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事件は続くよ④
しおりを挟む呆然と床に座り込んだミリア妃に、国王さまは眉根を寄せ薄い顎髭を撫で、殊更残念そうに告げた。
「フランソワ医者のダイタル家は祖父の代より王宮医師として忠実に仕えていただけに、惜しい人材を失うな。
仕方がない…王族を欺く罪を犯したのだ。既に投獄すみだ。良くて貴族席、医師免許剥奪のち国外追放だ」
ひえぇー、良くてもこの罪状ですか?最悪の事態なんて考えたくもないです。
……それじゃあ、首謀者のミリア妃はどうなるんですか?
時代劇によくある市中引き回しののち、打首獄門とか……まさか、そんなことないですよね?
「ひっ」
国王さまの冷たい視線がミリア妃に注がれた。見上げたミリア妃の顔にハッキリと恐怖が浮かぶ。
「ミリアよ。
脆弱と謗られようと其方はこの国唯一の聖女。国で大々的に任命式をし支援と擁護をしてきたつもりだ。余も王妃もジャスティスが立太子された暁には、ミリヤを正妃にと考えていた。
年若い二人には国を背負のは重責だ。多少の息抜きは必要だろうと、度重なる散財、享楽に目をつぶってきたが……逆効果だったようだな。
王族の責務を理解出来ぬから、検査結果の改竄などと愚行を致したのだろう?」
「違います!王族の責務は理解しています。
私は……ただ、国王になるため必死に努力してきたジャスティス様が種無しなだけで、王太子から外されることが不憫で可哀想でならなくて。
それに、貴族や国民に知れ渡ったら国内が混乱すると愁いたから罪を犯してしまいました……もう二度致しませんので、どうかお許し下さい」
舞台女優さながら泣き、最もらしいことを訴えるミリヤ妃。どうやら王さまの情に訴える作戦にでたようです。
「そうか……ミリヤなりにジャスティスを国のことを慮ってくれたのか?」
国王さまは目を細めた。
「はい!私は王子妃として聖女としてこの国のことを一番に考えています!」
聖徳の授業や慰問会をサボり、王子妃の仕事を私に押し付けようとしていたクセによく言いますね~?
「ほう、国を一番に考える王族が度重なる職務放棄をし、歓楽街で豪遊した挙げ句、借金を繰り返したとな?」
「……責務の辛さを忘れようとしただけです。それに借金の大半は私ではなくジャスティス王子ですわ」
「お、ま、ぐふふがぁ!ふが!が!!」
真っ赤な顔のジャスティス王子がミリヤ妃を指差した。きっとお前の方が借金が多いとか言ってそうです。
「帳簿には同じような借金の記載があるが?
それで夫婦揃い資金が足らず勝手に税を徴収したと言うのか?くだらん言い訳だ、片腹痛いな。
ミリヤよ……誠にこの国のことを一番に慮るならジャスティス王子が種無しと判明した時点で速やかにワシに報告し、王太子候補を辞すようにジャスティスを説得すべきだった」
王さまはピシャリとミリヤ妃を遮った。悔しそうに下を向くミリヤ妃。
「よって……ミリヤ妃を我が国の聖女から解任し廃妃とする。代わりにアリアナを我が国の聖女に任命する。そして、第一王子夫婦の全財産を没収し、借金の返済に当て、ジャスティスが貴族に降格したのちには、直ちに離婚してもらう。
第一王子夫婦を貴族牢に連れていけ、謹慎中でも騒ぎを起こした、野放しにしたら何をするかわからんからな」
「そんなっ!待って下さい。せ、聖女は等しくアルバート教会に属します。聖女を裁けるのは猊下のみです。私を貴族牢なんて、不当な扱いは聖王猊下の耳に入ります」
この期に及んでミリヤ妃は国王さまに噛みついた。
でも、聖女を裁けるのは猊下のみって本当ですか?私の疑問に答えてくれたのはアリアナさまだった。
「そうですわグランシア国王。
……昔、王族による不当な婚約破棄が横行しました。『真実の愛』の名を振りかざす愚かな人々に聖女は冤罪をかけられ国外追放、死刑、禁固刑などの罪に問われました。
稀有な癒し手の損失は大陸を滅ぼし兼ねませんわ。魔物の吹き溜まりを塞げるのは聖女だけです。
一計を案じた前代猊下、わたくしのお祖父様が聖女は等しくアルバート教会に属すと宣言しました。
これにより国単位で罪を犯した聖女を勝手に裁くことが出来なくなったのです。国に教会の調査委員会を派遣され、慎重に調査されたのち判決は猊下に委ねられます」
「そうだったんですか?」
教義のようなアリアナさまの説明を聞いた。
聖女が貴重な存在なら、ミリヤ妃も打首獄門にはならなそうです。
彼女に騙されて王子に襲われそうになった。ミリヤ妃のこと大嫌いだけど、死なれたらちょっと夢見が悪いです。少し安心しました。
「そうです、猊下から罪に問われていません。聖女のわたしを罪人扱いしないで下さい」
アリアナさまの説明に援軍を得たと思ったのかミリヤ妃は薄い胸を張った。
「猊下にお願いして、違う国の聖女に任命してもらううんだから!」
ええ~っ!ミリヤ妃逞しいというか図太いですね。
今は脆弱な聖女でも、今後聖徳を積めば化ける可能性はなきにしもあらずですし、欲しがる国は有りそうです。
魔物の吹き溜まりの脅威が大陸にある以上、この様子だと、猊下も大した罪には問わなそうですし。
「愚かなことじゃ、其方が罪人で有ることは変わらんぞ」
「まあっ…ミリヤ妃。別の国に寄生するつもりなのですか?」
国王さまも正妃さまも苦虫を噛み潰したような顔をした。
薄く笑うミリヤ妃。彼女の逃げ勝ちのようなスッキリしない空気が謁見の間に漂う。
その空気を破ったのは、何処までも澄んだ低音の声。
「ミリヤ妃。貴女はいつまで聖女で居られますかね?」冷たく笑う旦那さまだった。
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