放課後教室

Kokonuca.

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トラウマ

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 自分に対して支えようと伸ばされる腕を突っぱね、ふらふらとした足取りながらもやっと自宅へとたどり着き、すがるようにドアノブを握る。 

「もう、大丈夫…だから…」 
「横になるまで見届けないと安心できない!」 
「…いいよ」 
「よくない!」 

 かたくなに付いてこようとする威をどうにか帰そうと考えを巡らせていると、 
「去年おれのじーさんが亡くなったの覚えてるか?廊下で倒れてたんだ。お前にそんなふうになって欲しくないんだ」 
「…………」 

 その事は覚えていた。 
 最後に会ったのが威自身で、その後長い間落ち込んで何も手につかなかったのをそばで見ている。 

「…わかったよ。横になるまでだからな」 

 あの時の辛そうな威を思い出すとぎゅっと胸が締め付けられ、葉人はしぶしぶ威がついてくるのを承知する。 

 かたん 

「?」 

 アパートの扉を開けた時に普段はしない音に気づき、ドアについているポストを覗き込むと、郵便物が入っているのが見えた。 

「…なんだ?」 

 各家の扉にポストはついていたが、郵便物は大概アパート入り口のポストに入れられるので、こちらに何かが入っていると言うのは珍しかった。 
 郵便受けから取り出すと、サイズに対してひどく軽く、しっかりガムテープで梱包されている。テープの隙間にわずかに見える封筒部分に、「オダギリハナト様」と印刷された文字が見えた。 

「なんだ?それ」 

 気味悪さを感じて立ち尽くす葉人の手元を覗き込み、威が尋ねてくるが、葉人に心当たりはなかった。 

「とりあえず、横になれよ」 
「…うん」 

 外に比べるとひんやりとした家に入ると、密室に二人だけと言う状況に葉人は緊張してぎゅっと服を握った。 

「…もう…ここで…」 
「おれ心配だからおばさんが仕事から帰るまでいるよ」 
「えっ…」 
「最近…その、亜矢子にかかりきりでさ…なんか話しも全然できてなかったし…親友なのに、ほったらかしにしてたのって、スゲー気にかかってたんだ」 

 親友と言う部分で照れたのか、頭をかきながら言う威を見ていると無下にできず、葉人は緊張しながらも威を部屋へと招き入れる。 
「相変わらず片付いてるなぁ…」 
「威の部屋が汚いだけだろ、ごみくらいは捨てろよな」 
「う…」 

 部屋の自分の定位置にどっかりと腰を下ろして陣取る。 

「なんか飲み物探してくるよ」 
「病人がんなことするなよ!飲み物いらないから寝てろ」 

 そう言われてしぶしぶベッドに腰かけるが、横になる気にはなれなかった。 



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