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救出編
全てが終わり、新しく始まる朝
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「ん……?」
窓から差し込む朝日が眩しくて目を開く。ここは……? なんだか、体が軽い。アザや傷が全部消えていた。昨日のことを思い出そうとして……。
「姉様! 起きたの? 体は大丈夫?」
「ウィル……」
そうだった。私はアレックス様と結婚して、初夜を迎えようとしていた。でも、ウィルが来てくれて、私を……守ってくれた。もしかして、今傷がないのもウィルのおかげなんだろうか。昔、ウィルを連れてきたお父様が魔力がどうとか言っていた気がする。
「大丈夫、だけど……あの後どうなったの?」
アレックス様がこちらを睨んできた時のこと、今思い出しても寒気がする。今までもそうだった。睨まれて、怒鳴られて、嫌味を言われて、階段から突き落とされて。顔を見るたび震えが止まらなかった。けれど、あの時は特に……。
私が眠っちゃった後、あんなに恐ろしいアレックス様から、ウィルはどうやって逃げてこれたんだろう。
「姉様、落ち着いて。あいつは絶対ここに来ないから」
あの時を思い出して震えていたのに気づいたのか、ウィルは私の手を握ってくれて、慰めてくれた。あぁ、本当に五年前と正反対だ。それにやっぱり、ウィルは怖くない。
「ありがとう、ウィル」
私が落ち着くのを待って、ウィルは少しずつ話してくれた。留学していた先で少しずつ魔法を学んでいたこと。学んだ魔法を使って転移してきたこと。この隠れ家にも隠蔽魔法をかけていることと、体の怪我も魔法で治したことも。それで……。
「勝手なことしてごめん、姉様。まだ姉様の返事を聞いてなかったのに……」
目を伏せるウィル。あの時、私が返事をする前にアレックス様が来たから、優しいこの子は勝手に私を連れてきてしまったと思っているのだろう。
「いいの、いいのよウィル……。ありがとう、守ってくれて」
五年前に泣かせてしまったこの子。私を死なせたくないと言ってくれたこの子。そんな優しい子を責めるわけがない。
まるで五年前に戻ったように、目を伏せているウィルをぎゅっと抱きしめる。私がベッドに腰掛けて、ウィルは床に座っているからなんだか不格好だけど。昔も、こうして二人でくっついていた時が一番安心したっけ。
「むしろごめんね。貴方のこと守るなんて言って、ちっとも貴方のこと考えてなかった。返事なんて決まってるわ、私が一番大事なのはウィルだもの。だからお願い、これからもずっと一緒にいて……!」
あれ、自分から抱きついたくせになんだか気恥ずかしくて、まともに顔を見れない。顔が熱くなっているのが分かる。声が上擦らないように早口で言い切ったけど、不審に思われてないだろうか。
「あ、あの。姉様。近、いんだけど……」
おずおずと言い出すウィル。やっぱり?! もう十四だものね。五年間離れていたから、ついつい昔の感覚が抜けないけど……。
「あ、ご、ごめんね!」
パッと手を離す。は、恥ずかしい……。というか、やっぱりなんかドキドキしてる。血が繋がらなくても、大切な弟だと思って接してきたのに。
「ねぇ、ソフィー、姉様。好き」
その言葉に、つい勘違いしそうになる。だめ、ウィルはきっと姉として私が好きなだけ。私は……その、いやこれも色々あって疲れてるからで、ウィルは大切な弟で。
「私も好きよ、ウィル」
とりあえず、平静を装って答えておいた。好きって言い合うなんて、五年前までは毎日のようにしてたことだ。大丈夫、変に思われないはず。
ってやっぱりだめだ、なんか顔が赤くなってそう!
「あ、ねぇ私ちょっと顔を洗ってくるわね!」
なんだかとっても不自然な感じになったけど、今の最優先はウィルから離れることである。信じたくないけど、どうやら私はウィルがその、好きらしい。ドキドキして、まともに顔を見れないくらい。
(どうしよう、弟として大切にしてきたのに……)
それに、きっとウィルは私を姉としか思ってないのに。
足早に部屋から駆け出した私の耳には、ウィルの呟きは当然聞こえてなかった。
「僕の『好き』は……きっと、姉様が僕に抱いている思いと違う。僕は、姉様が好き。姉様としても、それ以外でも……」
窓から差し込む朝日が眩しくて目を開く。ここは……? なんだか、体が軽い。アザや傷が全部消えていた。昨日のことを思い出そうとして……。
「姉様! 起きたの? 体は大丈夫?」
「ウィル……」
そうだった。私はアレックス様と結婚して、初夜を迎えようとしていた。でも、ウィルが来てくれて、私を……守ってくれた。もしかして、今傷がないのもウィルのおかげなんだろうか。昔、ウィルを連れてきたお父様が魔力がどうとか言っていた気がする。
「大丈夫、だけど……あの後どうなったの?」
アレックス様がこちらを睨んできた時のこと、今思い出しても寒気がする。今までもそうだった。睨まれて、怒鳴られて、嫌味を言われて、階段から突き落とされて。顔を見るたび震えが止まらなかった。けれど、あの時は特に……。
私が眠っちゃった後、あんなに恐ろしいアレックス様から、ウィルはどうやって逃げてこれたんだろう。
「姉様、落ち着いて。あいつは絶対ここに来ないから」
あの時を思い出して震えていたのに気づいたのか、ウィルは私の手を握ってくれて、慰めてくれた。あぁ、本当に五年前と正反対だ。それにやっぱり、ウィルは怖くない。
「ありがとう、ウィル」
私が落ち着くのを待って、ウィルは少しずつ話してくれた。留学していた先で少しずつ魔法を学んでいたこと。学んだ魔法を使って転移してきたこと。この隠れ家にも隠蔽魔法をかけていることと、体の怪我も魔法で治したことも。それで……。
「勝手なことしてごめん、姉様。まだ姉様の返事を聞いてなかったのに……」
目を伏せるウィル。あの時、私が返事をする前にアレックス様が来たから、優しいこの子は勝手に私を連れてきてしまったと思っているのだろう。
「いいの、いいのよウィル……。ありがとう、守ってくれて」
五年前に泣かせてしまったこの子。私を死なせたくないと言ってくれたこの子。そんな優しい子を責めるわけがない。
まるで五年前に戻ったように、目を伏せているウィルをぎゅっと抱きしめる。私がベッドに腰掛けて、ウィルは床に座っているからなんだか不格好だけど。昔も、こうして二人でくっついていた時が一番安心したっけ。
「むしろごめんね。貴方のこと守るなんて言って、ちっとも貴方のこと考えてなかった。返事なんて決まってるわ、私が一番大事なのはウィルだもの。だからお願い、これからもずっと一緒にいて……!」
あれ、自分から抱きついたくせになんだか気恥ずかしくて、まともに顔を見れない。顔が熱くなっているのが分かる。声が上擦らないように早口で言い切ったけど、不審に思われてないだろうか。
「あ、あの。姉様。近、いんだけど……」
おずおずと言い出すウィル。やっぱり?! もう十四だものね。五年間離れていたから、ついつい昔の感覚が抜けないけど……。
「あ、ご、ごめんね!」
パッと手を離す。は、恥ずかしい……。というか、やっぱりなんかドキドキしてる。血が繋がらなくても、大切な弟だと思って接してきたのに。
「ねぇ、ソフィー、姉様。好き」
その言葉に、つい勘違いしそうになる。だめ、ウィルはきっと姉として私が好きなだけ。私は……その、いやこれも色々あって疲れてるからで、ウィルは大切な弟で。
「私も好きよ、ウィル」
とりあえず、平静を装って答えておいた。好きって言い合うなんて、五年前までは毎日のようにしてたことだ。大丈夫、変に思われないはず。
ってやっぱりだめだ、なんか顔が赤くなってそう!
「あ、ねぇ私ちょっと顔を洗ってくるわね!」
なんだかとっても不自然な感じになったけど、今の最優先はウィルから離れることである。信じたくないけど、どうやら私はウィルがその、好きらしい。ドキドキして、まともに顔を見れないくらい。
(どうしよう、弟として大切にしてきたのに……)
それに、きっとウィルは私を姉としか思ってないのに。
足早に部屋から駆け出した私の耳には、ウィルの呟きは当然聞こえてなかった。
「僕の『好き』は……きっと、姉様が僕に抱いている思いと違う。僕は、姉様が好き。姉様としても、それ以外でも……」
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