貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

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第二章

再訪

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 その日はブランチで白米をたっぷり食べ、畑の手入れに精を出した。炎魔法で温度を調節し、水魔法で適度な水まきをしたおかげで新鮮な野菜が毎日採れている。肉は相変わらず足りないが、魚はあるので食べ物には困らない。

「衣食住あるっていうのは幸せだなぁ。魔法を教えてくれたことに感謝しなきゃ」

 サイは魔法士として働いてほしいらしいが、その魔法のおかげで引きこもりニートでも充実した毎日を送ることができている。前世の生活との違いにも慣れた。これがずっと続けばいいと思う。

「よし、スライム家族を観察しに行こ」

 昼寝を一時間した後、山で手に入れた石をなんとなくポケットに入れ、リルとチョコはスライムの森へと散歩に出た。森に入ってからはいつスライムに出会ってもいいように、こっそりと忍び足で進んだ。

 洞穴の近くまで行くと、スライムが一匹日向ぼっこをしていた。先日のスライムと同じかは分からない。

 風に吹かれて柔らかなフォルムがふよふよ揺れている。実に癒される。風鈴の音と同等かそれ以上の癒しだ。

 スライムをしばらく眺めて、森を散策して家に戻った。まだ陽は高い。

 森ではいくつかの花を見つけた。沢山の中から一本もらって家の前に植えてみた。根っこごと抜いてきたので、そのまま咲いていてくれるだろう。

「綺麗だ。なんていう名前の花か分からないけど」

 花びらを尖らせたパンジーのような見た目をしている。この世界は現世に似た食べ物も植物もあるけれど、ちょっとずつ違うことが多い。食べられるようになった白米も、はたしてここにあるのか分からない。

「さて、川で魚を獲ろう」

 夕食の魚を一匹釣る。生態系が壊れないよう、毎回一人分だけにしておく。冷凍保存しておくことは可能だが、一気に釣って魚がいなくなったらいずれ魚が食べられなくなってしまうからだ。

 それ以上に、魚がいなくなったら食物連鎖が崩れて何が起きるか分からない。山に住まわせてもらっている以上、迷惑をかけることはしたくない。

「今日は嫌なことがあった。でも断ったし、大丈夫でしょ」


 翌朝も皇子の叫びで目が覚めた。全然大丈夫ではなかった。

「は? 言葉を理解していないの?」

 きっぱり断ったはずなのに昨日と同じ状況。いくら皇子相手といえどもさすがに苛々してしまう。

「リル! ルッツ・オトラだが来たぞ」
「大声出さなくても聞こえてます」
「おはよう。起きるの遅いな」
「私には遅くないです」

 もう一生会わないと思っていた相手とたった一日で再会してげんなりする。

「帰ってください」
「いいや、帰らん」
「帰れや」

 こちらを言葉を聞かず、ルッツは笑顔で室内に入ってきた。

「お邪魔します」
「おい」
「気を遣わせては悪いと思って、部下は一人だけにした」

 ルッツの後ろには武装した兵士が一名立っていた。彼もまた室内にいる。

「申し訳ございません。ルッツ様がご迷惑をおかけしまして」
「はあ」

 申し訳なく思っているのか分からない真顔で兵士が謝る。

──まず、不法侵入しているのを謝ってほしいな。いや、私も勝手に家を建てているから言えた義理じゃないか。

 これは再度断ったところで明日も来ることが目に見える。ひとまず皇子の話を聞くことにした。二脚しかない椅子をルッツと兵士に勧めると、ルッツのみ座り、兵士は断りドアの近くに立った。空いた椅子にリルが座る。
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