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事件は続くよ②
しおりを挟むああ、硬い熱い~!旦那さまの筋肉安心します。
園庭で旦那さまに抱き締められていると遠慮がちに、国王さまが呼んでいるから謁見の間に来るよう兵士さんに促されました。
手を繋がれ旦那さまに守られながら、謁見の間に急いだ。王様をお待たせするわけにはいけませんね。
でも、私を守るためとはいえ、仮にも王子を殴った旦那さまは大丈夫かな?
もし、旦那さまが死刑になるなんてことになったら……焦る私とは対照的に旦那さまは余裕のある表情をしています。勝算があるのでしょうか?
謁見の間には、玉座に国王さま、正妃さまが座り、直ぐ横にはダニエル王子が神妙な顔で控えています。
玉座の階段を下りた離れた場所に、護衛騎士に両手を取り押さえられ膝を付いた姿勢で泣き喚くミリヤ妃の姿を確認しました。
「私も被害者です!こんな酷いことしたくなかった。でも!王子に叩かれるので仕方なくて!」
大袈裟に訴えるミリヤ妃。え~と、ノリノリでしたよね?
その隣の数歩距離の置かれた場所には、外れた顎に白い布をあて、頭の上で固結びの応急措置を施されたジャスティス王子がフガフガフ言いながら正座させられていた。
王子は、眼だけを血走らせてミリヤ妃を睨んでいます。
良く見れば、両手は後ろ手で罪人のように縛られ、護衛騎士の壁に取り囲まれています。かろうじて前の玉座が見えるように二人分の隙間があります。
王子が護衛騎士たちの監視の目をすり抜け、私を襲おうとしたので、面目丸つぶれですし。厳重にもなりますよね。
「ヴィヴィアン、わたくしたちが愚かなばかりで貴女に怖い思いをさせてしまいました……シオンにも悪いことをしました。貴方たちを巻き込んでキャシーに会わす顔がありませんわ」
私たちの姿を見るや、開口一番王妃さまが謝罪した。目に涙まで浮かべている。
「ヴィヴィアン、シオン、余の愚息が本当にすまなかった。野放しにした余たちの責任だ。ヴィヴィアン頬が赤いな、聖女アリアナを呼ぼう先に怪我の治療をいたせ…」国王までも謝罪の言葉を口にした。
えー?こんなに簡単に一国のトップが頭を下げて良いんですかー?
「お、フガ!れ、フガフガっ!」
護衛騎士に取り囲まれたジャスティス王子が赤い顔でなにやらフガフガフガフガと喚いています。きっと自分の顎も治療しろと訴えているんでしょうが、誰も聞く耳を持たないですね。
王さまの自分より下位の身分の者に頭を下げる潔よさに驚きながら「治療は大丈夫です」と、お答えした。アリアナさまと赤ちゃんに負担をかけたくない。
「……本当にです。
お二人が早く決断して下さったらヴィヴィアンは傷つかずに済みました」旦那さまが冷たく口を開いた。
「旦那さまっ!私は大丈夫ですよ!」
国王さまと王妃さまを責める口振りに慌てて止める。不敬罪になっちゃいますよー!
「今回は辛うじて間に合い大丈夫でした。でも次はどうなるか誰にもわかません……私はつまらないことで貴女の笑顔を失いたくない。愛していますヴィヴィアン。命に変えても護ります」
御前なのに、旦那さまは躊躇なく私を抱き締めた。
「あわわー!嬉しいですけど、私も愛してますけど、皆さん見てますからー!」
あっ気にとられる国王さまと、ダニエル王子と壁の護衛騎士。微笑む正妃さま。射殺す勢いで私を睨むミリヤ妃。目を見開きフガフガ喚く、喚き過ぎて床に転がるジャスティス王子。
三者三様の反応を受け、更に旦那さまは続けた。
「愛する貴女を守るため、そしてジャスティス王子の顎を外した責任を取って獣人騎士団団長の地位を返上します。ヴィーとシリウス、家族三人で父、母の住まう辺境マクガイヤ地に移住したいと思います。もし、移住が認められないのでしたら、他国に亡命致します」
「えー!本当ですか?旦那さまっ!」
「なっ!」
「亡命……なんて、そんな」
「シオン!悪いのは息子ですわ。些細な怪我は自業自得です」
「シオン、待て、早まるな!愚息の顎など気にせんで良い!罪には問わん」
「フガ、ンガ!フガフガー!ンガ!フガっ!!ー!っ!!」
謁見の間の人達は一斉に驚き声をあげた。
ジャスティス王子は、旦那さまが罪に問われないと聞き、物凄い形相で殊更大きな声で呻いた。王前に出ようとして、護衛騎士の壁に阻まれ床に転がされる。王子はふー、ふーっと荒い息で旦那さまを睨み続けた。旦那さまを死刑にして欲しかったんですね?全く反省していなそうです。
でも、旦那さまが罪を問われないでよかった。
それより、旦那さま亡命ってこの国を捨てるつもりですか?英雄の旦那さまが国を捨てて出ていく。
純粋に獣人騎士団の戦力低下する。もし次に魔物のスタンピートが発生したら防衛出来ない可能性高い。それに対国外的にも心証が物凄く悪い、理由が自国の王子が英雄の妻を強姦未遂が理由なだけに。他国はこぞって厚待遇で旦那さまを迎え入れるだろうし、他国の戦力増加にもつながるし。
ちらりと、国王の顔を覗き見れば青白いを通り越し、白くなっている。王妃さまも顔色悪く、ぎゅっと扇を握りしめた。
「……いつまで、ダニエル王子の婚約者を守るため、私とヴィヴィアンをジャスティス王子とミリヤ妃の矢面に立たせ続けるつもりですか?このまま真実を公にせず、この状況が続くようでしたら先ほどの発言を本当に実行しますよ」
え?ダニエル王子の婚約者?なんのことですか?
「シオン……やはり気づいていましたのね」
正妃さまは、はっと張り詰めていた息を吐いた。
「そうか、すまないシオン。貴公なら気付いても盾になってくれると甘えていた」
意気消沈した国王はポツリと呟いた。
「早い段階で気づいていましたよ。もう充分盾になったと思いますが?」
「そうだな、本当にすまなかった」
再三謝る国王の前にダニエル王子がすっと立った。そして、私と旦那さまに深々と頭を下げた。
「すみませんでした。本当に二人に謝らないといけないのは僕です!僕に知恵と力、勇気が無くて。こんな方法でしか婚約者のアリアナを守る方法がなかったんです」
「フガっ!!」
「ウソうそっ!あの女が婚約者ですって?私の方がかわいいのに。な、何かの間違いですわ」ミリヤ妃が論点のずれたことを叫ぶ。
「えええーー??」
私も叫んだ。アリアナさまがダニエル王子の婚約者? それじゃあ、お腹の子の父親は、ダニエル王子ってことですか?」
でも、身分違いの恋って……。
あ、そうだ。アルバート教会には身分制度はない。女神の前に等しくみな平等の教義からみな平民なんだっけ。そうしたらアリアナさまは平民で、王子との恋は確かに身分違いになる。
ダニエル王子の婚約者=アリアナさまが妊娠したと知ったらジャスティス王子もミリヤ妃も全力で排除にかかるに決まっている。
お腹の子とアリアナさまを守るため、ダニエル王子は国王と王妃に相談した。ダニエル王子の婚約者の名前を公にせず、アリアナさまの妊娠を秘密にした。
そして、ジャスティス王子とミリヤ妃の関心が私と旦那さまに向くように画策したということですか?
それじゃあ、正妃さまのお茶会でジャスティス王子に遭遇したのは偶然じゃない。
ミリヤ妃が獣人騎士団に来させるため、護衛騎士の人数を少なくしたり、ミリヤ妃の好みと反する真面目な人を配置したのかも。フローラさんのお店で遭遇したのも、キャンセルをミリヤ妃には伝えてなかったんですねー?
アリアナさまの勉強会も旦那さまと私が居るから、ミリヤ妃もジャスティス王子も私たちにちょっかいかけてましたし。
はあっ、おもいっきり矢面に。しかも特大な盾にされていたよ。全然気付かなかった~。
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