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出国編
揺れる想いと巡る思考
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「今日の夕方にここを発って、夜には出国しようと思うんだ」
あの後、しばらくして落ち着いた私は、ウィルとこれからのことについて話していた。
これから……。少なくとも、屋敷には戻れないであろうことは分かる。死ぬかもしれない、という恐怖もあるし、初夜直前に失踪する嫁なんて、戻っても面倒なことになるのが目に見えている。
それに、ウィルだって心配だ。無断帰国して、結婚当日に娘を誘拐したなんて、お父様に見つかったらなんらかの処分が下されることは予想がつく。
加えて、隠れ家に留まり続けることも危険だとウィルは言った。ある程度隠してはあるけど、まともな追手が来たら隠し切れない。他国に出て、追手を撒くべきだ、と。
追手。ウィルは、強力な追手の可能性をかなり危惧している。結婚先から逃げ出した私とそれを手助けしたウィル。追手が来るにしても、グレアム家の私兵が精一杯だと思ったけれど、ウィルが危惧しているのはもっと強力な……魔法に精通した追手に思える。
今回の私の件は、一伯爵家の不祥事。体面のこともあるだろうし、お父様が私兵を出すのは分かるけど……。それとも、ウィルにしか見えてない事情があるのかしら。
「分かったわ」
色々考えてしまったけれど、逃げるのにその迷いは必要なさそうだった。気を取り直して、出国計画について話し合う。
真剣に地図をなぞるウィルの指先は細く長く伸びていて、離れていた五年の長さを実感する。私が知らないことも色々知っていた。留学先で学んだことだろうか。昔はお父様達が出掛けている隙に、二人で書斎に行って本を読んでいたから、知識量に差はなかったけど……。
「どうしたの? 姉様。まだ調子悪い?」
「え?! あ、大丈夫、何でもないわ」
ついついぼーっとしてしまったのを、ウィルに心配される。そう、逃げるのにあまり必要ない思考はすべきでないのに……。
(やっぱりダメだわ、こんなに頭が回らないなんて)
私は、義理の弟への恋心を自覚してしまった。
(はぁ……出国のために、余計なことは考えないようにしないといけないのに)
あの時、目を覆ってくれたから安心できたな、とか。今朝起きた時、ずっとそばにいてくれて嬉しかったな、とか。今説明してくれてる時、とっても分かりやすくてすごいな、とか。そういうことばっかり考えてしまって。
(でも、この想いが知られたら、引かれてしまうかもしれない。絶対隠して、まずは二人で無事に出国しなきゃ)
結局、いろんなことを考えながら計画の話をして、話が終わった頃には私の脳は疲れ切っていた。
あの後、しばらくして落ち着いた私は、ウィルとこれからのことについて話していた。
これから……。少なくとも、屋敷には戻れないであろうことは分かる。死ぬかもしれない、という恐怖もあるし、初夜直前に失踪する嫁なんて、戻っても面倒なことになるのが目に見えている。
それに、ウィルだって心配だ。無断帰国して、結婚当日に娘を誘拐したなんて、お父様に見つかったらなんらかの処分が下されることは予想がつく。
加えて、隠れ家に留まり続けることも危険だとウィルは言った。ある程度隠してはあるけど、まともな追手が来たら隠し切れない。他国に出て、追手を撒くべきだ、と。
追手。ウィルは、強力な追手の可能性をかなり危惧している。結婚先から逃げ出した私とそれを手助けしたウィル。追手が来るにしても、グレアム家の私兵が精一杯だと思ったけれど、ウィルが危惧しているのはもっと強力な……魔法に精通した追手に思える。
今回の私の件は、一伯爵家の不祥事。体面のこともあるだろうし、お父様が私兵を出すのは分かるけど……。それとも、ウィルにしか見えてない事情があるのかしら。
「分かったわ」
色々考えてしまったけれど、逃げるのにその迷いは必要なさそうだった。気を取り直して、出国計画について話し合う。
真剣に地図をなぞるウィルの指先は細く長く伸びていて、離れていた五年の長さを実感する。私が知らないことも色々知っていた。留学先で学んだことだろうか。昔はお父様達が出掛けている隙に、二人で書斎に行って本を読んでいたから、知識量に差はなかったけど……。
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「え?! あ、大丈夫、何でもないわ」
ついついぼーっとしてしまったのを、ウィルに心配される。そう、逃げるのにあまり必要ない思考はすべきでないのに……。
(やっぱりダメだわ、こんなに頭が回らないなんて)
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(はぁ……出国のために、余計なことは考えないようにしないといけないのに)
あの時、目を覆ってくれたから安心できたな、とか。今朝起きた時、ずっとそばにいてくれて嬉しかったな、とか。今説明してくれてる時、とっても分かりやすくてすごいな、とか。そういうことばっかり考えてしまって。
(でも、この想いが知られたら、引かれてしまうかもしれない。絶対隠して、まずは二人で無事に出国しなきゃ)
結局、いろんなことを考えながら計画の話をして、話が終わった頃には私の脳は疲れ切っていた。
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