貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

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第四章

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 二人を見送り、部屋に入る。報酬袋は棚の引き出しに入れた。特に使う予定もないので、とりあえず仕舞っておく。

「まあ、なるようにしかならないか。偶然を恐れていたら、何もできないもんね。偶然の積み重ねが人生だ。明日からものんびり暮らしていこ」

 不安が無くなったわけではないが、リルももう一人では生きられない子どもではない。現在、一人で自給自足ができている。もしもこの山に自然災害などが起きて野菜や果物が食べられなくなったとしても、また穴を使って種や苗から畑を作り直せばいい。

「そういえば、穴ってこっちがもらうばかりだったけど、向こうに送ることもできるんだよね」

 最近使っていない穴について考え出したら気になってきた。それなら実行してみればいい。

 穴を出現させて覗いてみる。元自宅近くに設置されているので、見慣れた風景が広がった。チョコも慣れた様子で穴から一歩離れて眺める。

「良い景色だね。紅葉だ」

 この世界は日本より四季の移り変わりがはっきりしないため、この穴から広がる絵画はいつも新鮮で胸を打つ。

「葉っぱ、一枚頂きます」

 赤く染まった紅葉の葉を一枚引き抜く。

「栞にしよう」

 大事に本の隙間に挟む。それからリルは部屋を見渡して悩んだ。

「人工物はダメだから、どうしよう」

 送ることにしたはいいものの、何にするか決めていなかった。庭に出て草や木を見て回る。

「あ、これにしよう」

 山に来た頃庭に植えた花だ。相変わらず名前は分からない。パンジーに似ている何か。これならあちらの世界でも目立たないだろう。

花を一輪複製して穴に投げ入れる。花は穴からあちらの世界に行き、ぽとりと地面に落ちた。元実家のすぐそばなので、元父親が見つけてくれたらいい。

「雨が降らなければ毎日散歩しているって言ってたから、どうかな」

 穴を開いたまま本を読みつつ床でゴロゴロしていたら、奥から一人の男性が歩いてきた。穴を草むらに隠して覗く。予想通り元父親だった。

「お父さんだ」

 記憶よりゆっくり歩く彼は落ちている花に気が付き、しばらく見つめた後拾い上げた。それを右手に持ち、もと来た道を戻っていく。おそらく、花を家に持ち帰るのだろう。

「ありがとう、見つけてくれて。それが、私が今生きている証拠だよ」

 聞こえなくても、姿が見えなくてもいい。ただ、娘は元気にしているのだと、形にして彼に教えたかった。きっとどのような花で、何故落ちていたのかは分からない。それでもリルは満足だった。

「あー、よかった。お父さんも栞とかドライフラワーとかにして取っておいてくれるといいなぁ。さすがにドライフラワーの作り方は知らないか」

 穴を閉じて、昨日から持っていっていた魔法袋の中身を整理する。リルが綿に似た植物を取り出した。

「これ、調べてみよう」
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