貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

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第四章

迷い

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 今まで見てきた植物とは違い、本当に綿が生えているように見える。

「綿花ってことでいいのかな。日本と同じ植物があったっておかしくはないし」

 これまでも、全く同じとはいかないが、見覚えのある草花を見かけたことがある。これもその一つなのだろう。

「とりあえず複製して、使えそうだったら布団とかクッションの材料にしよ」

 作業に集中するため、山の周りにリルの瞳と魔力感知器をいくつか飛ばしておく。これで彼らを気にせず進められる。

 前世でも綿花を間近で見たことがなかったのでいまいち合っているのか分からないが、綿花の代替品として使えるのなら問題無い。リルは黙々と作業を続けた。

「おー……作りすぎちゃった」

 十分後、目の前には大量の綿が広がっていた。集中し過ぎて止め時を間違えた。リルは一人暮らしだ。こんなにはいらない。とりあえず魔法袋に収納しようとしたところで、良い案を思いついた。

 大きな布を用意し、それを半分に折る。一か所を除いて端を縫い、ひっくり返す。その中へ綿をこれでもかと詰めていった。

「うーん、これだと柔らかすぎだから」

 綿を強化し、少し硬くさせる。最後に詰めていた場所を縫い、大きな敷布団を完成させた。部屋の半分が埋まる程の大きさだ。

「チョコ、おいでおいで」

 チョコと一緒に布団に寝転がる。今までチョコは地面で寝ていたので、柔らかい感触に驚いているようだった。

「これなら一緒にお昼寝できるよ。どう?」
「ガウガウ!」

 寝心地に満足してくれたようなので、布団を庭に引っ張り出して昼寝をした。北に比べてまだこの辺りは暖かく、気温を調節せずとも昼寝に適している。

 ピコン。

 寝落ちするという時、魔力感知器が作動した。リルが勢いよく起きる。

「山、じゃない。山よりちょっと離れたところに設置したやつだ。王都の入り口の近く」

 魔力感知器のカメラ機能を起動させる。あちこち探し回ると、魔法士を連れた三番隊が帰還するところだった。カラットはいるが、ザラはいない。王都に戻らず帰宅したのかもしれない。

「三番隊にいる魔法士が何か魔力を使って反応したんだ。お父様がいないのは幸い。一緒にいないということは、私のこと報告していないのかも」

 もし報告しているならば、関心があるなしにかかわらず何か行動を起こす可能性が高い。リルがいることでノーバー家に影響を及ぼすと考えられてもおかしくないからだ。

 それをしない、もしくはまだ対策を練っている最中かもしれないが、とにかく緊急性が低いと思われているならリルにとって好都合である。

「どうしようかな」

 今迷っているのは、カラットに自分のことを説明するか否かだ。彼に存在が知られ、近くに住んでいるのだから、いつかまた出会ってしまうだろう。それならばこれ以上悩まないよう、現状を伝え、ノーバー家に戻って迷惑をかけることはしないと伝えた方がいい。
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