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男の唇が、意識せずに動く。
「……オレが、必ず助けてやるよ」
◇
列を成して戻ってきた仲間達と行き会い、碇は声を荒げた。
「おいっ! お前ら、あいつの顔を見たのか!? 」
「あ? あぁ」
『あいつ』が誰を指すのか分かり、頷く。
すると、碇は、身振り手振りでその容姿を訊ねた。
「髪がこう――長めで、ツラはいいが気の強そうな男だったんじゃないのか? 」
聖と、最後に会った時の印象で語る碇に、仲間たちは皆首を振った。
「いいや? そりゃあ儚げで麗しい乙女だったぜ。可哀想なことに、あんな鳥かごみたいな場所に閉じ込められているなんざぁ、同情しちまうよ」
その言葉に、仲間たちはうんうんと頷く。
(儚げな乙女だぁ? じゃあ、別人か――? いや、しかし……)
戸惑う碇であったが、その時、屋敷の中から聞こえてきた足音と声に、皆一斉に慌てた。
「おい! なんで当番が誰もいないんだ!! 留守番も満足にできないのか!? 」
「は、はいっ!! 」
バタバタと、慌ててて皆屋敷へ戻る。
碇も仕方なしにそれに倣い、そして、仁王立ちする兄貴分の前で足を止めた。
「兄貴! 本家からのお客人を、応接間に通してあります」
「なにぃ?何で――」
「表の方は、その……カタギの職人たちが出入りしてるもんで、気を遣って裏から回ってくれたようです」
何とか門番の失態をフォローし、そう伝える。
しかし兄貴分は、困ったように肩をすくめた。
「電話で何度も連絡があったのを、色々と都合をつけて断っていたからな……さてはそれで、痺れを切らして直接来たんだな? しかし、表からだとまた止められるかもしれないから、わざと裏から回ったのか。まったく、本家の連中は――」
「え? こちらの新しい親分さん、本家と仲が悪いんですかい? 」
碇の質問に、兄貴分はフンっと鼻を鳴らした。
「仲が悪いも何も――うちの親分が跡目を襲名なさって、もう天黄組の新たな頭と決まったも同然なんだ。それなのに、未だに上野は昔気質の地回り気分が抜けやしねぇ。せっかく、竜真の親分が勢力を新宿まで拡大しようと、関西系の橋本会と手を結ぶ段取りを付けようと進言しなさっても、渋い顔で反対する始末さ。だからよ、もう竜真の親分は、上野本家を切る気なんだ」
「本当ですかい? でも、それは不義理になるんじゃあ……」
「うるせぇ! もう、そう決まったんだ」
「――じゃあ、今来ている、本家のお客人達はどうするんです? 」
「チッ! 厄介だな……」
関西ヤクザの東堂が、もうじきこの屋敷へやって来る。
執心している玩具が、この屋敷に閉じ込められているからだ。
東堂は、この界隈では顔が広い。
姿を見られれば、一発でその正体を感づかれるだろう。
今まで、天黄正弘の命により、天黄組は橋本会との交流一切を禁じられている。
鉢合わせしては、さすがにマズイ。
「本家のお客人には、うまいこと言って帰ってもらえ。頭は今留守にしているとか何とか、納得するように言うんだ」
兄貴分の命令に、碇は困惑した。
「え? オレがですか? 」
「ああそうだ。オレは、ひとっ走りして頭にこのことを伝えてくる。今日は、頭は東堂さんと新宿界隈の下見をしてから、一緒に屋敷に戻ることになってんだ。今すぐ連絡を取りたいが、生憎と今日使っている車には、電話が付いていない。だから、ここに帰ってくる前に、急いで捜して直接伝えねぇと――……上野の連中に、頭と東堂さん一緒の所を見られちゃあ、さすがにヤバイからな」
「……オレが、必ず助けてやるよ」
◇
列を成して戻ってきた仲間達と行き会い、碇は声を荒げた。
「おいっ! お前ら、あいつの顔を見たのか!? 」
「あ? あぁ」
『あいつ』が誰を指すのか分かり、頷く。
すると、碇は、身振り手振りでその容姿を訊ねた。
「髪がこう――長めで、ツラはいいが気の強そうな男だったんじゃないのか? 」
聖と、最後に会った時の印象で語る碇に、仲間たちは皆首を振った。
「いいや? そりゃあ儚げで麗しい乙女だったぜ。可哀想なことに、あんな鳥かごみたいな場所に閉じ込められているなんざぁ、同情しちまうよ」
その言葉に、仲間たちはうんうんと頷く。
(儚げな乙女だぁ? じゃあ、別人か――? いや、しかし……)
戸惑う碇であったが、その時、屋敷の中から聞こえてきた足音と声に、皆一斉に慌てた。
「おい! なんで当番が誰もいないんだ!! 留守番も満足にできないのか!? 」
「は、はいっ!! 」
バタバタと、慌ててて皆屋敷へ戻る。
碇も仕方なしにそれに倣い、そして、仁王立ちする兄貴分の前で足を止めた。
「兄貴! 本家からのお客人を、応接間に通してあります」
「なにぃ?何で――」
「表の方は、その……カタギの職人たちが出入りしてるもんで、気を遣って裏から回ってくれたようです」
何とか門番の失態をフォローし、そう伝える。
しかし兄貴分は、困ったように肩をすくめた。
「電話で何度も連絡があったのを、色々と都合をつけて断っていたからな……さてはそれで、痺れを切らして直接来たんだな? しかし、表からだとまた止められるかもしれないから、わざと裏から回ったのか。まったく、本家の連中は――」
「え? こちらの新しい親分さん、本家と仲が悪いんですかい? 」
碇の質問に、兄貴分はフンっと鼻を鳴らした。
「仲が悪いも何も――うちの親分が跡目を襲名なさって、もう天黄組の新たな頭と決まったも同然なんだ。それなのに、未だに上野は昔気質の地回り気分が抜けやしねぇ。せっかく、竜真の親分が勢力を新宿まで拡大しようと、関西系の橋本会と手を結ぶ段取りを付けようと進言しなさっても、渋い顔で反対する始末さ。だからよ、もう竜真の親分は、上野本家を切る気なんだ」
「本当ですかい? でも、それは不義理になるんじゃあ……」
「うるせぇ! もう、そう決まったんだ」
「――じゃあ、今来ている、本家のお客人達はどうするんです? 」
「チッ! 厄介だな……」
関西ヤクザの東堂が、もうじきこの屋敷へやって来る。
執心している玩具が、この屋敷に閉じ込められているからだ。
東堂は、この界隈では顔が広い。
姿を見られれば、一発でその正体を感づかれるだろう。
今まで、天黄正弘の命により、天黄組は橋本会との交流一切を禁じられている。
鉢合わせしては、さすがにマズイ。
「本家のお客人には、うまいこと言って帰ってもらえ。頭は今留守にしているとか何とか、納得するように言うんだ」
兄貴分の命令に、碇は困惑した。
「え? オレがですか? 」
「ああそうだ。オレは、ひとっ走りして頭にこのことを伝えてくる。今日は、頭は東堂さんと新宿界隈の下見をしてから、一緒に屋敷に戻ることになってんだ。今すぐ連絡を取りたいが、生憎と今日使っている車には、電話が付いていない。だから、ここに帰ってくる前に、急いで捜して直接伝えねぇと――……上野の連中に、頭と東堂さん一緒の所を見られちゃあ、さすがにヤバイからな」
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