放課後教室

Kokonuca.

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嘘1

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 顔が赤いな…と、笑いながら光彦が頬を撫でる。 

「…だって…」 

 まだ体の奥のほうで微かに、ちりちりとした焦燥感にも似た火が燃え残っているように感じる。 

「人が来たら…どうするんですかっ」 

 流されてしまった自分も悪いが、精一杯の力を込めて光彦を睨み付けると、くすりと笑い返された。 

「そんな顔で睨んでも、誘ってるようにしか見えないよ」 
「も…もぅ!」 

 かぁっと首筋まで赤くしながら顔を背けると、光彦は葉人の顔を覗き込んで軽く口づける。 

「授業サボらせたのは、すまなかったな」 
「6限は、出ますね」 
「はは…相変わらず真面目だな」 

 くしゃくしゃと頭を撫でられるのが気持ちよくて、そっと光彦の胸に頭を預けると、規則正しい鼓動が聞こえて目を瞑る。 

「…そんなこと、ないですよ……」 
「そう?授業ちゃんと受けてるように思えるんだけど…?」 
「普通ですよ」 
「そう言えば…」 

 ふと思い出したように光彦は続ける。 

「1年に、良く似た奴がいるな」 
「オレに…ですか?」 

 いきなり言われ、きょとんとする葉人を抱き締めながら、光彦は軽く首をひねった。 

「里中…だったか……中里だったか………生真面目な雰囲気が、似てるな」 
「へぇ…気付かなかったけどな」 
「まぁ学年が違えばな」 

 そう言って肩をすくめると、光彦は名残惜しそうに葉人の髪に口付ける。 

「引き止めたいんだが…」 
「…ごめんなさい」 

 そう言いって頭を下げる葉人に、光彦は苦笑いを見せて手を振った。 

「俺も一応教師だからな。これ以上勉学の邪魔は出来ないな」 

 葉人も微笑を浮かべたが、すぐに唇を引き結んだ。 

「…放課後、すぐに来ます」 

 光彦がうなずいたのを見て、葉人はまたダンボールを避けながら廊下へと出る。 
 人気もなく静まり返った廊下は、この季節にしてはひんやりとしているか、どこか心細さを感じさせた。



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