放課後教室

Kokonuca.

文字の大きさ
135 / 349
後輩

6

しおりを挟む



「小田切葉人です」 

 悠哉はにこっと笑うと、甲斐甲斐しく割り箸を手渡してくる。 

「お水入れてきますね」 

 さっと立ち上がって水を汲みに行く悠哉を見て、千明がぽつんと言う。 

「あの子、葉人に似てね?」 

 その言葉で、悠哉が光彦が言っていたよく似た一年生だと分かる。 

「後ろ姿とかさ、特に」 
「……そうだな」 
「オレ、自分じゃあんまりわかんないから」 

 二人の間の微妙な空気を読まないまま、千明は一人で盛り上がっていく。 

「やっぱ髪は葉人のが茶色いけどさ~細い感じがそーっくり!」 
「千明、早く食べないと時間なくなるぞ」 

 威に言われ、カレーを食べ始めたが千明の口は止まらなかった。 

「泣きボクロとか、ちょっとセクシーだよね」 
「男にセクシーとかって、誉め言葉じゃないよ」 

 苦笑いしながら麺をすすると、いやいやと千明が首を振る。 

「葉人も最近すげぇ色気出てきたよな」 
「…えっ!?」 
「なんか…こう……フェロモン?いてっ!!」 

 威に叩かれ、千明は抗議の目を向ける。 

「威だって思うだろー?」 
「…俺は……別に…」 

 そこへ悠哉が冷たい水の入ったコップを持って帰ってくる。 

「なんのお話ですか?」 
「ん?泣きボクロあるねって話だよ」 
「僕のチャームポイントです」 

 そう言ってにかっと笑うと、席に座って威と話始める。 

 食べやすいはずのうどんが、喉に引っ掛かるような気がして箸が進まない。 

 楽しげに話をする二人をちらちらと横目で見ながら、葉人は飲み下せないままにうどんを何度も噛み締める。 

 威の笑顔が、自分の隣に向けられていることに、無性に腹が立って仕方がない。 
 明るくハキハキと喋る悠哉と威を見ていると、何もなかった頃の自分達を思い出して胸がズキリと痛む。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL短編まとめ(現) ①

よしゆき
BL
BL短編まとめ。 冒頭にあらすじがあります。

BL短編まとめ(現) ③

よしゆき
BL
BL小説短編まとめ。 色んな傾向の話がごちゃ混ぜです。 冒頭にあらすじがあります。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

疲弊した肉体は残酷な椅子へと座らされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...