助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!

夜刀神さつき

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異世界召喚されました

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 内藤 賢吾は、心臓外科医であった。

 朝から晩までバリバリ働き、休日も勉強に励み、日常生活の質をおろそかにし……なんと32歳で過労死してしまった。風呂場で眠り、そのまま溺れ死んでしまったのである。1人暮らしだった彼は、誰にも助けてもらえず死体になってしまったのだ。
 彼は過労死してしまったのだが、そのことに本人は気がついていなかった。過労死した彼の魂は、異世界に飛ばされ、異世界で新たな肉体を持ち、命が宿ろうとしていた。

「う、うーん」
 柔らかい絨毯のような場所で尻餅をついた賢吾は、あくびをしながら、目を開けた。
 そこに見えたのは、ヨーロッパの古い建物みたいな内装がされた豪華な部屋だった。
(ここは、どこだ?)
 どこかの王宮の広間みたいに広くて、人が多い。
 周囲には、中世ヨーロッパの貴族のような恰好をした人間ばかりいる。彼らは、賢吾の姿をがっかりとしたような眼差しで見ている。

「どうやら、異世界転生は失敗したようだ」

 偉そうな白髭をした白いローブを着たじじいは、残念そうに賢吾の顔を見ながら、そう呟いた。
「異世界転生?」
「ああ。私たちは、あなたを違う世界から、グルンベルグ国に転生させたのだ」
 異世界転生?そんな非科学的な世界が存在したのか?
 しかし、よく考えてみれば、地球の発生だって奇跡の連続だ。異世界だってそんな奇跡と共に、存在していたのかもしれない。
「どうやら、我々は転生させる人間を間違えたらしい。この国を救う聖女を呼び寄せたつもりだったのに、こんな冴えない中年の男が来るなんて」
(冴えない中年で悪かったな)
 賢吾は、ムッとしたが、怒りを堪えて「では、私を元の世界に戻してください」と告げた。
(今日は、大事な日だったんだ。早く仕事に戻らないと。時間は、大丈夫なのだろうか)
「それが……あの……。あなたを元居た世界に戻す方法は、存在しないんだ」
 元居た世界に戻れないだって!?何てひどい。今日は、心臓のバイパス手術をする日だったのに……。これじゃあ、手術をすることができないじゃないか!!!

 その時である。

 金髪の美青年が、「うっ」と悲鳴を上げて苦しそうな顔をした。彼は、癖のある金髪に紫紺の瞳をしている絵本の王子様みたいにかっこいい青年であった。
「彼は?」
「ああ。彼は、呪われているんだ。最近では、右下腹部の痛みを訴えたり、嘔吐したり、発熱したりする」
 右下腹部、嘔吐、発熱……。 
 様々な症状が、賢吾の中でパズルのように組み立てられる。
「そこの君。腹痛は上腹部やへそ周辺から、時間とともに右下の腹部に移っていったりしないか」
「その通りです」
 彼は、苦しそうに皇帝した。
 呪いなんかじゃない。
 彼には、ちゃんとした病名がつく。

 これは、まさしく急性虫垂炎だ!!!

「そんなことより、お前を手違いで召喚させてしまってすまなかった。代わりに、お前の願いを何でも聞こう」
(私の……願い……。わかっている。ここでは、異世界人は、医学書をくださいというような慎ましい性格を求められることを)
 しかし、賢吾は、溢れる欲望を抑えることができなかった。
 
 賢吾は、腹痛を訴えていた金髪の男を指さした。

「その人を解剖させてください」

 それを聞いた貴婦人は、ゴキブリでも見つけたかのように恐怖に満ちた悲鳴をあげた。

「きゃああああああああああああああああああああああああ!!!」
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「第2皇子を解剖だと⁉」
「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいい。何て野蛮な異世界人だ!」
「異世界は、何て恐ろしいところなんだ!」

 地獄絵図のような光景ができあがった。
 王座に座っている皇帝らしき男は、「私の息子を解剖だと⁉」とあんぐりと口を開けていた。
(しまった。彼は、第2皇子だったのか。でも、いい実験体(かんじゃ)になりそうな奴だ)
 賢吾は、そんな風に呑気に考えていたが、周囲は、連続殺人犯を見るような目で賢吾を見ていた。
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