女は、ガラス窓に近寄ると、何事か訴えてきた。
その、桜色の唇を凝視すると、なにを言っているのかは分かった。
『助けてくれ、ここから出してくれ。外は――上野の本家は無事なのか? あの男を、どうにかして大阪へ帰るように、親分を説得してくれ――頼む』
瞼を震わせ、儚い様子でそう言うのが分かった。
叶えられるものなら、その願いを叶えてやりたい――――そう思わずにはいられない程の、嫋やかで哀れな乙女だった。
傾国の美女とは、まるで悪女のような言い回しであったが、いざ実物を目の当たりにすると、その可憐さに目が釘付けになる。
一か月も、こんな場所に閉じ込められているなんて可哀想で仕方がない。
しかも、変態男の玩具にされているなんて酷すぎる。
「――――いや、しかし……オレ達にはどうしようもねぇよ……」
誰かが、諦めたようにそう言った。
しょせんは、この組でも底辺の下っ端だ。
ヤクザというより、チンピラといった方が近い男たちだ。
第一、屋敷のこんな奥まった離れまで、勝手に来たところを兄貴分に見られでもしたら、それだけでかなり具合が悪い。
ヤキを入れられたり、下手したら落とし前に指の一本無くすかもしれない。
今更ながらそれに思い至り、男たちはブルっと震えて正気に戻った。
「は、早く戻ろうぜ」
「ああ、そうだな」
後ろ髪を引かれる思いで、男たちはそろそろと引き返した。
だがその内の一人は、まるで少女に魅せられたように、一時も少女から目を離さずに呆然と立っていた。
「なんて――――綺麗なんだ……」
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