14 / 15
出国編
夢と旅
しおりを挟む
ということで、晴れてすれ違いを修正した私たちは、恋人のようにイチャイチャ……できるような状況でもなく。あの兵士はウィルが殺してくれたらしいけど、他にも兵士はいるし、あんまりのんびりもしていられなかった。
真夜中で視界が悪い中、はぐれないように手を繋ぎつつ国境を目指す。国境と言っても、関所からなるべく離れた、人気のないところが目的地だけど。
「そういえば、ムスハイム王国じゃなくて、モンテーラ共和国でいいの?」
出国計画を立てるとき、ウィルは留学をしていたムスハイム王国を経由し、遠く離れたモンテーラ共和国を目指すと言っていた。
流石に、ウィル・グレアムとして学び続けることが難しくても、ムスハイムで五年暮らして、現地に慣れ親しんでいたなら、そこで暮らしていくのが良いのではないか、と思うんだけど……。
「ムスハイムは近すぎるから。念には念を入れたほうがいいし……。あ、留学のことも、学びたいことは学んだし、未練とかないから。それに、モンテーラの方が姉様にはいいかと思って」
「私に?」
「昔、言ってたでしょ。もしあの家から自由になれたら、自然豊かな街で花屋がしたいって。あの国なら色々都合が良さそうだし」
「あ……」
ふと、昔の記憶を思い出す。昔、私たちはよく屋敷の庭にいた。屋敷の庭は広く、メアリーやそのキシサマ方に見つかりにくかったから。
そこで、庭師のおじいさんにいらない花を貰って、花冠とか作ってたんだっけ。ウィルにあげたり、並べて眺めたりして。
色とりどりで、様々な形をしている花を見るのは楽しくて、心が安らいだ。それで、『この家から自由になれたら、花屋がしたい』なんてことも言っていたのだ。
(あの家から抜け出したいっていう、空想の一部ではあったけど)
「覚えててくれたんだ……」
貴族の娘が、家から解放されることはあり得ない。だから、どれだけ願ってもそれは叶わぬ夢だった。最近はそんな夢も希望も、全部押し殺していたから、自分でも忘れていた。
(でも、せっかく自由になれたんだから、やってみたい、かも)
「ねぇ、ウィル。もしモンテーラでお店が開けたら、一緒にやってくれる?」
「当然。言われなくても、手伝うつもりだったし。それに、約束してくれたんでしょ? ずっと一緒にいるって」
「そっか、そうだよね……ありがとう」
モンテーラまでの旅路は、忌々しい思い出から、この国から逃げ出す旅じゃない。押し殺していた夢を叶えにいく旅。そんな気がして、胸が高鳴る。
——そうして、私たちは国境を超えた。
真夜中で視界が悪い中、はぐれないように手を繋ぎつつ国境を目指す。国境と言っても、関所からなるべく離れた、人気のないところが目的地だけど。
「そういえば、ムスハイム王国じゃなくて、モンテーラ共和国でいいの?」
出国計画を立てるとき、ウィルは留学をしていたムスハイム王国を経由し、遠く離れたモンテーラ共和国を目指すと言っていた。
流石に、ウィル・グレアムとして学び続けることが難しくても、ムスハイムで五年暮らして、現地に慣れ親しんでいたなら、そこで暮らしていくのが良いのではないか、と思うんだけど……。
「ムスハイムは近すぎるから。念には念を入れたほうがいいし……。あ、留学のことも、学びたいことは学んだし、未練とかないから。それに、モンテーラの方が姉様にはいいかと思って」
「私に?」
「昔、言ってたでしょ。もしあの家から自由になれたら、自然豊かな街で花屋がしたいって。あの国なら色々都合が良さそうだし」
「あ……」
ふと、昔の記憶を思い出す。昔、私たちはよく屋敷の庭にいた。屋敷の庭は広く、メアリーやそのキシサマ方に見つかりにくかったから。
そこで、庭師のおじいさんにいらない花を貰って、花冠とか作ってたんだっけ。ウィルにあげたり、並べて眺めたりして。
色とりどりで、様々な形をしている花を見るのは楽しくて、心が安らいだ。それで、『この家から自由になれたら、花屋がしたい』なんてことも言っていたのだ。
(あの家から抜け出したいっていう、空想の一部ではあったけど)
「覚えててくれたんだ……」
貴族の娘が、家から解放されることはあり得ない。だから、どれだけ願ってもそれは叶わぬ夢だった。最近はそんな夢も希望も、全部押し殺していたから、自分でも忘れていた。
(でも、せっかく自由になれたんだから、やってみたい、かも)
「ねぇ、ウィル。もしモンテーラでお店が開けたら、一緒にやってくれる?」
「当然。言われなくても、手伝うつもりだったし。それに、約束してくれたんでしょ? ずっと一緒にいるって」
「そっか、そうだよね……ありがとう」
モンテーラまでの旅路は、忌々しい思い出から、この国から逃げ出す旅じゃない。押し殺していた夢を叶えにいく旅。そんな気がして、胸が高鳴る。
——そうして、私たちは国境を超えた。
11
あなたにおすすめの小説
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
王宮メイドは今日も夫を「観察」する
kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」
王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。
ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。
だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……?
※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!
月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、
花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。
姻族全員大騒ぎとなった
『婚約破棄ありがとうございます。自由を求めて隣国へ行ったら、有能すぎて溺愛されました』
鷹 綾
恋愛
内容紹介
王太子に「可愛げがない」という理不尽な理由で婚約破棄された公爵令嬢エヴァントラ。
涙を流して見せた彼女だったが──
内心では「これで自由よ!」と小さくガッツポーズ。
実は王国の政務の大半を支えていたのは彼女だった。
エヴァントラが去った途端、王宮は大混乱に陥り、元婚約者とその恋人は国中から総スカンに。
そんな彼女を拾ったのは、隣国の宰相補佐アイオン。
彼はエヴァントラの安全と立場を守るため、
**「恋愛感情を持たない白い結婚」**を提案する。
「干渉しない? 恋愛不要? 最高ですわ」
利害一致の契約婚が始まった……はずが、
有能すぎるエヴァントラは隣国で一気に評価され、
気づけば彼女を庇い、支え、惹かれていく男がひとり。
――白い結婚、どこへ?
「君が笑ってくれるなら、それでいい」
不器用な宰相補佐の溺愛が、静かに始まっていた。
一方、王国では元婚約者が転落し、真実が暴かれていく――。
婚約破棄ざまぁから始まる、
天才令嬢の自由と恋と大逆転のラブストーリー!
---
奪う人たちは放っておいて私はお菓子を焼きます
タマ マコト
ファンタジー
伯爵家の次女クラリス・フォン・ブランディエは、姉ヴィオレッタと常に比較され、「控えめでいなさい」と言われ続けて育った。やがて姉の縁談を機に、母ベアトリスの価値観の中では自分が永遠に“引き立て役”でしかないと悟ったクラリスは、父が遺した領都の家を頼りに自ら家を出る。
領都の端でひとり焼き菓子を焼き始めた彼女は、午後の光が差す小さな店『午後の窓』を開く。そこへ、紅茶の香りに異様に敏感な謎の青年が現れる。名も素性も明かさぬまま、ただ菓子の味を静かに言い当てる彼との出会いが、クラリスの新しい人生をゆっくりと動かし始める。
奪い合う世界から離れ、比較されない場所で生きると決めた少女の、静かな再出発の物語。
うっかり結婚を承諾したら……。
翠月 瑠々奈
恋愛
「結婚しようよ」
なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。
相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。
白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。
実際は思った感じではなくて──?
婚約破棄されて自由になったので、辺境で薬師になったら最強騎士に溺愛されました
有賀冬馬
恋愛
「愛想がないから妹と結婚する」と言われ、理不尽に婚約破棄されたクラリス。
貴族のしがらみも愛想笑いもこりごりです!
失意どころか自由を手にした彼女は、辺境の地で薬師として新たな人生を始めます。
辺境で薬師として働く中で出会ったのは、強くて優しい無骨な騎士・オリヴァー。誠実で不器用な彼にどんどん惹かれていき……
「お前が笑ってくれるなら、それだけでいい」
不器用なふたりの、やさしくて甘い恋が始まります。
彼とのあたたかい結婚生活が始まった頃、没落した元婚約者と妹が涙目で擦り寄ってきて――
「お断りします。今さら、遅いわよ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる