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後日談
しおりを挟む私が目覚めてから、季節が二度巡った。王城の庭園には、色とりどりの花々が咲き誇っている。しかし、私の見る世界は、もう以前とは全く違って見えた。
私は、『生命の灯火病』に対抗するための薬を飲み続けている。エリオットは、私の命の灯火を必死に守り続けたアシェン様の献身がなければ、この薬は生まれなかっただろうと語った。アシェン様が、多額の投資をして治療薬の開発を進めてくれたらしい。そして、この薬のお陰で、沢山の命が救われるようになった。本当に嬉しいことだ。
私は今、アシェン様の婚約者として、彼の隣に立っている。とても、過去の自分が見たら信じられない光景だ。今の自分でも時折夢を見ているのではないかと思うことがある。
かつては一方的に行っていた告白は、今では私たちの日常を彩る、愛しい日課となっていた。
「アシェン様! 今日のあなたも、本当に素敵です! 世界で一番、あなたを愛しています!」
朝、執務室へ向かうアシェンの後ろから、私が駆け寄って告げる。同じ家に住んでいるので朝から愛の言葉を伝えているのだが、このルーティーンは欠かせない。
アシェン様は、眉一つ動かさないことはなくなり、私の姿を見て微かに笑みを浮かべてくれるようにもなった。彼は振り返り、私の手を取り、その甲にそっと唇を落とす。
「ああ。私もだ、ルーナ。君を、心から愛している」
彼の瞳はかつての氷のような冷たいではなく、私を映すたびに、深く、温かい光を宿している。そのたびに私の頬は熱を帯びて、胸が幸せに満たされるのだ。
「やあ、ルーナ嬢!」
「ライナー様、おはようございます」
アシェン様の隣に並ぶようにライナー様が立った。彼は私がこうやって仕事を再開する前に、何度かお見舞いに来てくれていた。最初に部屋を訪れた時に彼は号泣しており、とても驚いたものだ。そして、私たちが婚約することを聞いた時、彼が一番喜んでくれた。
「今日のアシェンも幸せそうな顔をしているな。ありがとう、ルーナ嬢。これからもこいつをよろしく頼む」
「お前は私の何なのだ。余計なことを言うな」
ライナー様の言葉にアシェン様は嫌そうな顔をしているが、私は笑顔で頷いた。
「もちろんです! 私はずっと、アシェン様を愛していますから!」
私は、もう無理に笑顔を作る必要はない。心から笑い、心から泣き、そして、心からアシェン様を愛している。
図書室の仕事も続けているが、時折、アシェン様の執務室に顔を出し、お茶を運んだり、書類の整理を手伝ったりすることもあった。
晴れた午後。私はアシェン様と共に、庭園のベンチに座っていた。私の左手には、あの夜、アシェン様が贈ってくれた指輪が、太陽の光を受けて眩く輝いている。
「アシェン様」
「何だ、ルーナ」
「私、今、本当に幸せです」
アシェン様は、私の手を取り、指にはまった指輪をそっと撫でた。
「私も、幸せだ。君が傍にいてくれるだけで、私の心は満たされる。愛しているよ、ルーナ」
彼の言葉に、私の目には涙が滲む。アシェン様が今、これほどまでに愛を語ってくれる。その奇跡が、私の心を震わせる。
私は、アシェン様の肩にそっと頭を預けた。
私の生命の灯火は、強く燃え続けている。アシェン様が、ずっと隣にいてくださるから。
私たちの未来は、月の光のように、穏やかで、そしてどこまでも明るく輝いているのだろう。私は、愛する彼の腕の中で、心からの幸福を噛み締めていた。
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