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第十五話 抑えきれない愛の言葉を
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「愛している、ルーナ」
「……わ、わわ、私もアシェン様を愛しています」
目覚めたばかりで熱を出してしまったルーナの温かい頬を撫でると、彼女は目をさ迷わせながら顔を真っ赤にさせた。頬から目尻までが赤く染まり、湯気を立てるのではないかと思えるほどだ。どうしたのかと尋ねると、彼女は小さな声で答える。
「……アシェン様が、私のことを、愛しているって……未だに私、夢を見ているのかと思うのです」
「とりあえず、君が与えてくれた分の愛の言葉を返す。それから、それ以上の愛を伝えようと思っているんだ」
間髪入れずに、ルーナの瞳をまっすぐと見つめながらアシェンが言うと、彼女は手で顔を覆ってしまった。
「そんなにまっすぐと言わないでください。恥ずかしいです……!」
「君だって、まっすぐと言ってくれたではないか。愚かだった私は、それに気を留めようとしていなかった」
「それが分かっていて、私はアシェン様に告白していたのです。ですから、アシェン様は何も悪くありません。逆に、冷たいアシェン様もかっこよかったので!」
「ルーナは冷たい方が好きなのか……?」
「変な勘違いをしないでください!? どのアシェン様も好き、という意味です。一番好きなのは、今のアシェン様です!」
慌てたように手を振るルーナを見て、アシェンはゆっくりと目を細めた。それを見て、ルーナは目を丸くする。
「アシェン様が笑ってる……」
「すまない。不快だっただろうか」
「そんなわけありません! 昔の私なんて、アシェン様が少し笑っているのを見ただけで寿命が延びたと喜んでいたのですよ! たくさん見たいです」
そう言って微笑むルーナからは、以前のように吹けば消えてしまいそうな儚さはなくなっている。それでも、ふとした瞬間にいなくなってしまうのではないかと、恐怖に襲われることがあるのだ。
「……ルーナ」
アシェンはルーナの手を握って、ぎゅっと力を込める。その手には、二度と彼女を失うまいという強い思いが込められていた。
「私は、君の愛を何度も足蹴にした。何度も、君を傷つけてしまっただろう。私は君の病に気が付くこともできず、それどころか君とエリオットが親しげに話をしているのを見て醜く嫉妬していたんだ。何も、君のことを知らなかった私が……」
懺悔をするように俯くアシェンを見て、ルーナは何度か目を瞬かせた。そして彼女は、ゆっくりと体を起こして、自分の手を包み込んでいる彼の手にもう片方の手を添える。一瞬だけ、彼の手がびくりと震えた。
「アシェン様、嫉妬していてくださったのですね! それが知れて、とても嬉しいです。それに、嫉妬なら私もしていましたよ。アシェン様が綺麗な女性と一緒にいる姿を見て、勝手に好きになっただけなのに、勝手に嫉妬していました」
「しかし、私は——」
アシェンはまだ言葉を続けようとしたが、ルーナが遮るように、ペチンと彼の手を叩いた。
「それなら私だって、自分だけのためにアシェン様に告白していたのです。自分よがりの考えでした」
「そんなことはない。君がそうしてくれたことで、私は君という大切な存在を得ることができたんだ」
「……それと、同じです。もしアシェン様が最初から私を受け入れてくださっていたら、私は途中でやめていたかもしれませんよ。それに、私は今、とても幸せです。これからも、アシェン様のお姿を見ながら生きることができるのですから」
お願いです。これ以上自分を卑下にするのはやめてください、と。そう言われて、アシェンはようやく顔を上げた。
「私も、……私も、幸せだ。ルーナ、君が傍にいてくれるだけでいい。ずっと、私の傍にいてくれないだろうか」
「私がお傍にいると、もれなく毎日の愛の言葉がついてきます! ……なんて、」
アシェンはそっと手を伸ばして、ルーナの目元を撫でた。彼女の瞳からは涙が溢れている。
「こんなに、幸せなこと、あるのかな……」
「その幸せは、ここにある。だが、私が必ず、君をもっと幸せにする」
アシェンは、ルーナを抱きしめた。ルーナは彼の胸に額を押し付けながら、嗚咽混じりで涙を流す。心からの愛おしさが押し寄せて、アシェンは彼女の髪に優しく触れた。
「愛している、ルーナ」
これから、君が受け止めきれないほどの愛を、君に送ろう。
「……わ、わわ、私もアシェン様を愛しています」
目覚めたばかりで熱を出してしまったルーナの温かい頬を撫でると、彼女は目をさ迷わせながら顔を真っ赤にさせた。頬から目尻までが赤く染まり、湯気を立てるのではないかと思えるほどだ。どうしたのかと尋ねると、彼女は小さな声で答える。
「……アシェン様が、私のことを、愛しているって……未だに私、夢を見ているのかと思うのです」
「とりあえず、君が与えてくれた分の愛の言葉を返す。それから、それ以上の愛を伝えようと思っているんだ」
間髪入れずに、ルーナの瞳をまっすぐと見つめながらアシェンが言うと、彼女は手で顔を覆ってしまった。
「そんなにまっすぐと言わないでください。恥ずかしいです……!」
「君だって、まっすぐと言ってくれたではないか。愚かだった私は、それに気を留めようとしていなかった」
「それが分かっていて、私はアシェン様に告白していたのです。ですから、アシェン様は何も悪くありません。逆に、冷たいアシェン様もかっこよかったので!」
「ルーナは冷たい方が好きなのか……?」
「変な勘違いをしないでください!? どのアシェン様も好き、という意味です。一番好きなのは、今のアシェン様です!」
慌てたように手を振るルーナを見て、アシェンはゆっくりと目を細めた。それを見て、ルーナは目を丸くする。
「アシェン様が笑ってる……」
「すまない。不快だっただろうか」
「そんなわけありません! 昔の私なんて、アシェン様が少し笑っているのを見ただけで寿命が延びたと喜んでいたのですよ! たくさん見たいです」
そう言って微笑むルーナからは、以前のように吹けば消えてしまいそうな儚さはなくなっている。それでも、ふとした瞬間にいなくなってしまうのではないかと、恐怖に襲われることがあるのだ。
「……ルーナ」
アシェンはルーナの手を握って、ぎゅっと力を込める。その手には、二度と彼女を失うまいという強い思いが込められていた。
「私は、君の愛を何度も足蹴にした。何度も、君を傷つけてしまっただろう。私は君の病に気が付くこともできず、それどころか君とエリオットが親しげに話をしているのを見て醜く嫉妬していたんだ。何も、君のことを知らなかった私が……」
懺悔をするように俯くアシェンを見て、ルーナは何度か目を瞬かせた。そして彼女は、ゆっくりと体を起こして、自分の手を包み込んでいる彼の手にもう片方の手を添える。一瞬だけ、彼の手がびくりと震えた。
「アシェン様、嫉妬していてくださったのですね! それが知れて、とても嬉しいです。それに、嫉妬なら私もしていましたよ。アシェン様が綺麗な女性と一緒にいる姿を見て、勝手に好きになっただけなのに、勝手に嫉妬していました」
「しかし、私は——」
アシェンはまだ言葉を続けようとしたが、ルーナが遮るように、ペチンと彼の手を叩いた。
「それなら私だって、自分だけのためにアシェン様に告白していたのです。自分よがりの考えでした」
「そんなことはない。君がそうしてくれたことで、私は君という大切な存在を得ることができたんだ」
「……それと、同じです。もしアシェン様が最初から私を受け入れてくださっていたら、私は途中でやめていたかもしれませんよ。それに、私は今、とても幸せです。これからも、アシェン様のお姿を見ながら生きることができるのですから」
お願いです。これ以上自分を卑下にするのはやめてください、と。そう言われて、アシェンはようやく顔を上げた。
「私も、……私も、幸せだ。ルーナ、君が傍にいてくれるだけでいい。ずっと、私の傍にいてくれないだろうか」
「私がお傍にいると、もれなく毎日の愛の言葉がついてきます! ……なんて、」
アシェンはそっと手を伸ばして、ルーナの目元を撫でた。彼女の瞳からは涙が溢れている。
「こんなに、幸せなこと、あるのかな……」
「その幸せは、ここにある。だが、私が必ず、君をもっと幸せにする」
アシェンは、ルーナを抱きしめた。ルーナは彼の胸に額を押し付けながら、嗚咽混じりで涙を流す。心からの愛おしさが押し寄せて、アシェンは彼女の髪に優しく触れた。
「愛している、ルーナ」
これから、君が受け止めきれないほどの愛を、君に送ろう。
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