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携帯電話
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しおりを挟む「あの…オレ、未成年なんで親と一緒じゃないと…」
携帯ショップの駐車場に入りかける光彦にそう言うと、くしゃっと髪をかき混ぜられる。
「俺のを買うんだ」
「?」
訳が分からずにきょとんと見上げていると、いいから…と店内へと促される。
「俺に合いそうなの選んでくれるか?」
「はぁ?」
言われるままに、目の前にずらりと並ぶ携帯サンプルを見やる。
こう言う物に頓着のない葉人にはどれがいいのか分からず、途方に暮れて光彦を見上げた。
「あの…機能とかは…」
「電話とメールができればいいかな。あ、カメラもあるといいな」
「それって基本機能じゃないですか?」
光彦が自分と同じような考えなのがおかしくて、ぷっと吹き出しながら答えると、眼鏡の奥の瞳が優しく微笑む。
「あんまりこだわらないんだ」
「それなら……ぁ」
目の前の黒い携帯に手を伸ばす。
「……」
型番号を見て、それが自分が持っていた携帯と同じ型だと確認する。
「……」
白は葉人が、
黒は…
黒く光るその携帯をぎゅっと握りしめる。
「それ、いいな。それにしようか」
「ぇ!?…あっ」
食い入るように見つめていたのを、気に入ったと勘違いした光彦が、葉人の手の中の携帯を見て言う。
「あ、あの…これは……」
「小田切が持ってたのと、色違いか?」
「…はい」
「じゃあ、手続きしてくるから」
「それは…っ」
「すみません、これなんですが…」
止めようとした葉人よりも早く、光彦は傍の店員と話始める。
「…っ」
言い出せないまま、手の中の携帯を転がす。
「……威」
ポツリと呟く。
黒い携帯は、威が持っている物と同じだった。
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