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「シェリル? ……どうかしら。私の友達の中には居ないけど、何処かの夫人の名前かしらね」
「お父様とお母様の知ってるひとで。あのね、ゆうべ目が覚めて、けんかしているの聞いちゃって。その中で、そのひとの名前が出てきて」
「……」
明らかにローズの顔がこわばった。
「そう。きっとお知り合いなのね。でもけんかしていた中で出てきた名前だったら、そうそう聞くものじゃないわ」
「どうして?」
「お二人にとって、嬉しくないひとかもしれないでしょう?」
「そうなの?」
「そうかもしれないわ」
そう言ってローズは目を伏せた。
さてそれから数日。
菓子職人も滞在自体を楽しめた、とばかりに元気に出発した。
その日の午後。
居間で皆でお茶の時間を過ごしていた時だった。
「旦那様奥様大変です!」
ローズの侍女が飛び込んできた。
居ないの? と聞いた時には彼女は頭が痛いから、と言っていたのだけど。
「先ほど私、お嬢様の頼まれごとで出かけたのですが、戻ってみるとこれが……」
侍女は両親の元に、数枚の紙を差し出した。
二人の表情がみるみるうちに変わった。
はらりと落とした一枚をハルバートがすかさず拾った。
「……何だって? 『お母様にはきっと私を見ていて心苦しかったと思います。生まれてきて申し訳ございませんでした』ぁ?」
ぱっとハルバートは両親の方を向いた。
駄目だ、とばかりに父は取り返そうとしたが、間に合わなかった。
手紙の真ん中だったのだろう。
ハルバートは追いかけられながら声に出す。
「『お父様と、お母様の妹のシェリルの間に生まれた私を見ていて、ずっとお辛かったと思います。安心してください。死んだりはしません。けど探さないでください。遠い空の下で私は皆様の幸せを願っています。バート、マギー、ベリー、皆大好きでした』って、姉さん! ローズ姉さんは!」
「黙りなさいハルバート」
ようやく息子を捕まえた父は、手紙を取り上げた。
「どういうことだよ! ローズ姉さんは母様の子供じゃないっていうの?」
「……出ていった…… 家出したっていうの?」
マーゴットも泣きそうな顔で問いかけた。
そして私は。
「シェリルってお母様の妹のひと? 叔母様? 私会ったことない」
「……そうだ、会うことはできない。シェリルはもう亡くなっているからな」
「貴方!」
「あれは可哀想な娘だ。シェリルと私の間に生まれた……」
ぱん! とその時大きな音がした。
母が父の頬をぶったのだ。
「貴方は…… 貴方ってひとは…… 私がずっと堪えていたというのに……」
目を大きく見開き、母は父を睨みつけた。
父は慌ててベルを鳴らした。
メイド達は私達を子供部屋へと殆ど無理矢理連れていった。
だからその後、何が二人の間で話し合われたかは知らない。
ただ、それから少しして、母が離れに移り住む様になった。
父は帰らない日々が増えた。
私達は母の元に毎日の様に行く日々だった。
そして姉の歳になる前に、皆全寮制の学校へと入ることになった。
長期休暇で家に戻ることも次第に減っていった。
家に戻っても両親が揃っている訳でもない、きょうだいも戻ってくるか判らない。
私は戻った時には常に母の離れに居着いていたのだが、次第に母は気鬱になっていった。
そうこうしているうちに、ハルバートは大学を出、マーゴットも社交界に出、縁談も来る様になった。
そして私があの時のローズと同じ歳になった時、手紙が来た。
そのローズからだった。
「お父様とお母様の知ってるひとで。あのね、ゆうべ目が覚めて、けんかしているの聞いちゃって。その中で、そのひとの名前が出てきて」
「……」
明らかにローズの顔がこわばった。
「そう。きっとお知り合いなのね。でもけんかしていた中で出てきた名前だったら、そうそう聞くものじゃないわ」
「どうして?」
「お二人にとって、嬉しくないひとかもしれないでしょう?」
「そうなの?」
「そうかもしれないわ」
そう言ってローズは目を伏せた。
さてそれから数日。
菓子職人も滞在自体を楽しめた、とばかりに元気に出発した。
その日の午後。
居間で皆でお茶の時間を過ごしていた時だった。
「旦那様奥様大変です!」
ローズの侍女が飛び込んできた。
居ないの? と聞いた時には彼女は頭が痛いから、と言っていたのだけど。
「先ほど私、お嬢様の頼まれごとで出かけたのですが、戻ってみるとこれが……」
侍女は両親の元に、数枚の紙を差し出した。
二人の表情がみるみるうちに変わった。
はらりと落とした一枚をハルバートがすかさず拾った。
「……何だって? 『お母様にはきっと私を見ていて心苦しかったと思います。生まれてきて申し訳ございませんでした』ぁ?」
ぱっとハルバートは両親の方を向いた。
駄目だ、とばかりに父は取り返そうとしたが、間に合わなかった。
手紙の真ん中だったのだろう。
ハルバートは追いかけられながら声に出す。
「『お父様と、お母様の妹のシェリルの間に生まれた私を見ていて、ずっとお辛かったと思います。安心してください。死んだりはしません。けど探さないでください。遠い空の下で私は皆様の幸せを願っています。バート、マギー、ベリー、皆大好きでした』って、姉さん! ローズ姉さんは!」
「黙りなさいハルバート」
ようやく息子を捕まえた父は、手紙を取り上げた。
「どういうことだよ! ローズ姉さんは母様の子供じゃないっていうの?」
「……出ていった…… 家出したっていうの?」
マーゴットも泣きそうな顔で問いかけた。
そして私は。
「シェリルってお母様の妹のひと? 叔母様? 私会ったことない」
「……そうだ、会うことはできない。シェリルはもう亡くなっているからな」
「貴方!」
「あれは可哀想な娘だ。シェリルと私の間に生まれた……」
ぱん! とその時大きな音がした。
母が父の頬をぶったのだ。
「貴方は…… 貴方ってひとは…… 私がずっと堪えていたというのに……」
目を大きく見開き、母は父を睨みつけた。
父は慌ててベルを鳴らした。
メイド達は私達を子供部屋へと殆ど無理矢理連れていった。
だからその後、何が二人の間で話し合われたかは知らない。
ただ、それから少しして、母が離れに移り住む様になった。
父は帰らない日々が増えた。
私達は母の元に毎日の様に行く日々だった。
そして姉の歳になる前に、皆全寮制の学校へと入ることになった。
長期休暇で家に戻ることも次第に減っていった。
家に戻っても両親が揃っている訳でもない、きょうだいも戻ってくるか判らない。
私は戻った時には常に母の離れに居着いていたのだが、次第に母は気鬱になっていった。
そうこうしているうちに、ハルバートは大学を出、マーゴットも社交界に出、縁談も来る様になった。
そして私があの時のローズと同じ歳になった時、手紙が来た。
そのローズからだった。
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