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携帯電話
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しおりを挟む2年生に上がる春休みだった。
二人で携帯ショップに行き、冗談の延長のような感じで一緒の型の携帯にした。
『男同士で同じってなくないか!?』
『じゃあお前変えろよ、俺はコレ気に入ってんだから』
『オレだって…気に入ってるんだけど!?』
『じゃあ。色違いで我慢しようぜ』
『えぇー…』
文句を言いながらも結局葉人が白、威が黒を選んだ…
「小田切?終わったぞ」
「え……あ…」
ほんの2~3ヵ月前のことだったはずなのに、酷く昔のように感じて戸惑う。
「どうした?」
よほど不安げな表情をしていたのか、光彦が顔を覗き込んでくる。
「いえ…その……」
「車、行こうか」
こくりとうなずき、連れだって駐車場へと戻る。
「壊れた携帯出して」
「?」
言われるままに、差し出された手に壊れた携帯を乗せると、光彦は中のUSIMカードを取り出すと、先ほど購入した携帯に入れ始めた。
「せ、先生!?何してるんですか!?」
「小田切が新しいのを買うまでの繋ぎにと思ってな。新しいの買ったら、俺が使えばいいし」
「いや…でも……わざわざ…」
携帯を起動させると、光彦は葉人にそれを手渡す。
「丁度換えようと思ってたところだから」
「でも…」
「少しでも、繋がっていたいんだ」
真顔で言われたその言葉が照れ臭くて、葉人の頬がうっすらとピンクに染まる。
「それ…恥ずかしいですよ…」
「あははは、……でも持っててくれ。連絡がとれないと不安だから」
ふと真顔になった光彦の言葉の真剣さに、葉人は小さくうなずくしかできなかった。
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