[完結]妹の信者達に殺されかけてましたが、逃がしたつもりだった義弟がやたらかっこよくなって帰ってきました。

雨宮ユウリ

文字の大きさ
9 / 15
出国編

揺れる想いと巡る思考

しおりを挟む
「今日の夕方にここを発って、夜には出国しようと思うんだ」

 あの後、しばらくして落ち着いた私は、ウィルとこれからのことについて話していた。

 これから……。少なくとも、屋敷には戻れないであろうことは分かる。死ぬかもしれない、という恐怖もあるし、初夜直前に失踪する嫁なんて、戻っても面倒なことになるのが目に見えている。

 それに、ウィルだって心配だ。無断帰国して、結婚当日に娘を誘拐したなんて、お父様に見つかったらなんらかの処分が下されることは予想がつく。

 加えて、隠れ家に留まり続けることも危険だとウィルは言った。ある程度隠してはあるけど、まともな追手が来たら隠し切れない。他国に出て、追手を撒くべきだ、と。

 追手。ウィルは、強力な追手の可能性をかなり危惧している。結婚先から逃げ出した私とそれを手助けしたウィル。追手が来るにしても、グレアム家の私兵が精一杯だと思ったけれど、ウィルが危惧しているのはもっと強力な……魔法に精通した追手に思える。

 今回の私の件は、一伯爵家の不祥事。体面のこともあるだろうし、お父様が私兵を出すのは分かるけど……。それとも、ウィルにしか見えてない事情があるのかしら。

「分かったわ」

 色々考えてしまったけれど、逃げるのにその迷いは必要なさそうだった。気を取り直して、出国計画について話し合う。

 真剣に地図をなぞるウィルの指先は細く長く伸びていて、離れていた五年の長さを実感する。私が知らないことも色々知っていた。留学先で学んだことだろうか。昔はお父様達が出掛けている隙に、二人で書斎に行って本を読んでいたから、知識量に差はなかったけど……。

「どうしたの? 姉様。まだ調子悪い?」

「え?! あ、大丈夫、何でもないわ」

 ついついぼーっとしてしまったのを、ウィルに心配される。そう、逃げるのにあまり必要ない思考はすべきでないのに……。

(やっぱりダメだわ、こんなに頭が回らないなんて)

 私は、義理の弟への恋心を自覚してしまった。

(はぁ……出国のために、余計なことは考えないようにしないといけないのに)

 あの時、目を覆ってくれたから安心できたな、とか。今朝起きた時、ずっとそばにいてくれて嬉しかったな、とか。今説明してくれてる時、とっても分かりやすくてすごいな、とか。そういうことばっかり考えてしまって。

(でも、この想いが知られたら、引かれてしまうかもしれない。絶対隠して、まずは二人で無事に出国しなきゃ)

 結局、いろんなことを考えながら計画の話をして、話が終わった頃には私の脳は疲れ切っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

王宮メイドは今日も夫を「観察」する

kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」 王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。 ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。 だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……? ※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!

月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、 花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。 姻族全員大騒ぎとなった

『婚約破棄ありがとうございます。自由を求めて隣国へ行ったら、有能すぎて溺愛されました』

鷹 綾
恋愛
内容紹介 王太子に「可愛げがない」という理不尽な理由で婚約破棄された公爵令嬢エヴァントラ。 涙を流して見せた彼女だったが── 内心では「これで自由よ!」と小さくガッツポーズ。 実は王国の政務の大半を支えていたのは彼女だった。 エヴァントラが去った途端、王宮は大混乱に陥り、元婚約者とその恋人は国中から総スカンに。 そんな彼女を拾ったのは、隣国の宰相補佐アイオン。 彼はエヴァントラの安全と立場を守るため、 **「恋愛感情を持たない白い結婚」**を提案する。 「干渉しない? 恋愛不要? 最高ですわ」 利害一致の契約婚が始まった……はずが、 有能すぎるエヴァントラは隣国で一気に評価され、 気づけば彼女を庇い、支え、惹かれていく男がひとり。 ――白い結婚、どこへ? 「君が笑ってくれるなら、それでいい」 不器用な宰相補佐の溺愛が、静かに始まっていた。 一方、王国では元婚約者が転落し、真実が暴かれていく――。 婚約破棄ざまぁから始まる、 天才令嬢の自由と恋と大逆転のラブストーリー! ---

奪う人たちは放っておいて私はお菓子を焼きます

タマ マコト
ファンタジー
伯爵家の次女クラリス・フォン・ブランディエは、姉ヴィオレッタと常に比較され、「控えめでいなさい」と言われ続けて育った。やがて姉の縁談を機に、母ベアトリスの価値観の中では自分が永遠に“引き立て役”でしかないと悟ったクラリスは、父が遺した領都の家を頼りに自ら家を出る。 領都の端でひとり焼き菓子を焼き始めた彼女は、午後の光が差す小さな店『午後の窓』を開く。そこへ、紅茶の香りに異様に敏感な謎の青年が現れる。名も素性も明かさぬまま、ただ菓子の味を静かに言い当てる彼との出会いが、クラリスの新しい人生をゆっくりと動かし始める。 奪い合う世界から離れ、比較されない場所で生きると決めた少女の、静かな再出発の物語。

うっかり結婚を承諾したら……。

翠月 瑠々奈
恋愛
「結婚しようよ」 なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。 相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。 白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。 実際は思った感じではなくて──?

婚約破棄されて自由になったので、辺境で薬師になったら最強騎士に溺愛されました

有賀冬馬
恋愛
「愛想がないから妹と結婚する」と言われ、理不尽に婚約破棄されたクラリス。 貴族のしがらみも愛想笑いもこりごりです! 失意どころか自由を手にした彼女は、辺境の地で薬師として新たな人生を始めます。 辺境で薬師として働く中で出会ったのは、強くて優しい無骨な騎士・オリヴァー。誠実で不器用な彼にどんどん惹かれていき…… 「お前が笑ってくれるなら、それだけでいい」 不器用なふたりの、やさしくて甘い恋が始まります。 彼とのあたたかい結婚生活が始まった頃、没落した元婚約者と妹が涙目で擦り寄ってきて―― 「お断りします。今さら、遅いわよ」

処理中です...