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空白
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しおりを挟むどっと体中に冷や汗が流れ、心臓の音が耳元で聞こえ始める。
「おい?」
司郎に掴まれた手が小刻みに震えているのが葉人自身にも分かった。
「オレ…昨日の夜、先輩と?」
「あ?何言ってんだお前、会いたいってメールしてきたのはお前だろ?」
手を振り払い、携帯を取り出す。
急いで開けた送信履歴の中には、何通か司郎へ宛てたメールが残っていた。
『会いたいな』
『シロー先輩に抱き締めて欲しい』
『だって、怖いんだもん。独りぼっちはやだ。フェネクスにヤられたのだって、先輩のせいなんだから、責任とってよ』
打った覚えのないそれを、携帯を閉じて隠す。
「…覚えてない、とか言う気か?」
ぴりっとした司郎の雰囲気に、否定も肯定もできずに小さく首を振る。
司郎は溜め息を一つ溢すと、自分の携帯を取り出した。
「ほらよ」
受け取って覗いた画面には、司郎にキスマークをつけられている葉人がくすぐったそうにして写っている。
伸ばされた腕を見ると、撮影者は自分自身のようだった。
真っ青になった葉人を怪訝に見つめ、やれやれと肩を落とす。
「覚えてねぇな?」
「…そ…んな、こと…」
「…無かったコトにしたい…ってわけでもねぇツラだな」
「……」
フェンスにもたれるように座り込んだ司郎は、一連の動作で煙草を口にくわえる。
「あんなことがあった後だ、ストレスによるケンボーって奴かな。まぁ…しゃーねーな」
煙を吐き出すのに隠れて溜め息を吐いたように見え、葉人はそんな司郎が気にかかって傍に腰を下ろした。
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