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黒丸くんと相談事……そして、事件です!①
しおりを挟む「クソがっ!俺は認めん認めんぞ!」
ジャスティス王子が大声でがなり散らす。
「うそうそよ…王様まで味方するなんて!ヴィヴィアンさんが魅了魔法を使ったのよ!」
王子に負けない音量でミリヤ妃は私を指差しながら責め立てた。
はぁ、文句ばっかり。
息がピッタリのお似合いの夫婦ですね。また、私の責任ですか?そうですが……。ミリヤ妃の発言にゲンナリしていると旦那さまは大袈裟に肩を竦めた。
「ヴィーに魅了魔法が使えないことをジャスティス王子とミリヤ妃は御存じだと思っておりましたが?
私の部下が歓楽街アレドリアから珍しい薬を入手しました。カリアシュという薬で昔は反抗的な奴隷や娼婦を言いなりにするため使用されていたようです。既に王に報告、献上済みです。王都でも作用、所持禁止になる予定です。
優秀な犬獣人に薬の匂いも覚えさせたので直ちに、検挙出来ると思います」
旦那さまは敢えて牽制の意味を込めてゆっくりと王子とミリヤ妃に伝えた。
「先日も言いましたが、私は何も知りませんわ!」
「俺も知らんぞ!」
青い顔で焦る王子とミリヤ妃に畳み掛けるように旦那さまは続けた。
「ジャスティス王子……王命を認めないとの先ほどの発言は王に対する侮辱、不遜にあたります。国家離反を疑い兼ねませんが宜しいのですか?
ミリヤ妃も王子に賛同し王命に従えないと言うことですか?」
低く冷ややかな旦那さまの声。正妃付きの護衛騎士の鋭い視線に晒されジャスティス王子は一度怯んだ。それでも、憎悪を瞳に滾らせ旦那さまを睨み一歩前に進み出た。
「………離反などしない。王命に従えばいいのだろう!胸糞悪い。チッ、行くぞミリヤっ!遅いぞ何をしてる!!早く来い!」
「ひっ!引っ張らないで!痛いですわ!待って下さい」
ジャスティス王子は苛立ちをミリヤ妃にぶつけて、半ば引き摺るように教室から出ていった。
うわわ、乱暴男ですか?益々引きますよー。
そして、嵐の去った後にのんびりとお茶を堪能することが出来ましたとさ。ジャスティス王子に引き摺られ、痛みに涙目のミリヤ妃がちょっと可哀想に思えてしまった。
◇◇◇
休憩後に怪しげな魔道具が並べられた異様な雰囲気の部屋に案内された。豪華さと不気味さが共存するここがアリアナさまの客間らしい。
アリアナさまは虫眼鏡のような魔道具でひとしきり黒丸くんを観察すると感嘆の声を漏らした。
「このように、鮮明に具現化した闇の精霊は初めてですわ。まあっ!触れることが出来ますの?」
「ビィィ~っ」
聖なる力ただ漏れのアリアナさまにツンツンされ黒丸くんは情けない悲鳴をあげた。
「あの~相反する聖属性のアリアナさまに触られ苦しんでいるので、お手柔らかにお願いします」
好奇心の余り黒丸くんをむにゅむにゅ引っ張り、縦に横に伸ばすアリアナさまを止めた。ちぎれるから止めて下さい~。
「わ、私としたことが……失礼いたしました」
アリアナさまは、こほんと咳払いすると黒丸くんを離した。黒丸くんは目にも止まらぬ早さで、私のおっぱいの間に避難した。余程怖かったのかプルプル震えている。
「ヴィー、差し出がましいと思いますが黒丸は指輪に仕舞うようにしてください」
旦那さまは震える私の胸元を見て渋い顔で苦言を言った。
「わかってはいるんです………でも、おっぱいが良いみたいで指輪に入ってくれないんですよー。無理強いは可哀想ですし」
「……貴女がそうやって甘やかすからです」
旦那さまは眉間の皺を益々深めた。
「そ、そんな~!」
旦那さままでミリヤ妃みたいに、私の責任にするのですか~?
「奥さま気にするな。シオン隊長の小せぇ嫉妬だからよ。黒丸くんがおっぱいに挟まれて羨ましいんだ。自分もしてほしいそうだぜ」カラカラ笑いながら、スージーさんは旦那さまをからかう。
「っ!誤解ですスージー。私はしてほしくなどありません」旦那さまは、隊長としての威厳を守るため否定した。
「え?してほしくないんですか?残念です……旦那さまが望むなら、何処でも挟むのに」
しゅんと項垂れて呟くと、旦那さまは私の肩をがっちり掴む。
「ヴィーがしたいならどうぞ挟んで下さい」
びっくりするほど早口で言われたよ!
余りの旦那さまの慌てぶりにスージーさんと目を合わせ笑ってしまった。
笑われ憮然とする旦那さま、笑う私とスージーさんをアリアナさまは瞳を瞬かせ見つめた。
「ふふ、夫婦仲は良好とお見受けしましたが、使用人とも距離が近しいのですね。まるで親友のようですわ」
「アリアナ様、お見苦しいところをお見せしてすみません」旦那さまがアリアナ様に頭を下げた。
ついつい普段のマクガイヤ屋敷の応接間に居るように過ごしてしまった。うう、危ないです。
「謝らないで下さいな。距離が近くて羨ましいですの。私の使用人たちは畏れ多いと堅苦しい敬語ばかりで、近寄ってくれませんの。それで動物を飼おうと思ったのですが、生き物にも好かれません」
そう笑うアリアナさまの笑顔は酷く寂しそう。なのに、神々しい光が溢れて彼女を隔てて、近寄りたがい。
彼女の清浄すぎる圧倒的な聖なる力は眩しすぎた。本能的に動物は怯むだろう。
浄化の光で、全ての罪を暴くように醜い感情が浮き彫りにされる。心が落ち着かない。人々を不安にさせる。大なり小なり人には暗い、煮え切らない感情がある。
アリアナさまの強すぎる力はそれを眼下に突きつけるかのようで。人は弱いから、自分の弱さ醜くさなんて見なくない。
強すぎる力で彼女はきっと孤独だった。
彼女の隣に並ぶには同じ能力を持つ人。もしくはとても心が純粋な人、強い信念を持つ人だけだろう。
私と旦那さまが、アリアナさまになんて声を掛けて慰めれば正解か迷っていると、スージーさんが口を開いた。
「ふーん、生き物に好かれてぇなら、その無駄にただ漏れの聖なる力を押さえれは良いんじゃないか?」いつもの口調でアリアナさまに話かけてる。
「ええっ!スージーさん言い方っ!」
「スージーっ!言葉使いに気を付けて下さい」
いくら最初にアリアナさまが敬語は入りませんと言って下さったとしても、聖女さまに対する口の聞き方じゃないですよ~。根が素直なスージーさんは言葉通りに捉えて、いつもの乱雑な口調のまま。
混乱する私の頭の中を不敬罪、むち打ち、打ち首獄門、三角木馬、恐ろしい単語が飛び交う。
「………私、そんなにただ漏れですか?」
恐る恐るアリアナさまはスージーさんに尋ねた。
「ああ、目が潰れそうなぐらい漏れてるぜ。抑えれば、人も生き物も寄ってくるんじゃねーか?」
歯に衣着せずスージーさんはカラリと答えた。
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