[完結]妹の信者達に殺されかけてましたが、逃がしたつもりだった義弟がやたらかっこよくなって帰ってきました。

雨宮ユウリ

文字の大きさ
8 / 15
救出編

全てが終わり、新しく始まる朝

しおりを挟む
「ん……?」

 窓から差し込む朝日が眩しくて目を開く。ここは……? なんだか、体が軽い。アザや傷が全部消えていた。昨日のことを思い出そうとして……。

「姉様! 起きたの? 体は大丈夫?」

「ウィル……」

 そうだった。私はアレックス様と結婚して、初夜を迎えようとしていた。でも、ウィルが来てくれて、私を……守ってくれた。もしかして、今傷がないのもウィルのおかげなんだろうか。昔、ウィルを連れてきたお父様が魔力がどうとか言っていた気がする。

「大丈夫、だけど……あの後どうなったの?」

 アレックス様がこちらを睨んできた時のこと、今思い出しても寒気がする。今までもそうだった。睨まれて、怒鳴られて、嫌味を言われて、階段から突き落とされて。顔を見るたび震えが止まらなかった。けれど、あの時は特に……。

 私が眠っちゃった後、あんなに恐ろしいアレックス様から、ウィルはどうやって逃げてこれたんだろう。

「姉様、落ち着いて。あいつは絶対ここに来ないから」

 あの時を思い出して震えていたのに気づいたのか、ウィルは私の手を握ってくれて、慰めてくれた。あぁ、本当に五年前と正反対だ。それにやっぱり、ウィルは怖くない。

「ありがとう、ウィル」

 私が落ち着くのを待って、ウィルは少しずつ話してくれた。留学していた先で少しずつ魔法を学んでいたこと。学んだ魔法を使って転移してきたこと。この隠れ家にも隠蔽魔法をかけていることと、体の怪我も魔法で治したことも。それで……。

「勝手なことしてごめん、姉様。まだ姉様の返事を聞いてなかったのに……」

 目を伏せるウィル。あの時、私が返事をする前にアレックス様が来たから、優しいこの子は勝手に私を連れてきてしまったと思っているのだろう。

「いいの、いいのよウィル……。ありがとう、守ってくれて」

 五年前に泣かせてしまったこの子。私を死なせたくないと言ってくれたこの子。そんな優しい子を責めるわけがない。

 まるで五年前に戻ったように、目を伏せているウィルをぎゅっと抱きしめる。私がベッドに腰掛けて、ウィルは床に座っているからなんだか不格好だけど。昔も、こうして二人でくっついていた時が一番安心したっけ。

「むしろごめんね。貴方のこと守るなんて言って、ちっとも貴方のこと考えてなかった。返事なんて決まってるわ、私が一番大事なのはウィルだもの。だからお願い、これからもずっと一緒にいて……!」

 あれ、自分から抱きついたくせになんだか気恥ずかしくて、まともに顔を見れない。顔が熱くなっているのが分かる。声が上擦らないように早口で言い切ったけど、不審に思われてないだろうか。

「あ、あの。姉様。近、いんだけど……」

 おずおずと言い出すウィル。やっぱり?! もう十四だものね。五年間離れていたから、ついつい昔の感覚が抜けないけど……。

「あ、ご、ごめんね!」

 パッと手を離す。は、恥ずかしい……。というか、やっぱりなんかドキドキしてる。血が繋がらなくても、大切な弟だと思って接してきたのに。

「ねぇ、ソフィー、姉様。好き」

 その言葉に、つい勘違いしそうになる。だめ、ウィルはきっと姉として私が好きなだけ。私は……その、いやこれも色々あって疲れてるからで、ウィルは大切な弟で。

「私も好きよ、ウィル」

 とりあえず、平静を装って答えておいた。好きって言い合うなんて、五年前までは毎日のようにしてたことだ。大丈夫、変に思われないはず。

 ってやっぱりだめだ、なんか顔が赤くなってそう!

「あ、ねぇ私ちょっと顔を洗ってくるわね!」

 なんだかとっても不自然な感じになったけど、今の最優先はウィルから離れることである。信じたくないけど、どうやら私はウィルがその、好きらしい。ドキドキして、まともに顔を見れないくらい。

(どうしよう、弟として大切にしてきたのに……)

 それに、きっとウィルは私を姉としか思ってないのに。

 足早に部屋から駆け出した私の耳には、ウィルの呟きは当然聞こえてなかった。

「僕の『好き』は……きっと、姉様が僕に抱いている思いと違う。僕は、姉様が好き。姉様としても、それ以外でも……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

王宮メイドは今日も夫を「観察」する

kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」 王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。 ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。 だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……? ※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!

月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、 花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。 姻族全員大騒ぎとなった

『婚約破棄ありがとうございます。自由を求めて隣国へ行ったら、有能すぎて溺愛されました』

鷹 綾
恋愛
内容紹介 王太子に「可愛げがない」という理不尽な理由で婚約破棄された公爵令嬢エヴァントラ。 涙を流して見せた彼女だったが── 内心では「これで自由よ!」と小さくガッツポーズ。 実は王国の政務の大半を支えていたのは彼女だった。 エヴァントラが去った途端、王宮は大混乱に陥り、元婚約者とその恋人は国中から総スカンに。 そんな彼女を拾ったのは、隣国の宰相補佐アイオン。 彼はエヴァントラの安全と立場を守るため、 **「恋愛感情を持たない白い結婚」**を提案する。 「干渉しない? 恋愛不要? 最高ですわ」 利害一致の契約婚が始まった……はずが、 有能すぎるエヴァントラは隣国で一気に評価され、 気づけば彼女を庇い、支え、惹かれていく男がひとり。 ――白い結婚、どこへ? 「君が笑ってくれるなら、それでいい」 不器用な宰相補佐の溺愛が、静かに始まっていた。 一方、王国では元婚約者が転落し、真実が暴かれていく――。 婚約破棄ざまぁから始まる、 天才令嬢の自由と恋と大逆転のラブストーリー! ---

奪う人たちは放っておいて私はお菓子を焼きます

タマ マコト
ファンタジー
伯爵家の次女クラリス・フォン・ブランディエは、姉ヴィオレッタと常に比較され、「控えめでいなさい」と言われ続けて育った。やがて姉の縁談を機に、母ベアトリスの価値観の中では自分が永遠に“引き立て役”でしかないと悟ったクラリスは、父が遺した領都の家を頼りに自ら家を出る。 領都の端でひとり焼き菓子を焼き始めた彼女は、午後の光が差す小さな店『午後の窓』を開く。そこへ、紅茶の香りに異様に敏感な謎の青年が現れる。名も素性も明かさぬまま、ただ菓子の味を静かに言い当てる彼との出会いが、クラリスの新しい人生をゆっくりと動かし始める。 奪い合う世界から離れ、比較されない場所で生きると決めた少女の、静かな再出発の物語。

うっかり結婚を承諾したら……。

翠月 瑠々奈
恋愛
「結婚しようよ」 なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。 相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。 白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。 実際は思った感じではなくて──?

婚約破棄されて自由になったので、辺境で薬師になったら最強騎士に溺愛されました

有賀冬馬
恋愛
「愛想がないから妹と結婚する」と言われ、理不尽に婚約破棄されたクラリス。 貴族のしがらみも愛想笑いもこりごりです! 失意どころか自由を手にした彼女は、辺境の地で薬師として新たな人生を始めます。 辺境で薬師として働く中で出会ったのは、強くて優しい無骨な騎士・オリヴァー。誠実で不器用な彼にどんどん惹かれていき…… 「お前が笑ってくれるなら、それだけでいい」 不器用なふたりの、やさしくて甘い恋が始まります。 彼とのあたたかい結婚生活が始まった頃、没落した元婚約者と妹が涙目で擦り寄ってきて―― 「お断りします。今さら、遅いわよ」

処理中です...