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携帯電話
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しおりを挟む「コーヒーとお茶と、どっちがいい?」
「オレが入れます」
「いや、座ってろ。コーヒーでいいか?」
こくりとうなずいたのを見届けて、光彦はキッチンへと姿を消した。
手持ちぶさたに、新しい携帯を開くと何通かのメールが来ていることに気がつく。
母からの、仕事で遅くなると言う内容のメールが一通、光彦から着信があったことを知らせるメールが三通、後の一通は知らないアドレスからだった。
カチ…カチ…と、真新しい携帯を操作してメールを開くと、絵文字をふんだんに使ったカラフルな文章が飛び込んでくる。
「ぅあっ!?」
びっくりしながら目を通すと、鷹雄からのものらしく、悪魔のトリルの入ったCDを聞いてみるか…と言うようなことが、こってりとした文章で書かれていた。
なんと返事をしたものか戸惑いながら、いらないと言う旨の文を返した。
「…絵文字使ってないけど…いいよな」
送られてきたメールからすると、素っ気ないほどに思えたけれど、葉人にはそれ以上書きようがなかった。
…フェネクスからのものはなかった…
どこかほっとしたようで、どこか不安なような、ない交ぜになった気分で携帯を閉じる。
「…メール来てたか?」
湯気の立つカップを葉人の前に置きながら、光彦が尋ねてくるが、首を振って返す。
「母から、遅くなるってメールが来てました」
「…それは……ここでのんびりとしててもいいってことだよな?」
光彦に頬をすっと撫でられ、葉人はぴくんと体を揺らす。
「あ、いや…そんなつもりじゃなくて…」
誘っているように思われたのが恥ずかしくて、かぁっと赤くなった葉人はそれをごまかすために珈琲に口をつける。
「あっち…!!」
「やけどしないように、ちゃんとふぅふぅするんだぞ?」
「…はい」
小さな子供に言うように言われ、ますます顔を赤くしながら、苦味の効いた大人味の珈琲を飲み下す。
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