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自慰
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しおりを挟む司郎たちの汗や精液を、シャワーで洗い流す。
白い太ももについたそれを、爪で掻くようにこそげとる。
「…っ」
爪が通った後が、赤く残っていく。
「くそっ…取れろよ……」
小さく毒づきながら何度も何度も引っ掻くと、皮膚が破れて血が滲み始める。
湯がしみるぴりぴりとした痛みで、はっと我を取り戻す。
「……くっ…」
叫び出しそうになった唇を噛みしめ、石鹸の隣に置いてある剃刀を掴む。
I字型のそれは、手首に押し当てて横に引けば簡単に切れるのは間違いなかった。
手首に刃を押し付けたまま、息を止める。
シャワーの滴が、剃刀の上に落ちていくのを見ながら、ぐっと右手に力を入れる。
──カシャン
あっと言う間に、血が湯に混じって消えた。
痛みよりは熱さ。
ほんのわずか、見た時にはもう血が出てるのかどうかすら分からないような切り傷が、しみてズキズキと痛む。
「……いた…」
指をそっと這わし、血が溢れるほど切った時の痛みを思う。
「…いくじなし……」
呟いて、床に落ちた剃刀を元に戻して髪を洗い始めた。
光彦が用意してくれた服を身に付けて風呂場から出ると、もう一つの扉から光彦が丸めたシーツを持って顔を覗かせた。
「小田切、今日はこっちで寝なさい」
「いえ…オレ、ソファーでいいです」
「シーツも換えたし、…寝室は鍵もかかるから」
しばらく足元を見ていたが、光彦の言う通りにしようと思い直してこくりとうなずく。
「すみません…そちらで寝かせてもらいます…」
ほっとした顔を見せて、光彦は葉人の傍に極力寄らないようにしながら、シーツを風呂場の洗濯機に入れに行く。
「…やっぱり…オレ……」
「ん?なんだ?」
「…汚いですか?」
光彦と自身との間を見つめて自嘲気味に言うと、光彦は慌てて両手を振った。
「ちがっ…違う!…あまり…男に近寄られるのは嫌かと思って…」
「…すみません」
素直にその言葉を受け入れる事ができず、光彦の心遣いを疑う自分が許せず、きつく唇を噛む。
「……腹は?何か食べるか?…って言っても…レトルトだが」
「…いえ……休みます…」
キッチンの方へ向かいかけた光彦の足が止まり、困った顔がこちらを向く。
「せめて、ホットミルクだけでも飲みなさい」
いらない…と言おうとしたが、こちらを心配そうに見つめている光彦の心遣いを申し訳なく思い、うなずいて見せる。
「少し待ってなさい」
一言言い、光彦はキッチンの方へと姿を消した。
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