3 / 15
救出編
あの子に再会した結婚初日
しおりを挟む
「はぁ……酷い一日だった……」
結婚式を終え、寝室にたどり着いた私はため息をつく。もちろん、使用人の人たちは下がってもらった後だ。まぁ、後数分もしないうちにまたやってくるのはわかってるんだけど。
『ねぇ、お姉様……』
結婚式の後、わざわざ二人きりになってまでメアリーが話しかけてきた。その時の言葉が今でも頭にこびりついている。
『お姉様って、とーってもしぶといですよね!』
もうこれで会うこともなくなるだろうし、と妹は赤裸々に事情を暴露し始めたのだ。曰く、お父様とお母様に注目してもらいたかった。私やウィルが目障りだった。みんなに心配してもらいたかった。
『その願いはもう叶っているでしょう? お母様にもお父様にも唯一愛され、あなたを守ってくれる殿方は大勢いるじゃない』
もし、ちやほやされたいだけなら、私やウィルにあそこまで攻撃を加えるように扇動する必要はなかったはず。そう聞くと、彼女は天使のような微笑みでとんでもないことを言い放った。
『私、お姉様がだーいきらいなの。死んでほしいくらい』
どんなに嫌味を言っても、平然としてるお姉様が嫌いだ、どんなにみんなを頼ってもずぶとくて全く死なないお姉様が嫌いだ。私より優秀と家庭教師に褒められていたのも、全部嫌いだと。
嫌われているのはわかっていたけれど、そんな曖昧で子供じみた理由で、ここまで明確に殺意を向けられていたなんて。
『だから、アレックス様に頼んだの』
最後に、メアリーは少し声を潜めて言った。
『お姉様。いつまで生きられるか分かりませんけれど……お幸せに』
そんなわけで、私は今酷い頭痛と倦怠感に悩まされている。よく分からないけれど、妹はだいぶ頭がおかしいし、私はいつまで生きられるか分からない身らしい。
メアリーがアレックス様に頼んだのは、おそらく私の殺害。わざわざ言いにくるなんて、全く性格が悪い。『妹のせいで、アレックス様に殺されるんです!』なーんて誰にも言えないし、言ったところでまともに扱われないであろうことよく理解している。
「……はぁ」
本日何度目かのため息をついた時だった。
コンコン
窓を叩く音がする。何かがぶつかったのだろうか。こんな夜中に? 不審に思いつつも窓に歩み寄って、そっとカーテンを持ち上げる。
そこには、ふわふわの金髪と、アクアマリンのような瞳を持った少年が立っていた。
「だ、だれ……?!」
メアリーの信者にはこんな子いなかったと思うけど……。若干距離を取りつつ尋ねる私に、その少年はにっこり笑ってこう言った。
「僕だよ、姉様」
その笑顔が、記憶の中の唯一幸せだった思い出達と重なる。
「ウィル……?」
どうして。五年前、勝手に私が逃がしたつもりだったあの子が、ここに……?
結婚式を終え、寝室にたどり着いた私はため息をつく。もちろん、使用人の人たちは下がってもらった後だ。まぁ、後数分もしないうちにまたやってくるのはわかってるんだけど。
『ねぇ、お姉様……』
結婚式の後、わざわざ二人きりになってまでメアリーが話しかけてきた。その時の言葉が今でも頭にこびりついている。
『お姉様って、とーってもしぶといですよね!』
もうこれで会うこともなくなるだろうし、と妹は赤裸々に事情を暴露し始めたのだ。曰く、お父様とお母様に注目してもらいたかった。私やウィルが目障りだった。みんなに心配してもらいたかった。
『その願いはもう叶っているでしょう? お母様にもお父様にも唯一愛され、あなたを守ってくれる殿方は大勢いるじゃない』
もし、ちやほやされたいだけなら、私やウィルにあそこまで攻撃を加えるように扇動する必要はなかったはず。そう聞くと、彼女は天使のような微笑みでとんでもないことを言い放った。
『私、お姉様がだーいきらいなの。死んでほしいくらい』
どんなに嫌味を言っても、平然としてるお姉様が嫌いだ、どんなにみんなを頼ってもずぶとくて全く死なないお姉様が嫌いだ。私より優秀と家庭教師に褒められていたのも、全部嫌いだと。
嫌われているのはわかっていたけれど、そんな曖昧で子供じみた理由で、ここまで明確に殺意を向けられていたなんて。
『だから、アレックス様に頼んだの』
最後に、メアリーは少し声を潜めて言った。
『お姉様。いつまで生きられるか分かりませんけれど……お幸せに』
そんなわけで、私は今酷い頭痛と倦怠感に悩まされている。よく分からないけれど、妹はだいぶ頭がおかしいし、私はいつまで生きられるか分からない身らしい。
メアリーがアレックス様に頼んだのは、おそらく私の殺害。わざわざ言いにくるなんて、全く性格が悪い。『妹のせいで、アレックス様に殺されるんです!』なーんて誰にも言えないし、言ったところでまともに扱われないであろうことよく理解している。
「……はぁ」
本日何度目かのため息をついた時だった。
コンコン
窓を叩く音がする。何かがぶつかったのだろうか。こんな夜中に? 不審に思いつつも窓に歩み寄って、そっとカーテンを持ち上げる。
そこには、ふわふわの金髪と、アクアマリンのような瞳を持った少年が立っていた。
「だ、だれ……?!」
メアリーの信者にはこんな子いなかったと思うけど……。若干距離を取りつつ尋ねる私に、その少年はにっこり笑ってこう言った。
「僕だよ、姉様」
その笑顔が、記憶の中の唯一幸せだった思い出達と重なる。
「ウィル……?」
どうして。五年前、勝手に私が逃がしたつもりだったあの子が、ここに……?
12
あなたにおすすめの小説
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
王宮メイドは今日も夫を「観察」する
kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」
王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。
ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。
だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……?
※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!
月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、
花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。
姻族全員大騒ぎとなった
『婚約破棄ありがとうございます。自由を求めて隣国へ行ったら、有能すぎて溺愛されました』
鷹 綾
恋愛
内容紹介
王太子に「可愛げがない」という理不尽な理由で婚約破棄された公爵令嬢エヴァントラ。
涙を流して見せた彼女だったが──
内心では「これで自由よ!」と小さくガッツポーズ。
実は王国の政務の大半を支えていたのは彼女だった。
エヴァントラが去った途端、王宮は大混乱に陥り、元婚約者とその恋人は国中から総スカンに。
そんな彼女を拾ったのは、隣国の宰相補佐アイオン。
彼はエヴァントラの安全と立場を守るため、
**「恋愛感情を持たない白い結婚」**を提案する。
「干渉しない? 恋愛不要? 最高ですわ」
利害一致の契約婚が始まった……はずが、
有能すぎるエヴァントラは隣国で一気に評価され、
気づけば彼女を庇い、支え、惹かれていく男がひとり。
――白い結婚、どこへ?
「君が笑ってくれるなら、それでいい」
不器用な宰相補佐の溺愛が、静かに始まっていた。
一方、王国では元婚約者が転落し、真実が暴かれていく――。
婚約破棄ざまぁから始まる、
天才令嬢の自由と恋と大逆転のラブストーリー!
---
奪う人たちは放っておいて私はお菓子を焼きます
タマ マコト
ファンタジー
伯爵家の次女クラリス・フォン・ブランディエは、姉ヴィオレッタと常に比較され、「控えめでいなさい」と言われ続けて育った。やがて姉の縁談を機に、母ベアトリスの価値観の中では自分が永遠に“引き立て役”でしかないと悟ったクラリスは、父が遺した領都の家を頼りに自ら家を出る。
領都の端でひとり焼き菓子を焼き始めた彼女は、午後の光が差す小さな店『午後の窓』を開く。そこへ、紅茶の香りに異様に敏感な謎の青年が現れる。名も素性も明かさぬまま、ただ菓子の味を静かに言い当てる彼との出会いが、クラリスの新しい人生をゆっくりと動かし始める。
奪い合う世界から離れ、比較されない場所で生きると決めた少女の、静かな再出発の物語。
うっかり結婚を承諾したら……。
翠月 瑠々奈
恋愛
「結婚しようよ」
なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。
相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。
白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。
実際は思った感じではなくて──?
婚約破棄されて自由になったので、辺境で薬師になったら最強騎士に溺愛されました
有賀冬馬
恋愛
「愛想がないから妹と結婚する」と言われ、理不尽に婚約破棄されたクラリス。
貴族のしがらみも愛想笑いもこりごりです!
失意どころか自由を手にした彼女は、辺境の地で薬師として新たな人生を始めます。
辺境で薬師として働く中で出会ったのは、強くて優しい無骨な騎士・オリヴァー。誠実で不器用な彼にどんどん惹かれていき……
「お前が笑ってくれるなら、それだけでいい」
不器用なふたりの、やさしくて甘い恋が始まります。
彼とのあたたかい結婚生活が始まった頃、没落した元婚約者と妹が涙目で擦り寄ってきて――
「お断りします。今さら、遅いわよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる