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どうしようもなく愛しています
しおりを挟む貴方が望むから全てを滅ぼしましょう。
貴方が望むから世界を手に入れましょう。
僕の力は強大で、誰も僕を受けいれてくれなかったけど、貴方だけは認めてくれたから…。
貴方が望むなら私は貴方の剣になりましょう。
夜空は赤く染まり星は見えない。
燃え盛る都市は数多の炎の弾に撃ち抜かれ、防ぐ事も逃げる事も出来ずに燃え尽くされた。
巨大なクレーターを作り滅される国を、誰も救う事はできない。
だって、僕が全ての国を滅ぼしたから。
そう、貴方が望んだから。
幾百あった国々は、あっという間に滅んで無くなった。
真紅の絨毯が長く伸びた謁見の間。
十段程上がった先に僕の王は立派な椅子に座って僕を見下ろしていた。
隣には金髪に紺碧の瞳を持った美しい佳人が微笑んで並んでいた。
僕に剣になれと言って外に送り出し、隣に美しい人を並べた僕の王様は、僕が愛した元婚約者。
愛してるよ。
大切にしたい。
そう、言ってくれたのに、帰って来たら僕の居場所は無くなっていた。
僕の力は強大で、恐ろしい悪魔なのだと言う僕の王様。
剣になれと望んだから、貴方の剣になったのに、望んだから世界を貴方にあげたのに。
もうこの世界にはこの国しか無い。
僕がそうなる様、徹底的に潰して来たから。
たった一人でそう出来る力があったから。
僕の王様は華麗な剣を片手に僕の前まで降りて来た。
その瞳は冷酷で、僕に向ける初めての目だった。
大勢の人が見守る中、僕の胸には熱い熱が生まれた。
赤い絨毯に黒い染みが広がり、僕の王様は安堵の息を吐いた。
貴方の今の感情を知りたくて、目を覗き込んだら、切先が伸びて来て目を潰された。
もう私を見るなと………。
愛していたから剣になった。
愛していたから世界を手に掛けた。
ただそれだけだったのに。
僕は世界に呪いを放った。
僕が焼き払った土地に黒い呪いを置いた。
誰も住めない不毛の土地を手中にして、踊り狂って苦しめばいい。
僕は知らない。
だって僕の王が僕を殺すのだから。
後悔してお前らも滅べばいい。
ーー狭い世界で滅んでしまえーー
「と言う事で、今から約一千五百年前に世界は不毛の土地となり………。」
僕は生まれ変わった。
一千五百年も経ってた事にもビックリしたが、人が滅んでいなかった事にも驚いた。
元の世界からしたら現存する土地等たかが知れている。
僕の感覚からしたらこんな狭い土地では直ぐに息絶えると思っていたのに、しぶとく生き抜いていた。
人って凄い。
悪いなぁとは一切思わない。
授業のチャイムがなり、仲のいい友達がお昼ご飯を食べに寄って来た。
「はぁ、歴史苦手。なんでそんな昔のこと覚えなきゃなんないんだろ。」
友達は茶色の髪に青い瞳のロイ。
僕が愛した僕の王様の生まれ変わり。
あの後国は崩壊した、らしい。
昔すぎて史書も無い。
おそらく、と言う推測でしか語られない国になっていた。
人は長い年月を掛けて浄化する魔法を生み出した。
浄化の出来る人々を集めて学校を作り、浄化師と言う役目を作った。
浄化師は貴重な存在。
だから国から保護されるし待遇も良い。
ロイも僕も浄化師になる学校に入学して出会った。
「今、住める土地が少ない事が問題なんだよね~、昔なんて関係ないよね~。」
「ホントだよ…歴史の授業潰れろっ!」
毒づくロイに僕は笑った。
君が僕を斬ったせいだけどね?
生まれ変わった君はだいぶ変わってしまった。
相変わらず顔はいいのに、僕を見つめる眼差しは穏やかで優しい。
あの僕の胸に剣を刺した時の君の安堵した表情が忘れられない。
あれに近いものが今ある様で、今の君を見ていると胸が締め付けられてしまうんだ。
「俺はただ浄化師になって浄化したら、その土地は貰えるって言うからこの学校に来ただけなんだよ。俺は自分の土地が欲しいの!」
「なに?領主様にでもなりたいの?」
なりたいならコッソリ手伝ってあげるけど?
昔は昔、今は今だよね。
「俺の夢は自分の土地を持って、好きな人と結婚して子供を作って畑を耕して暮らす事なんだ。」
やたらと真面目な顔してロイは言う。
「?うん……なる程?」
「一人の浄化師が一生に浄化できる範囲なんてたかが知れてるんだ。」
僕は多分一気に全部浄化出来そうだけどね?なんてったって自分で蒔いた呪いだし。
「領主なりたいとか、一国の主人なりたいとか、そんな大きな事を言ってるんじゃないんだ。小さくて慎ましい家庭が欲しいんだ。」
「うんうん、なるほど?」
凄く真剣に言ってくるな。
「分かるか?やり過ぎたらいけない。」
分かったな?と念を押された。
そーだな。
突然世界中の呪いが消えたら、誰がやったってなるし、僕がやったってなったら、どーなるんだろう?
静かに暮らしたいならやらない方が良いんだろうな。
納得した僕を見て、ロイは安堵の息を吐いた。
その表情があの日最後に僕を貫いた時の様で、僕は懐かしくて見惚れてしまった。
僕は裏切られて殺されても、僕の王が大好きなんだなと、泣きたくなった。
「なんで泣いてるんだよ?言っとくけど、一緒に住むのお前なんだぞっ。」
僕はびっくりして涙が一つ溢れてしまった。
愛する魔法師を貫いて、見ていられなくて彼の目を潰した。
私もすぐに逝くから………。
君に無茶なお願いをして、君の能力を見誤ったのは私だ。
まだ若い王の私では、周りを押さえ込む事が出来なかった力量不足な私が悪い。
同じ剣で自分の首を掻き切った。
君が世界を呪ったのは分かったけど、それでいいと思った。
こんなに広いから欲しがる奴が出てくるのだ。
こんな世界等いらない。
愛してるから。
君だけだから。
私も一緒に逝くから……。
どしゃりと落ちた身体の先に君の手があった。
力の出ない腕を這う様に持ち上げて、君の手を握り込む。
…………………ぁあ……
………漸く、………きみ、の…
……手、を、に………ぎ…
「えと、じゃあ子供は三人欲しいな……。」
僕は昔からの願い事を僕の王様に初めてお願いした。
ロイは弾ける様に笑う。
ロイの手は暖かい。
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良かったです✨良い夢見て寝ます(笑)
素敵な作品ありがとうございました✨
感想有難う御座います。
思いつきで書いた短い話ですね。
新作はまだ少しかかりますが、興味惹かれる話を書けたらなと思っています。
いい夢見れるといいですね。
両思いだったー
良かったよー( ´•̥̥̥ω•̥̥̥`)
素敵な作品😍ありがとうございます
感想有難う御座います。
はい、前世も今世も両思いです。
短い話ですが感想有難う御座います。