放課後教室

Kokonuca.

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キスマーク

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 ぐずぐずと泣きじゃくる葉人を宥めながら、威はアパートの扉を開け、その背中を押す。 

「じゃあ、俺は学校帰るから」 
「やだ」 

 体操着の裾を掴んで引き留める。 

「……傍に…」 

 そう言うと、威は困ったような顔をして葉人の涙を拭い、玄関へと入る。 

「葉が落ち着くまでな?」 
「やだ」 
「やだって…」 

 苦笑しながら葉人の部屋へと入り、座り込む。 

「……ごめんな」 
「っ…ぇ?」 
「勝手に、携帯見て…自分のかと思ったら、全然中身が違ってたから…」 
「…」 

 テーブルの上に携帯電話を出す。 
 威と同じ型のそれを見ながら、何度も涙を拭う。 

「換えたんだな」 
「…壊れたから」 
「……葉、ごめんな」 

 赤く腫れた目元を触られ、葉人の体が跳ねる。 

「俺…なんも知らなくて……葉が何されてるか…知らなくて……」 

 目元に触れた手が、頬を包み込む。 
 その温かさに、また葉人の目から涙が流れ出す。 

「葉、好きだ」 
「…っ駄目だよ…見ただろ?威にそう言って貰えるような体じゃないんだ」 

 こつん、と額がぶつけられる。 

「キスしていいか?」 
「やだ」 
「やだじゃないだろ」 

 いやいやするように首を振るが、頬を包み込んだ手に力が入ってその動きは封じられてしまう。 

「やだよ!威には…汚れて欲しくないっ」 
「お前なぁ…俺が綺麗だなんて錯覚、どこからきたんだよ」 
「……オレが、…………汚れてるから…」 

 頬の手を外そうと手を伸ばした瞬間、威の唇が強引に葉人の唇に重なる。 

「っ!?ん…っんん!」 

 どん…と威の胸を叩き、押し退けようとするがびくともしない。 

「葉。葉が汚れてるなら、俺は一緒に汚れたい」 
「…駄目だよ…っ……」 
「俺だけが、お前を抱きたい」 

 首筋に顔を埋めて吸い上げる。 
 上塗りされたそのキスマークに指を這わせ、ボタンを外していく。 

「威!?やめ…」 

 制止の手を押さえつけ、威の唇は葉人の胸元に散らされた赤い跡を追っていく。 
 ちゅっと吸い上げられる度に、葉人の体が跳ね上がり、ほんのりと赤みを帯びる。 

「んっ…や…っ…」 
「ムカつく」 
「…ぇ?」 
「葉にコレつけたヤツ、ムカつく」 

 新たに上塗りしたキスマークに満足そうな顔をしながら、威はそう真顔で言った。



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