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二人
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しおりを挟むぐずぐずと鼻を啜り、電源を落とした携帯電話を視界の端に入れながらぼんやりと過ごす。
泣きすぎて腫れぼったい目は幾ら開いていても開けている感じがせず、世界が虚ろに見える。
「威と…あんな風に怒鳴った事って…あったかな…」
確かに、今まで些細な喧嘩はあった。
下らないおやつの取り合いやらで…
けれど、重苦しく叫ぶように言い合った事などあったかと、葉人は回らない頭で考える。
幼馴染で、威の親友だと思っていた。
けれど、最近垣間見えた威の生活を思い出し、自分は全く近しい人間だはなかったのだろうかと思い至って苦笑が漏れた。
千秋達とAV鑑賞をしている事なんて知らなかった。
裕也に合鍵を渡し、そう言う関係をずっと続けていたなんて知らなかった。
あんな暗く濁った眼をするなんて、知らなかった。
知らない部分が多すぎて、葉人は自分が今まで威の良い上面だけを見てきたのだと自嘲する。
「美味しいとこだけ見て、裏側のこと、なんも見てなかったのかなぁ…」
はきはきとした表情で駆けて行く幼馴染。
その姿が真実だと思っていた。
人の多面性、その事に行きつき、葉人は唸るようにして泣きそうなのを堪える。
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