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しおりを挟む「こ…こわ…く、ない…」
そう返事をするけれど、震える唇ははっきりと葉人の心を表していた。
その震えを見て威はくしゃりと顔を歪めると、葉人にバスタオルを差し出す。
「あ…」
「ほら。あんなことがあった後だから…しかたないよ」
くしゃりと歪んだその顔は納得しているようなものではなく、葉人は緩く首を振る。
「…」
「……ただ…さ、どうして…先輩は良くて俺は駄目なんだ?」
言われた言葉に、胸がきゅっと絞り上げられた気がして息を飲む。
「先輩に…酷いことされたんだろ?なのに…」
葉人を見る目は暗く淀み、光の射さない濁った闇に見えた。
自分の好きだったキラキラと日の光を受けていた瞳がどこにも見当たらず、葉人は苦しさに喘ぐように口を開く。
「それ…それは……っ」
「先輩の事、…好きなの?」
曇天を表すかのような表情で問いかけ、威はバスタオルを広げて葉人の肩にかけた。
軽いはずのタオルの重みでよろけてしまいそうになり、足に力を込める。
威が何を言ったのか咀嚼し、その有り得ない事柄に緩く首を振った。
「違う」
「……」
自身の行動と身の上に起こった出来事が、威を裏切る事だと言うのは十分理解していた。
それでも、自分の心の在処は威にしかないのは確かだった。
「…そか……」
震る唇をしっかりと引き結んで自分を見上げる葉人に向かい、威は頼りなげに小さく頷いて見せた。
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