放課後教室

Kokonuca.

文字の大きさ
62 / 349
自慰

3

しおりを挟む



 温かな湯気の立つホットミルクをそっと啜ったが、唇の傷が痛んで顔をしかめた。 
 壁際に立った光彦が、聞きづらそうに尋ねてくる。 

「体は…その…怪我とかは大丈夫か?」 
「言うほど…殴られたりはしなかったんで、……大丈夫です」 

 顔以外は組み伏せられ、突き上げられた際に背中や膝が擦れてできた擦り傷ぐらいだった。 

「そうか。…制服は、クリーニング出しておくから」 
「ありがとうございます。……母には……友人の家で勉強会するって言っておきます」 

 ミルクの残りを一気に飲み、微かに感じた苦味に顔をしかめる。 

「…これ…苦い…?」 
「ああ。少しだけお酒を入れたからな」 

 ほわっと体が暖かく感じるのはそのせいなのか…と、カップに残る温もりを探すように握りしめる。 

「…先生……ほんとに…すみません」 

 滲み始めた視界を慌てて拭っていると、光彦は眼鏡を直しながら首を振った。 

「…いや…あの時、校門で呼び止めなかったらって思うとな…」 

 自責の念に眉を寄せながら、光彦は苦々しく言うが、呼び止められなくても場所が体育倉庫から違う場所へ移っただけだと、葉人は十分承知していた。 


 アレは、フェネクスの罰だ… 


「…っ」 

 背中をかけ上がる悪寒に、とっさに体を抱き締める。 

「具合悪いか?」 
「…いえ……」 
「もう横になった方がいいな。ソファーで寝てるから、何かあったら声をかけなさい」 

 はい…と返事を返して寝室へと向かう。 

「……」 

 ひっそりとした部屋に、不安と安堵を同時に覚えながら、鍵をかけてベッドへと向かった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

娘さん、お父さんを僕にください。

槇村焔
BL
親父短編オムニバス。 色んな家族がいます 主に親父受け。 ※海月家※ 花蓮の父は、昔、後輩である男に襲われた 以来、人恐怖症になった父は会社を辞めて、小説家に転身する。 ようやく人恐怖症が治りかけたところで… 腹黒爽やか×気弱パパ

BL短編まとめ(現) ①

よしゆき
BL
BL短編まとめ。 冒頭にあらすじがあります。

優しくて知的な彼氏とサークルの合宿中我慢できなくて車でこっそりしたら、優しい彼氏が野獣になってしまった話

ゆなな
BL
Twitterで連載していたタイトルそのまんまのお話です。大学のサークルの先輩×後輩。千聖はいろさん@9kuiroが描いて下さったTwitterとpixivのアイコン、理央はアルファポリスのアイコンをモデルに書かせてもらいました。

溺愛前提のちょっといじわるなタイプの短編集

あかさたな!
BL
全話独立したお話です。 溺愛前提のラブラブ感と ちょっぴりいじわるをしちゃうスパイスを加えた短編集になっております。 いきなりオトナな内容に入るので、ご注意を! 【片思いしていた相手の数年越しに知った裏の顔】【モテ男に徐々に心を開いていく恋愛初心者】【久しぶりの夜は燃える】【伝説の狼男と恋に落ちる】【ヤンキーを喰う生徒会長】【犬の躾に抜かりがないご主人様】【取引先の年下に屈服するリーマン】【優秀な弟子に可愛がられる師匠】【ケンカの後の夜は甘い】【好きな子を守りたい故に】【マンネリを打ち明けると進み出す】【キスだけじゃあ我慢できない】【マッサージという名目だけど】【尿道攻めというやつ】【ミニスカといえば】【ステージで新人に喰われる】 ------------------ 【2021/10/29を持って、こちらの短編集を完結致します。 同シリーズの[完結済み・年上が溺愛される短編集] 等もあるので、詳しくはプロフィールをご覧いただけると幸いです。 ありがとうございました。 引き続き応援いただけると幸いです。】

BL短編集

田舎
BL
タイトル通り。Xくんで呟いたショートストーリーを加筆&修正して短編にしたやつの置き場。 ※こちらは激しい描写や♡描写のない作品となります。

BL短編まとめ(現) ③

よしゆき
BL
BL小説短編まとめ。 色んな傾向の話がごちゃ混ぜです。 冒頭にあらすじがあります。

若旦那からの甘い誘惑

すいかちゃん
BL
使用人として、大きな屋敷で長年奉公してきた忠志。ある日、若旦那が1人で淫らな事をしているのを見てしまう。おまけに、その口からは自身の名が・・・。やがて、若旦那の縁談がまとまる。婚礼前夜。雨宿りをした納屋で、忠志は若旦那から1度だけでいいと甘く誘惑される。いけないとわかっていながら、忠志はその柔肌に指を・・・。 身分差で、誘い受けの話です。 第二話「雨宿りの秘密」 新婚の誠一郎は、妻に隠れて使用人の忠志と関係を続ける。 雨の夜だけの関係。だが、忠志は次第に独占欲に駆られ・・・。 冒頭は、誠一郎の妻の視点から始まります。

処理中です...