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第二章
皇子
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「リルという者はいるか!」
米が手に入り、優雅にスローライフを初めて半月。今日も陽が高くなるまで寝ていようと惰眠を貪っていたら、そんな叫び声が響いた。リルは目を一瞬開けたものの、ちらりとドアを見ただけでまた目を閉じる。
すると今度は強くドアを叩く音がした。
「もう、なに、この山に何の用事があって」
そこまで思ったところで、外にいる人間が自分の名前を知っていることに気が付いた。
「ミリィの知り合い? いや、そしたらこんな横柄な態度じゃないか」
いきなり訪ねてきた割に威張っているような声を上げていることを不思議に思う。リルはふと思い立った。
「まさか、師匠が誰かをよこした……?」
慌てて起き上がり、身支度もそこそこに窓から逃げようとしたら、ドアが勢いよく開かれた。
「はっはっは、君がリルかね」
腰に手を当てて仁王立ちした男が、逃げる体勢のままのリルに尋ねた。
「まずはじめにお邪魔しますって言ってほしかったです」
リルはげんなりした顔で答えた。
「それは失礼した。お邪魔します」
「お邪魔されます……」
どう言ったところで帰ってはくれなさそうだ。寝ぐせの付いた頭をかきながら、チョコとともに男に近づいた。
「それで、どちらさまですか」
男の身なりは立派なものだった。貴族か何かなのだろう。面倒なことになった。男が声を張り上げて答えた。
「私はオトラ国第二皇子、ルッツ・オトラだ!」
「うわぁお」
想像以上だった。貴族どころか王族だった。ひょいと皇子の後ろを覗くと、家の外には数人の兵士が立っていた。ルッツの言うことが本当だということを表している。
「私はリルです。それで、皇子が何の用事でこのような山奥までいらしたのですか?」
「それは君に会うためだ」
──だろうね。私の名前言っていたんだから。
もう嫌な予感しかしない。これで良い話だったら夜通しでラジオ体操を踊ったっていい。
「君を王宮魔法士に推薦したいのだ」
「お断りしまぁす」
「何故だ!」
食い気味に断ると、ルッツが絶望の表情で叫んだ。リルはあまりのうるささに両耳を塞いだ。
「ということでお引き取りください」
「わざわざ参ったというのに?」
「わざわざ有難う御座いましたさようなら」
「何故だ!」
「うるっさ」
こちらが全く興味を示していないのに、ルッツは帰ろうとしなかった。チョコも苛々したのか、小さく唸り声を上げている。
「おお、これが噂の魔法士付きウォルフ。素晴らしい」
「いや、だから帰ってくださいって」
外で待つ兵士たちに視線を送ってみたものの、皆諦めの表情で首を振った。リルの肩はどっと重くなった。
「ちなみに、私のことをどうしてご存知なんですか?」
「ああ、王都に帰る途中でリルという名の凄腕の魔法士がいると聞いてな」
「ああ……」
やはり、人と関わらなければよかった。すでにしてしまったことだが悔やまれる。
「あと、元王宮魔法士からの推薦状の名前と一致したから」
「元王宮……」
──サイだ。
「とにかく、王宮魔法士にはなりませんので」
「あ、おい」
ルッツをぐいぐい押して無理矢理ドアを閉める。しばらく何やら喚いていたが、また来るという言葉とともに静かになった。リルがチョコのもふもふに抱き着いて呟く。
「もう来ないでほしい」
米が手に入り、優雅にスローライフを初めて半月。今日も陽が高くなるまで寝ていようと惰眠を貪っていたら、そんな叫び声が響いた。リルは目を一瞬開けたものの、ちらりとドアを見ただけでまた目を閉じる。
すると今度は強くドアを叩く音がした。
「もう、なに、この山に何の用事があって」
そこまで思ったところで、外にいる人間が自分の名前を知っていることに気が付いた。
「ミリィの知り合い? いや、そしたらこんな横柄な態度じゃないか」
いきなり訪ねてきた割に威張っているような声を上げていることを不思議に思う。リルはふと思い立った。
「まさか、師匠が誰かをよこした……?」
慌てて起き上がり、身支度もそこそこに窓から逃げようとしたら、ドアが勢いよく開かれた。
「はっはっは、君がリルかね」
腰に手を当てて仁王立ちした男が、逃げる体勢のままのリルに尋ねた。
「まずはじめにお邪魔しますって言ってほしかったです」
リルはげんなりした顔で答えた。
「それは失礼した。お邪魔します」
「お邪魔されます……」
どう言ったところで帰ってはくれなさそうだ。寝ぐせの付いた頭をかきながら、チョコとともに男に近づいた。
「それで、どちらさまですか」
男の身なりは立派なものだった。貴族か何かなのだろう。面倒なことになった。男が声を張り上げて答えた。
「私はオトラ国第二皇子、ルッツ・オトラだ!」
「うわぁお」
想像以上だった。貴族どころか王族だった。ひょいと皇子の後ろを覗くと、家の外には数人の兵士が立っていた。ルッツの言うことが本当だということを表している。
「私はリルです。それで、皇子が何の用事でこのような山奥までいらしたのですか?」
「それは君に会うためだ」
──だろうね。私の名前言っていたんだから。
もう嫌な予感しかしない。これで良い話だったら夜通しでラジオ体操を踊ったっていい。
「君を王宮魔法士に推薦したいのだ」
「お断りしまぁす」
「何故だ!」
食い気味に断ると、ルッツが絶望の表情で叫んだ。リルはあまりのうるささに両耳を塞いだ。
「ということでお引き取りください」
「わざわざ参ったというのに?」
「わざわざ有難う御座いましたさようなら」
「何故だ!」
「うるっさ」
こちらが全く興味を示していないのに、ルッツは帰ろうとしなかった。チョコも苛々したのか、小さく唸り声を上げている。
「おお、これが噂の魔法士付きウォルフ。素晴らしい」
「いや、だから帰ってくださいって」
外で待つ兵士たちに視線を送ってみたものの、皆諦めの表情で首を振った。リルの肩はどっと重くなった。
「ちなみに、私のことをどうしてご存知なんですか?」
「ああ、王都に帰る途中でリルという名の凄腕の魔法士がいると聞いてな」
「ああ……」
やはり、人と関わらなければよかった。すでにしてしまったことだが悔やまれる。
「あと、元王宮魔法士からの推薦状の名前と一致したから」
「元王宮……」
──サイだ。
「とにかく、王宮魔法士にはなりませんので」
「あ、おい」
ルッツをぐいぐい押して無理矢理ドアを閉める。しばらく何やら喚いていたが、また来るという言葉とともに静かになった。リルがチョコのもふもふに抱き着いて呟く。
「もう来ないでほしい」
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